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金の糸 57
絢香が宇宙港の中を走っていても、異形たちは奇異の目で見るだけで捕まえようとはしなかった。それでも絢香はびくびくと壁際を伝うように動いた。
雷三が自由に動いているなら必ずここに来る。
いいえ、たとえ捕まったとしても必ずここにやってくる。
絢香は確信をもって走り回った。
道を行く異形たちは、きらめく衣服を身にまとっている。布ではなく、きちんと縫製されている。
それは、タイトな宇宙服か、あるいは古いSF映画の宇宙人が着ている服のようだった。そう思った絢香はなにやらおかしくて、クスリと笑った。ここにいるのは皆、正真正銘の宇宙人なのだ。
建物の端から端へ動き回ったが、宇宙港の中に人間は見当たらない。たまに金の檻をもった異形を見かけたが、中に入っているのは見慣れない動物ばかりだった。
絢香は今度は壁沿いにゆっくり歩き、入り込める隙間に片っ端から入り込んだ。トイレらしき場所、貨物室、宇宙港の職員の休憩所にも足を踏み入れた。しかしどこにも人間の姿はなかった。




