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今日のおはなし  作者: 溝口智子
金の糸 15
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携帯依存症

携帯依存症

終業のベルが鳴るやいなや、美和子は「お疲れ様でした!」と言いながら立ち上がり、同僚の返事も聞こえぬうちにドアを閉める。

階段を駆け登り、ロッカーへ走っていく。

ロッカーの扉をあけると、すぐ手を伸ばせる位置にケータイを置いている。

ケータイはピカピカと光って、メールを受信していることを知らせる。

急いでケータイを開き、メールを確認する。


「……えー。広告ばっか……」


美和子はガックリと肩を落とす。

しばらくうなだれたまま、未練がましく、何度かメールを受信をしなおす。

しかし、何度確認しても、未受信のメールはなかった。


「はあ」


ため息をついて、帰り仕度を始める。

のそのそ制服を脱いでいる時になって、やっと同僚が上がってきた。


「あれ〜野田さん、まだいたんだ? 急いでたから、とっくに帰ったかと思ってた」


「うん、ちょっと、メール見たかっただけ……」

美和子は鳴ってもいない携帯を手に取り画面を見てロッカーに戻す。


「なになに? 彼氏からのメール待ち?」


「いや……そんなの待ってないし」


美和子は鳴ってもいない携帯を手に取り画面を見てロッカーに戻す。


「そんなのって、ちょっとヒドいね〜。愛が無いぞ、愛が」


「そうだね……」


美和子は鳴ってもいない携帯を手に取り画面を見てロッカーに戻す。


「なんか、暗いよ? 悪い知らせ?」


「ううん、来てなかったの、待ってたメール。あ〜あ」


ため息をつく美和子のロッカーの中、ケータイが鳴る。グリーンスリーブス。メール着信音だ。

美和子はさっと手を伸ばし、ケータイを開く。


「きゃああああ!! やったあ〜!!」


「え、なになになに? 待ってたメール?」


「そう! 取れたの、アリーナ席!! やった〜〜〜!!」


「え、なに、コンサート?」


「そう!! スガシカオ! ファンクラブ先行抽選に当たったの〜〜〜!! うれしい〜どうしよ〜〜」


ケータイを握りしめ、クルクル回る美和子を、同僚はほほえましく眺めた。


「世の中には色んなメールがあるもんだねぇ」


感嘆の声は美和子には聞こえていないようだった。

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