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今日のおはなし  作者: 溝口智子
金の糸 15
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金の糸 68

「雷三、道わかる?」


昨夜二人はあてもなく暗いなかを駆け抜けた。道などない森のなか、しかも今は靄で視界もきかない。


「俺たちの足跡をたどれると思う」


雷三はしゃがみこむと草の根をじっくり観察した。


「こっち、足跡を踏まないように歩いて」


一見すると足跡などどこにもないように見えた。絢香は雷三を真似てしゃがみこむ。視点が低くなると、なるほど草が踏まれてつぶれているのがよく見えた。


二人はちょこちょこと休憩をはさみながら森を進んだ。次第に靄が晴れ、木漏れ日がさした。あちらこちらから鳥の声が聞こえ、風が吹けば葉擦れの音がする。

爽やかな初夏の陽気のように思われた。


昨夜、宇宙船が着陸した場所についた。その開けた場所は陽だまりになっていた。絢香は駆け出し、空をあおいだ。

三年ぶりに見る青空だった。

白い雲、まぶしい太陽、髪を揺らす風。


「地球だわ!」


絢香は両手を空にあげ、目一杯、背伸びをした。

太陽の光は体を暖め、夜露に濡れた服を乾かした。


絢香は雷三の手をとり、ぶんぶんと振った。雷三もにこにことはしゃいだ。


太陽が中天に昇るまで、二人ははしゃぎ回った。駆け回り、草に寝転び、かくれんぼをした。


「雷三!これを見て!」


突然、絢香が深刻な声で雷三を呼んだ。絢香が指差したのは一本の丈高い木の上だった。


「金の糸だ!」


見上げた先には、金の糸が太い枝に引っかかっているのが見えた。


「なんでこんなところにあるのかしら……?」


「異形が隠したのかな」


「忘れていったのかもしれないわね」


「俺、取ってくるよ」


雷三はするすると木を上り、金の糸を手繰り寄せると地面に落とした。金の糸は全部で三本あった。


「異形はこれを取りに戻ってくるかしら」


「来るかもしれない。待ってみよう」



二人は木陰に隠れ夜を待った。

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