クリスマスに靴下を飾る理由
クリスマスに靴下を飾るわけ
「ほっ?」
新年のごちそうを食べていたサンタさんが、ぱたっとフォークを置きました。
「ほー、こりゃしまった。トナカイたちにクリスマスプレゼントをやるのを忘れていた」
サンタさんは白いふわふわのおひげをひねりながら考えます。
「しかし、新年を過ぎてからクリスマスプレゼントをやるわけにはいかん。こりゃまいったな」
窓から外を見てみると、トナカイたちはそれぞれに飼い葉を食べたり、雪をかいたり、楽しそうに過ごしています。
ただ一頭、赤い鼻のルドルフだけは悲しげに下を向いていました。
サンタさんは気になって外へ出てみました。
トナカイたちは大好きなサンタさんの顔を見ておおはしゃぎ。
けれど、ルドルフだけは黙ったままです。
「ルドルフや、どうしたんだね? そんな悲しそうな顔をして」
ルドルフはサンタさんから顔をかくしてそっぽを向きました。
「サンタさん、僕はもうサンタさんの役に立てません」
「それはまたどうして? 病気になったのかい?」
「いいえ」
「そりをひくのが嫌になったのかい?」
「いいえ」
「じゃあ、いったいどうしたんだい、聞かせておくれ」
サンタさんがそういうとルドルフはくるりと振り向きました。
「おや、まあ」
いつも真っ赤にピカピカ光って夜空を明るく照らしていたルドルフの鼻は、今は鼻水をたらして青くなっていました。これでは夜道が見えません。
「お前は風邪をひいたのだね」
「かぜ?」
ルドルフはきょとんと首をかしげました。
「そうだよ、病気だよ」
「治らないの?」
ルドルフは悲しそうに聞きました。
「暖かくしてぐっすり眠ればすぐによくなるよ。そうだ、待っておいで」
サンタさんは急いで家に入ると毛糸を取りだし、サッサッと編み始めました。
サッサッサッサッと編んで、あっという間に毛糸の靴下が出来上がりました。
サンタさんは靴下をもってルドルフのところへ戻りました。
「お待たせ。さあ、靴下をはいてごらん」
ルドルフはいそいそと靴下に足を入れました。ふわふわでとっても暖かでした。
すぐにルドルフの鼻水はとまりました。
「さあ、あとは暖かくして眠ればよくなるよ」
そう言ってサンタさんはトナカイの寝床にいつもよりたくさんの藁を敷いてあげました。
それからサンタさんは家に戻って毛糸の靴下をたくさん編みました。
サッサッサッサッと何足も。
そうしてトナカイたちみんなにおそろいの靴下をプレゼントしました。
嬉しそうにはしゃぐみんなを見てルドルフもニコニコ。
「ルドルフや、その靴下をクリスマスの日には寝床に吊るしておくれ。そうしたら今年のクリスマスのプレゼントを忘れなくてすむからね」
サンタさんははずかしそうに真っ赤になって笑いました。




