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今日のおはなし  作者: 溝口智子
金の糸 15
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魔法瓶

魔法瓶

瓶を、買ってしまった。

オークションで。


入札額は一円。

それで買えてしまった。

私は、送料プラス一円で、この瓶を手にいれた。


手のひらに収まってしまうような小さな瓶。

透き通った青。

空のような青。


試験管のようにまっすぐで、コルクの蓋で閉めてある。


中には、なにか液体が入っていた。

オークションの出品情報には、液体のことは書いていなかったし、写真でも、たしか空き瓶だったような気がする。

……たぶん。


これは開けても大丈夫なんだろうか。

毒性のある科学薬品ではないのだろうか。

試験管のような形状が不安をあおる。


あるいは開けたら白い煙がわきだして、老人になってしまうのではないだろうか。


手のひらの上で瓶を転がす。

液体がちゃぷちゃぷと揺れる。


水よりは粘性があるようなとろりとした動きで、海を思わせる。


繰り返し繰り返し瓶を揺すっていると、なんだか潮騒が聞こえるようで、私はうっとりと目をつぶった。


水音はちゃぷちゃぷと舟端をあらう波のようで。


開けてみようか。


私は目を開け、コルクにそっと手をかけた。


しかし、いや、と思いとどまる。


瓶を揺らす。

その液体は神経を侵す毒のように

はるかへいざなう海のように

私の心を掻き乱す。


今すこし、このざわめきを楽しみたくて、私はそっと瓶を握りしめた。

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