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今日のおはなし  作者: 溝口智子
金の糸 15
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金の糸 45

道中で何度か乗り物が道を通っていったが、植物の真似をして丸くなってしゃがんだだけでも、異形には見つからなかった。



いくつか観察していると植物には丸い実がついたものがあった。やや白っぽく、触るとぽろりと幹から外れた。雷三はそれを口にいれてみた。


「甘い!」


絢香も実をもぎとり口にいれた。


「これ、エサの味と似てるわね」


「美味しいよ!」


二人は夢中になって食べた。

街に近づくにつれて植物の数は減っていく。雷三は身に付けていた布で実をいくつか包むと、腰に巻き付けた。


街が見え出してから二日歩き続けて、やっと街の入り口が見えだした。

二人は植物の陰にしゃがんで暗くなるのを待った。



大きな街だった。

周囲をぐるりと真っ白な高い塀に囲まれて、それより高い建物がそびえ立つ。

塀の元にたどりついた絢香は上を見上げ、背をそらし、それでも塀の頂上は見えなかった。


「あ!」


雷三が叫んで空を指差す。


「何か飛んでるよ!」


「宇宙船だわ!」


空に浮いているのは絢香が何度も乗せられた宇宙船だった。球形で足が三本ついている。


「あれに乗ったら、別の星へ行けるのよ!」


「故郷に帰れる?」


絢香は力強くうなずいた。


「帰りましょう。絶対に」


二人は白い布を被ってギリギリまで塀に近づいて進んだ。

街の入り口にはたくさんの異形が列を作っていた。どうやら街へ入るには審査が必要なようだった。

二人は地面に這いつくばって遠くから人波を見ていた。

深夜になって、やっと最後の異形が街へ入った。


「行きましょう!」


二人は立ち上がり駆け出した。

入り口には金色の門が閉められていたが、格子の間から、するりと中に入ることができた。

街は明るく、昼間のようだった。深夜だというのに異形たちも外を歩いている。


「どこかに隠れなくちゃ」


「暗い方へ行こう」


絢香と雷三はこそこそと塀づたいに建物の陰に入った。


足が止まった。

そこには人間がいた。

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