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金の糸 64
檻の中はとても暖かかった。
入り口が開いていても空気そのものが壁になっているかのように外の寒気は入ってこない。
ガタガタと揺れ続けた宇宙船は、しばらくするとシンと静まり静止しているかのようだった。
「止まった。壊れたのかな?」
「宇宙空間に出たのかも」
話してみてもどちらなのかはわからず、二人はただ待った。
真っ暗ななか黙って座っているとすぐに眠気がやって来た。二人は肩を支えあってうたた寝をした。
どれくらいの時間がたったのか、宇宙船がガタガタと揺れだした。
「ついたのかしら」
絢香は寝ぼけ半分に呟く。
「どこについた?」
雷三もむにゃむにゃと呟く。
絢香は突然はっきり目覚めた。
「たいへん、隠れなきゃ!」
雷三の腕を掴み立ち上がらせると手探りで檻を出る。檻の外は身を切られるように冷えていた。
けれどそんなことにはお構いなしに絢香は前に進み続ける。
すぐに壁に行き当たったが、そこから右にいけばいいのか左にいけばいいのかわからない。
絢香がまごついていると、目の前の壁が開き始めた。




