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五月蝿い
五月蝿い
バナナをうっかり放置したまま出張に出掛けてしまった。
帰って恐る恐るドアを開けると、むわあっとウンカがまとわりついてきた。
息を止めダッシュでベランダの戸を開けた。玄関からベランダへ一直線に風が通り、あらかたのウンカは飛んでいった。
部屋のあちこちに留まっているヤツを新聞紙で追い、問題のバナナに近づく。
バナナは一面、ウンカがたかり真っ黒だった。ビニール袋を大きく広げ、ガバッとバナナに被せる。六割がたのウンカを捕まえることができた。
それでもまだまだ部屋中ウンカの海だ。
げっそりする。
このままどこか遠くへ逃亡してしまいたい。
しかし。
そうはいかない。
ほっぺたを叩き気合いをいれて。
ドラッグストアに燻煙タイプの殺虫剤を買いに走った。
窓は全開にしておいた。
盗みに入るなら入るがいいさ。ウンカの大群にまみれて、盗めるものはほんの小銭さ。
考えて、悲しくなった。
その小銭を守るため、これから必死の戦いが始まる。




