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金の糸 43
表通りは人混みでやかましかった。
二人は建物の隙間に入り込み、腰を落ち着けた。
「雷三、少し寝て。私、今度はしっかり見張っているから」
雷三はうなずくと絢香の肩にもたれかかり、すぐに寝息をたてはじめた。
絢香は通りの方に顔を向け、行き交う異形の足を観察した。
異形は靴を履かない。皆、素足で往来を行き交う。足の裏は柔らかな毛皮に覆われている。
人通りを縫うように、時おり乗り物が通っていく。見上げた状態だと、筐体の下の馬の毛並みがよく見えた。
空はだんだん明るくなった。この星からは太陽のような恒星は見えない。それでも明るいのは人工的な明かりなのか、それとも、この星自体が光っているのか。絢香には見当もつかない。
昼過ぎに雷三は目覚めた。
「雷三、もう少し寝ていたら?」
「俺はもう大丈夫。今度は絢香が寝る番」
「でも……」
雷三は絢香の肩をぐっと抱き、とんとんとあやすように撫でた。
「おやすみ、絢香」
絢香は緊張が溶けていくのを感じた。雷三の肩に体をあずけ、そっと目をつぶった。




