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今日のおはなし  作者: 溝口智子
金の糸 15
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金の糸 66

二人は手を繋いで森の中を駆けた。膝下を草が擦り血がにじんだ。

足に巻いた布に夜露が染み込み、体を冷やす。けれどそんなことには構わずに二人は走り続けた。


辺りの木に、絢香は見覚えがなかった。

松でも桜でも杉でも白樺でもない。けれど地球の木だ。絢香は確信をもって頷いた。

数分走って雷三は足を止めた。絢香は膝に手をつき肩で息をする。


「大丈夫、絢香?」


絢香は後ろを振り返り異形が追ってこないことを確認した。


「も、もうだめ」


絢香はその場にへたりこんだ。雷三は絢香の背中を撫でてやる。

しばらく休み、二人は立ちあがり辺りを見回した。

枝葉が生い茂り、闇が深い。それでも頭上を見上げると、ちらちらと空が見えた。


「月の明かり……」


慣れ親しんだ空。見慣れた月の光。闇のなか、わずかに感じられる程度でしかなかったが、それだけで十分だった。


「帰ってきたんだわ、地球に」


絢香と雷三は手を握り、いつまでも頭上を見上げ続けた。

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