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今日のおはなし  作者: 溝口智子
金の糸 15
219/888

畳に

畳に

畳に大の字に転がる。


「づぁー。たまらーん」


青いい草の香り。新品の畳表は春の野山のようだ。

香織は両手を頭上にあげると、ごろごろと転がり部屋の端から端まで。

また端から端まで。

なんども往復する。


廊下側はひんやりと、縁側の方はあたたかく。春の一日はのどかに過ぎる。


縁側にネココがやって来て毛繕いを始めた。

香織は縁側の方へ転がり、ネココの背中に触れる。ネココは嫌がり香織の手を甘がみして庭の向こうへ逃げていった。


ネココが座っていた場所に触れると、ほんのりと温かかった。


陽が少しずつ傾き、畳に斜めに西陽がさして、青い畳がオレンジに染まる。

香織の影は長く伸びて部屋の奥まで届く。

香織は得もいわれぬ

心持ちがして小さく丸まった。

夜がくるまでそのままでいた。


祖母から受け継いだこの家を変わらぬ姿で使いたかった。けれど小さな頃に嬉しかった思い出をもう一度味わいたくて、香織は畳替えをした。

後悔はしていない。ただ、なぜか寂しい。


ネココが庭から上がってきて香織の膝に頭を擦り付ける。香織はネココの頭を撫でてやる。祖母の忘れ形見。


撫でているとネココの毛がどんどんとれて毛玉ができた。冬毛から夏毛へはえかわる時期だ。


「毛皮が代わってもネココはネココよね」


香織はよっこらしょと起き上がると伸びをした。


「ネココ、ブラッシングしようか」


ネココは一目散に逃げていった。

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