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今日のおはなし  作者: 溝口智子
金の糸 15
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裏の山の野いちご

裏の山の野いちご


春が来た。

なんて言ってたら桜はすぐに終わって、もうすぐ梅雨になる。

勇人はこの時期が大好きだ。毎日裏の山の竹藪を歩き回る。

下生えに、野いちごが生るのだ。


春先にはやはり竹藪を歩き、小さな白いいちごの花を確認しておく。その位置を覚えておいて、春の終わりに収穫にいく。


ざるを抱えて手当たり次第に野いちごを摘み、ひとつ食べてはひとつざるに入れ、ひとつ食べてはひとつざるに入れていく。

満足するほど食べ終えたら、残りは摘んでジャムにする。勇人は料理はできないが、ジャム作りだけは自信がある。


野いちごのジャムはスーパーで買うイチゴジャムとは大違いだ。

灰汁がたくさんでて、汁気が多く、酸味と独特の野花の香りがする。


ことこととじっくり煮ている間、勇人は野いちごと一緒に採ってきた破竹の根を切っておく。これはばーちゃんが茹でてくれる。


灰汁をとりながら煮詰めていくと、甘ったるいばかりだった香りのなかに、爽やかな風が吹くような香りがたつ。そうしたら出来上がり。

瓶に移して熱いうちに一舐め。

背筋がしびれるような甘さと、野いちごの香り。春の置き土産。

勇人は大事に瓶に蓋をして今年の春の名残にした。

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