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今日のおはなし  作者: 溝口智子
金の糸 15
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宙を飛ぶツナサンド

宙を飛ぶツナサンド


「好きです!! 付き合ってください!!」


クラス中の視線が集まる。皆ポカンと口を開けている。俺もポカンと口が開く。くわえていたツナサンドがポロリと落ちる。遠足のざわめきはピタリと静寂にかわった。


告白されたのは、どうやら俺みたいだ。

告白したのは、どうやら目の前に立っている見知らぬ女性のようだ。

女性は犬の散歩中らしい。俺が落としたツナサンドを女性が連れているマルチーズが食らっている。

俺の昼飯を……。ちょっぴり切なくなった。


シンと静まった周囲から送られてくる視線は(はやくなんとか返事をしろ)と俺を急かす。

俺はつくづくと女性を見つめる。どう見ても知り合いではない。自慢じゃないが俺は、見知らぬ女性に惚れられるほどイケメンじゃない。女性の視力がとても悪いのかもしれない。あるいは前世からの運命の相手とか。


それならば、突然の告白も納得いく。うん。きっとそうに違いない。


「はい、俺でよければ」


わあっと歓声があがり、クラスの男子が寄ってきて俺を胴上げする。

なぜか俺のツナサンドも宙を飛ぶ。マルチーズがツナサンドに飛び付く。



俺たちの出会いは余すところなくカメラに納められ、学校の掲示板に張り出された。

俺とその女性は長く付き合い、この春、結婚した。

妻に一目惚れの仔細を聞くと、俺がツナサンドを食べている様子が愛犬の仕草と酷似していたのだという。マルチーズはツナサンドが大好物で、今でも俺の手から奪って逃げる。

俺がマルチーズを追い回すと妻は大笑いして俺とマルチーズの真ん中にツナサンドを投げる。俺とマルチーズは宙を飛ぶツナサンドを追いかける。

昼下がりの公園でそんなバカなことをするたびに、妻と出会った日を懐かしく思い出している。

そして青空にまた、ツナサンドが舞う。

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