金の糸 63
それから後、数個の檻が運び込まれて、船倉の扉がしまった。辺りは真っ暗で、自分の手も見えない。
「雷三、いる?」
絢香がささやく。
「いるよ。ここ」
闇のなか手探りで二人は手を取り合った。船倉のなかは防寒布を巻き付けても嫌に寒かった。
「飛び始めたら、ここ、真空になっちゃうのかしら」
絢香の呟きに雷三が質問する。
「真空ってなに?」
「息ができなくてペチャンコになっちゃうの」
「檻もペチャンコになる?」
「そうか、檻の中にいれば安全かも。開いている檻がないか調べましょう」
二人は手を繋いだまま金の糸の中から這い出し、檻を調べた。すぐに、すべての檻の口が開けられていることがわかった。
「金の糸で捕まえたらすぐに閉じ込められるようにしてあるのかもしれないわね」
「捕まえるって、なにを?」
「……人間、じゃないかしら」
カタン、と床が傾いて揺れだした。
「飛び立つのかも」
そう言っている間にも宇宙船はぐらぐらと激しく揺れ、檻が互いにぶつかってシャランシャランと美しい音をたてる。二人は檻と檻の間に挟まれ潰されそうになった。
「檻の中へ!」
手探りで檻の入り口を探し、入り込んだ。




