金の糸 20
異形の子供は絢香たちが寄っていくと嬉しそうに本を見せるようになった。子供向けの絵本のようなものが多く、見たことがない動物が遊んでいるようなものや、異形の子供達が喧嘩して仲直りする話など、絢香が知りたい情報とは関係ないものが多かった。
しかし中には図鑑や百科事典のようなものもあった。
絢香はできるだけ知識を得ようと図鑑を自分でめくってみた。異形の子供は面白がって絢香の好きなようにさせてくれた。絢香は次々にページを繰りいろいろなものを見た。
異形の家の様式、異形の体内図、何度か乗ったことがある宇宙船、宇宙港。
「あ!」
絢香は開いた百科事典のページに飛び乗る。
「宇宙!宇宙の図解だわ!」
雷三が首をかしげる。
「宇宙ってなんだ?」
「私達の故郷へつながる道よ。宇宙を旅したら、私達は帰れる!」
絢香が夢中でそのページを見ていると、異形の子供は本棚から分厚い本を取ってきた。絢香の目の前で開いて見せる。
「星図!」
そこには地球で見慣れた星座とは違う星達が描かれていた。しかし惑星の並びは、太陽系のものだった。
「地球がある!」
絢香は星図を指差した。
そこに描かれているのは青い水に覆われた、まごうことなき地球の姿だった。絢香は懐かしさに涙を流した。雷三が絢香の背中を撫でてくれた。異形の子供は心配そうに絢香の顔をのぞきこんだ。
「大丈夫、大丈夫よ。うれしかったの」
絢香は本の上に体を乗り上げ、地球の絵に頬擦りした。
「帰りたい。帰りたい……」
「帰ろう、絢香」
雷三が力強く絢香の手を握る。
「宇宙へ行こう」
絢香は起き上がると雷三を見つめ、頷いた。




