君がいるから
君がいるから
「ううう、寒いねえ」
「猫背になってるからだよ。姿勢よくしたら筋肉使うから暖まるぞ」
「そんなこと言われても無理ー。君みたいに筋力無いもん」
「へたれだなあ」
「どーせへたれてますよーだ」
「ほら、手、貸せよ。ポケットに入れてやるから」
「ん」
「うわ、つめてー。手袋しろよ」
「いや。しない」
「なんで」
「だって……。手袋したら、こうやって君のポケットに手を入れられないじゃない」
「……」
「あれ? 耳が赤いよ。耳当て貸そうか?」
「いや、大丈夫」
「でも真っ赤だよ」
「大丈夫だから!」
「じゃあ、こうしててあげる」
「わ、ばか、抱きつくな!」
「ばかでいいもーん。ね、こうしてると、すごく暖かいね」
「……」
「あれ? 顔真っ赤だよ。顔寒いの?」
「お前、わざとか!」
「え? なにが?」
「ニヤニヤしながらとぼけるな」
「とぼけてないよー。ホントにわからないの。なんで顔赤いの?」
「だから、ニヤニヤするなっての」
「ふふふふ」
「ちょ! なに! 人前で!」
「誰も見てないって」
「見るよ! バカップルだと思われるよ!」
「いいじゃない、バカでも。ね、唇、暖まったでしょ?」
「……そうだな」
「じゃ、もう一回」
「バ、やめろ! お前、肉食過ぎ!」
「やだなあ、こんなに可愛い子羊をつかまえて、肉食だなんて」
「お前なんか羊の皮を被ったライオンだ」
「そこは狼って言うところでしょ」
「だめだ、狼は」
「なんで?」
「人を食べた狼は腹を裂かれるものだからな」
「赤ずきんちゃんの話?」
「七ひきのこやぎもだ」
「ありがと」
「なにが?」
「お腹の心配してくれて」
「……おう」
「お腹すいた。何か食べにいこ」
「なにがいい?」
「温かいもの!」
「だよな」
「でもホントはなんでもいい」
「なんで?」
「君といるだけで、暖かいから」
「……」
「あれ? 耳が赤いよ。耳当て……」
「もうそれはいいって。ほら、行くぞ」
「うん! ポケットに手、入れさせてね」
「おう」
「来年の冬もね」
「おう」
「ずっと一緒に暖かい冬を過ごそう。来年も再来年も、ずっと先まで」
「……おう」
「大好きだよ」
「……俺も」
「あれ? 耳が赤いよ……」
「だから! それはもういいって」
「ふふふふふ」