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金の糸 55
ミドリはにこにこと続ける。
「かちくは家に帰るのがしあわせだって!」
絢香は唇を震わせる。
「ミドリ、しあわせって何か知ってる?」
「しらなーい」
「しあわせって、人から与えられるものじゃないの。水やエサや暖かい寝場所があればいいわけじゃないの」
ミドリは首を傾げる。
「わかんなーい」
絢香はミドリの手をぎゅっと握った。
「いたい!あやか!」
「ミドリ、宇宙港に行こう」
「?どこ?」
「宇宙船があるところ」
「?なに?」
絢香は絶望感に空を仰いだ。そこに、宇宙船が飛んでいた。
「ミドリ、あれ!あれよ!」
絢香が空を指差すと、ミドリは「キィ!」と鳴いた。
「キィ?」
絢香が真似ると、異形の警察官は絢香とミドリを抱いて歩き出した。
「ど、どこに行くの?」
「キィ!」
「キィ?」
ミドリと絢香は鳴き、警官は頷いてみせた。




