金の糸 46
「Hello」
そこにいた女性は絢香たちに話しかけてきた。
「は、はろー」
突然のことに驚いた絢香は目を丸くした。
人間が何人もいた。肌の色も髪の色もばらばらな人達。
「Are you OK?」
「あー、えーと……」
絢香に声をかけた金髪の女性の後ろから、黒髪の男性が顔を出した。
「もしかして、日本人?」
「そうです!あなたも?」
「そうだよ。君達ずいぶんボロボロだけど、どこから来たの?」
二人は今までのことを話した。男性は悲しげな顔で同情を示してくれた。同時に英語で、一緒にいた人達に通訳してくれた。
「お腹すいてないかい?喉は乾いてない?」
「大丈夫だよ。砂漠でこれを摘んできたから」
雷三が腰に巻いてきた荷物をほどき、実を見せる。
「ああ、それは甘くて美味しいよね。でももっと美味しいものがあるんだ」
二人は手招かれ、建物の裏に回った。
そこにはテントのように布が張ってあり、中には子供達が寝ていた。
男性は子供を起こさないように、そっとテントの奥に入ると、布包みを持って来た。
「あ!エサだ!」
「エサ?君たちはこれをエサと呼んでるの?」
「そうだよ。飼われてる生き物が食べるのはエサだ」
男性は雷三の頭を撫でた。
「かわいそうに。不自由な生活をしていたんだものね。でも安心して。ここなら自由に暮らせるから」
「自由に?異形に捕まらずに?」
絢香の問いに男性はにっこりと笑った。
「この街では生き物を保護するボランティアがたくさんいて、僕達を守ってくれるんだ。とにかく今日はこれを食べて、ゆっくり眠るといい。安心して」
絢香と雷三はテントに入り、手足を伸ばして眠った。子供達の安らかな寝息を聞きながら、夢もみずに眠った。




