金の糸 56
「キィ!チュイ」
ミドリが指差した先に、巨大な建物が立っていた。高さは異形サイズで三階建てほどだが、横幅がすごかった。建物の端に立って遥かを見通し、やっと向こう端が見えるかどうかと言うくらい広かった。
「キィだよ、あやか。いこう、いこう」
「ミドリ、あなたは帰りなさい」
ミドリは目をぱちくりした。
「なんで?」
「私は雷三を見つけるまでここにいるから。村には帰らないから」
「なんで?」
「なんででも。あなたはこの人に連れて帰ってもらいなさい」
「やだあ!」
ミドリは地面に座り込み、手足を縮めた。そのままぐずぐずとぐずり始めた。絢香はミドリの手を引っ張り異形の警察官に突きだした。
「この子を村に帰してあげてください」
「やだあ!」
警官は察してくれたようで、ミドリを抱きかかえ懐に入れた。代わりに懐からエサをどさりと両手に重いほど取りだし、絢香に渡した。
「ありがとう」
警官は背筋を伸ばすとかかとを打ちならし、くるりと振り返り歩き出した。ミドリの泣き声は、ずいぶんと遠くまで聞こえた。絢香はミドリの声が聞こえなくなるまで見送ると、勢いをつけて駆け出して、宇宙港に足を踏み入れた。




