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由香と夫の春模様
由香と夫の春模様
「春が来たよー!!」
「うお、びっくりした。なに、突然?」
「コブシの花が咲いてたの」
「コブシ?」
「ほら、角の佐伯さんの庭に大きな木があるでしょ?白い花がたくさん咲いてたの」
「へえ。由香はコブシが好きなんだ?」
「うーん。どうだろ」
「好きじゃないのに花が嬉しいんだ?」
「コブシの花が咲くと『春!』って感じになるの」
「春が嬉しいんだ?」
「うーん。どうだろ。スギ花粉がなければ好きかも」
「じゃあ月にでも移住しなくちゃなあ」
「月に行ったら春は来ないんじゃない?」
「そうか、そうしたらつくしが食べられないなあ」
「つくし好きよねえ」
「かわいいからな」
「え、そういう理由?」
「うん」
「……変わってるわね」
「春だからなー」
関連性がよくわからないまま、由香は席を立った。台所に山とつまれたつくしのハカマと格闘するために。




