金の糸 76
森から抜けるときには永遠のように長く感じた道が、今はあっという間に過ぎていく。川をわたり、下草をかきわけ足跡を見つけ、ハンナはすいすいと歩いていく。
四人の警官たちは息を乱しながらもついて歩く。
絢香と雷三は額に汗を浮かべながらついていった。
その場所に立ったとき、警官たちの口から呻き声が上がった。
巨大な見たこともない乗り物、金の糸に巻かれた、人の三倍はある異形。
警官たちが口々に何かを叫び相談し、腰につけた無線機で連絡を始めた。
雷三は異形に近づいた。
警官がなにか制止の言葉を叫んだが、雷三は無視した。異形の鼻先に頬をあて、首筋をまさぐる。異形は目を覚まさなかった。
「こいつ……死んでるのかも」
「ええ?まさか、捕まえたせいで?」
雷三は口を閉じ、うつむいた。絢香もそれ以上、何も言えなかった。
ただなにか、黒くとぐろを巻く生き物に捉えられてしまったような気がした。
警官隊が到着した。彼らは異形を目にして口々に呻き、祈り、嘔吐した。
黒い布でくるまれた二人の赤ん坊を警官が銀色のシートで包む。包みを抱え、二人の警官が道を戻っていく。
絢香と雷三、それにハンナは宇宙船が見えないところまで連れていかれ、そこで待つように指示された。警官たちはバタバタと走り回っている。
「私たち、これからどうなっちゃうのかしら」
雷三は黙って、ただぎゅっと絢香の手を握った。




