金の糸 45
道中で何度か乗り物が道を通っていったが、植物の真似をして丸くなってしゃがんだだけでも、異形には見つからなかった。
いくつか観察していると植物には丸い実がついたものがあった。やや白っぽく、触るとぽろりと幹から外れた。雷三はそれを口にいれてみた。
「甘い!」
絢香も実をもぎとり口にいれた。
「これ、エサの味と似てるわね」
「美味しいよ!」
二人は夢中になって食べた。
街に近づくにつれて植物の数は減っていく。雷三は身に付けていた布で実をいくつか包むと、腰に巻き付けた。
街が見え出してから二日歩き続けて、やっと街の入り口が見えだした。
二人は植物の陰にしゃがんで暗くなるのを待った。
大きな街だった。
周囲をぐるりと真っ白な高い塀に囲まれて、それより高い建物がそびえ立つ。
塀の元にたどりついた絢香は上を見上げ、背をそらし、それでも塀の頂上は見えなかった。
「あ!」
雷三が叫んで空を指差す。
「何か飛んでるよ!」
「宇宙船だわ!」
空に浮いているのは絢香が何度も乗せられた宇宙船だった。球形で足が三本ついている。
「あれに乗ったら、別の星へ行けるのよ!」
「故郷に帰れる?」
絢香は力強くうなずいた。
「帰りましょう。絶対に」
二人は白い布を被ってギリギリまで塀に近づいて進んだ。
街の入り口にはたくさんの異形が列を作っていた。どうやら街へ入るには審査が必要なようだった。
二人は地面に這いつくばって遠くから人波を見ていた。
深夜になって、やっと最後の異形が街へ入った。
「行きましょう!」
二人は立ち上がり駆け出した。
入り口には金色の門が閉められていたが、格子の間から、するりと中に入ることができた。
街は明るく、昼間のようだった。深夜だというのに異形たちも外を歩いている。
「どこかに隠れなくちゃ」
「暗い方へ行こう」
絢香と雷三はこそこそと塀づたいに建物の陰に入った。
足が止まった。
そこには人間がいた。




