金の糸 61
絢香と雷三は立ち上がるとずんぐりの異形に頭を下げた。
「ありがとう」
「お世話になりました」
口々に礼を言い、二人は檻から出た。ずんぐりの異形は二人を抱き締めると、扉を開けて外へ出してくれた。
貨物室には長身の異形はいなかった。
「雷三、隣の部屋に宇宙船があるの、見た?」
「うん。変な形の。檻もいっぱいあった」
「あれに乗ったら地球に帰れるかもしれない」
「この人に頼んでみようか?」
絢香は静かに首を振った。
「だめよ、余計なものを積み込んだってバレたらきっと迷惑をかけちゃう。こっそり忍び込みましょう」
二人は異形に手を振って、一端、貨物室を出た。
それから異形がもとの部屋に戻ったことを確認して貨物室に侵入した。
「背の高い方の異形はどこに行ったのかな」
「きっと宇宙船がある方の部屋よ。あちらでは荷物の振り分けをしていたわ」
二人は扉を押したり引いたりしてみたが、扉はびくとも動かない。
「だめね。きっとセキュリティパスみたいなものがいるんだわ」
絢香は爪を噛んで考え込む。と、その時、ビービーと音が鳴った。見上げると、大きな荷物がひっかかり、クレーンが止まっていた。
「雷三!こっちへ!」
絢香は雷三を扉の脇の壁に押し付け、自分もピタリと張り付いた。
扉が開き、長身の異形が入ってきたその足元をすり抜けて、二人は隣の部屋に入った。




