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道にはなにかが落ちている
道にはなにかが落ちている
地面を見て歩くくせがある。
上を向いて歩いていると、知った顔に出会う可能性があるからだ。顔は見れば「あ、知ってる顔」とわかるのだが、名前がとんと出てこない。どこで会ったかも思い出せない。
その再会は恐怖だ。
なもので、地面を見て歩く。
すると色々なものが落ちていることに気づく。
ストラップ、鍵、ピアス、手袋、片方だけの靴、文庫本、お金。
とにかくお金はよく落ちている。
小銭は当然のこと、お札もたまに落ちている。
ショッピングセンターなどではとくに多い。
ポロポロ落として気づかないなんて、どんな金持ちだろうと感心する。
今までで一番高額な拾いものは二十万越え。預金通帳を拾ったので。もちろん警察署に届けた。
財布も結構落ちている。
道には今日もなにかが落ちている。