金の糸 39
部屋の中は廊下よりも暗かったが、うっすらと周囲のものを見ることはできた。
目が慣れてはっきりと物の輪郭がわかるようになると、絢香は部屋を見渡した。
生臭い臭いがした。
床は湿って冷たく、室温も廊下よりずっと低かった。
部屋の壁はずらりと棚が並べられ、見たことのない器具がならんでいる。鋭い切っ先の刃物が多い。見ているだけでヒヤリとした。
部屋の中央には背の高い台があり、洗われたばかりのように、そこも湿っていた。
絢香は台の上を見ようと首を伸ばしたが、とても届かず、手近な棚によじ登った。
台の上に小さめのガラスケースが置いてあった。
中には人間が入れられていた。
背中をぱっくりと切られ、体の中はがらんどうだった。
何かの液体につけられ、プカリと浮いていた。
絢香は目をつぶると顔を背けた。しかししばらく息を整えると、その死体をしっかりと見据えた。
ここから逃げ出さないと、自分もああなるんだと心に刻んだ。
棚に並べてある刃物の中から小振りなものを選ぶ。絢香が両手で抱えられるくらいの大きさのものに、身に付けていた布を一枚取って巻き付ける。
それを持って棚から飛び降りると、扉を開けた。




