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今日のおはなし  作者: 溝口智子
金の糸 15
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桜が散ったら逢いましょう

桜が散ったら逢いましょう

あの人と約束した。

「桜が散ったら逢いましょう」

花が咲いてから、日に日に落ちる花びらを数えた。

一枚散った。

二枚散った。

三枚散った。

そうして風が吹いた。

数えきれないくらい散る花びら花びら花びら。

うれしくて、うれしくて、踊りだしそうだった。

雨が降った。

これでまた花びらが散る。天をあおいで笑みがこぼれた。

緑の葉が目立ってきて、最後の花びらが散った。


春雷が走る。

あの人を乗せて雲がやってくる。

稲妻が桜の木に落ちる。

閃光をまとったあの人が私に手を伸ばす。

ああ、春が終わる。

私は季節のうつろいと共に次の嵐を待つ。

夏の終わりを、秋の終わりを、冬の終わりを、そしてまた春の終わりを。

季節のはざかいにあの人は稲妻を連れて私に逢いに来る。

「ひぐらしが鳴いたら逢いましょう」

次の約束が私を生かす。

ひぐらしが鳴くまで、長い日を過ごす。

あの人を待ちながら。

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