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今日のおはなし  作者: 溝口智子
金の糸 15
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金の糸 24

「道の先に、建物みたいなものがいくつも見えた。塀に囲まれた家みたいだ。そこまでに木も何本もあった。木陰に隠れながら近づけると思う」


絢香は雷三の言葉に頷いた。二人は手を繋いで歩き出した。足は冷えきって感覚が消えていた。繋いだ手だけがほんのりと暖かだった。

雷三が言ったとおり、道の脇にはポツポツと木が増え出した。きちんと植栽されたような、並木道のようだった。


耳鳴りのような音がした。立ち止まって耳をすますと音は次第に大きくなった。


「絢香、隠れて!あの乗り物だ!」


二人は道をそれ木の裏側に身を潜めた。絢香達がやってきた方から一台の乗り物が近づいてきて、二人の前を通りすぎていった。


「やっぱり浮いていたわね」


「うん。それと生き物みたいに息をしてた」


その乗り物が去った方角に、二人は歩き出した。


日が暮れかかったころ、絢香の目にもしっかりと建物のシルエットが見えるようになった。木の陰に隠れるようにしながら近づいていく。

何軒もの家が密集した、町のようだった。町の外周を高い塀がぐるりと取り囲んでいる。二人が一軒目の家にたどり着いた頃には深夜になっていた。数軒の建物にはまだ明かりがついていたが、生き物は外を歩いていない。

建物はやはり白い石で出来ていた。真四角で浅い切り込み窓が開いている。今まで絢香が見たどんな建物よりも小さく、小屋という風情だった。白い石もあちこち欠けたりヒビが入ったりしている。


「この町は貧しいのかしら」


小声で喋ったつもりだったが、声はいやに大きく響いた。小屋のなかで人が歩く気配がした。雷三が絢香の手を引き小屋の陰に隠れたその時、扉が開く音がして、異形特有の足音がした。足音は次第に近づいてくる。

絢香と雷三は抱き合ってじりじりと後退した。


「こっちだ」


ふいに聞こえた声に振り向くと、小屋の壁に開いた穴から人間が顔を出していた。


「人だ……」


雷三がつぶやく。絢香は驚いて声も出ない。


「早く!見つかる」


その人は、すっと穴の奥に消えた。雷三は絢香の手を取ると頷き合い、穴の中に駆け込んだ。

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