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金の糸 69
日暮れてだいぶ経ってから、それはやって来た。
金の繭のようなものをいくつかぶら下げた、三本足の宇宙船だ。
ごくささやかな鼓動に似た音をたてて宇宙船は着陸した。
中から背の低い異形が出てきて、繭のうちの一つをほどいていく。繭は金の糸が束になったもので、中から人間が出てきた。ぐったりと気を失っているようだ。
「いくよ、絢香」
小さく囁かれた雷三の言葉に絢香はうなずく。
二人は金の糸を手に異形に向かって走る。
足音に気づいた異形が振り返ったときにはすでに雷三が異形の足に向けて金の糸を投げていた。
金の糸は異形の足に絡み付くと、まるで生きているかのように自然な動きで異形の足を縛り付けた。異形はバランスを崩し大きな音をたて地面に倒れた。
追い付いた絢香が金の糸を異形の胴に向けて投げると、金の糸は異形の腕ごと異形を戒めた。
「……やった」
「……やったわね」
二人はそっと後退し異形から距離をとる。異形はじたばたと暴れ、戒めを解こうとしたが、金の糸は異形を放しはしなかった。
異形が暴れ疲れておとなしくなった頃、繭から出されていた人が意識を取り戻した。




