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恋をした夕暮れは
恋をした夕暮れは
明日も晴れるのだろう、真っ青な空が恋をしたように赤く染まる。
私の心もあんな色をしているのだろうか。樹里は胸に手を当てて考えてみる。
恋をした。
隣同志のデスクで、いつも通りの仕事。いつも通りの何気ない会話。ただ一つ違ったのは彼の指先の絆創膏。
「夕べ、包丁で切っちゃったんだ」
「なにを作っていたの?」
「オムライス」
はにかんで視線をそらした彼の横顔。いつか私が作ってあげたい。そう、思った瞬間、好きだと気付いた。
隣同志のデスクで、いつも通りの仕事。いつも通りの何気ない会話。ただ一つ違うのは、樹里の心の中に灯った赤い炎。
その炎が、私のエネルギー。どこまででも走っていける。樹里は笑顔いっぱいで仕事に向かった。




