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今日のおはなし  作者: 溝口智子
金の糸 15
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恋をした夕暮れは

恋をした夕暮れは

明日も晴れるのだろう、真っ青な空が恋をしたように赤く染まる。

 私の心もあんな色をしているのだろうか。樹里は胸に手を当てて考えてみる。


 恋をした。

 隣同志のデスクで、いつも通りの仕事。いつも通りの何気ない会話。ただ一つ違ったのは彼の指先の絆創膏。


「夕べ、包丁で切っちゃったんだ」


「なにを作っていたの?」


「オムライス」


 はにかんで視線をそらした彼の横顔。いつか私が作ってあげたい。そう、思った瞬間、好きだと気付いた。

 隣同志のデスクで、いつも通りの仕事。いつも通りの何気ない会話。ただ一つ違うのは、樹里の心の中に灯った赤い炎。

 その炎が、私のエネルギー。どこまででも走っていける。樹里は笑顔いっぱいで仕事に向かった。

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