金の糸 51
「あやかぁ、まってぇ、あやかぁ」
振り向くと、ミドリが小さな手を振りながら駆けてきた。
「ミドリ、どうしたの?」
絢香はしゃがみこみミドリの視線に目をあわせる。三歳のはずなのにミドリの背丈は低く、絢香はほとんど地面に座るような格好になった。
「はい!朝ごはん!」
ミドリは着ている服の胸元から色とりどりのエサを、ごっそり取り出した。
「ありがとう、だけど私は……」
「冒険に行くときは、しょくりょーとちずを持っていくの。ママが言ってた!」
「冒険?」
ミドリは得意気に胸を張る。
「あやかは街のこと、なーんにもしらないから、わたしが案内してあげる!」
「でもミドリ、ママが心配するわ」
ミドリはさらに胸を反らす。
「ママは『絢香についていてあげなさい』って言ってた!」
その誇らしげな姿に、絢香は小さく、くすくすと笑った。
「なあに、あやか、なにがおかしかった?」
「おかしくないわ。嬉しかったの。一緒に来てくれてありがとう、ミドリ。心強いわ」
絢香はミドリの頭を撫でて立ち上がった。ミドリの手を取り、顔をあげる。
「それでは、冒険に出発!」
「しゅっぱあつ!」
二人は手を繋いで街の中心に向かって歩き出した。




