幸せのサンドイッチ
幸せのサンドイッチ
「ねーぇ。休日だよぉ。どこか出掛けよぉよー」
朝からテレビの前に陣取り動かない夫の肩をゆさゆさ揺さぶりながら、由香が言う。
「お金がなーい」
夫はテレビから顔を離さず答える。
「お金のかからないレジャーしようよー。お弁当持って公園行くとか」
夫はムクリと起き上がり由香の顔を見る。
「何、そんなんでいいの?なら、行こう」
「やった!すぐにお弁当作るね」
スキップしながら台所に向かう由香を見送り、夫は顔を洗いに行く。
お弁当と水筒を抱え、家を出るころには昼も近くなっていた。
「で、どこ行く?」
「お城の公園行こう」
二人は並んで、お花見の名所である公園へ向かう。
「今年はお花見、一緒にいけなかったね〜」
「うん。なんだか忙しかったな」
「来年は行こうね」
「うん。あ、そうだ、お弁当中身なに?」
「サンドイッチだよ」
「了解。ちょっと待ってて」
夫は近くのコンビニに走って行く。
由香がトコトコ近寄る間に、あっという間に買い物を済ませてしまった。
「なに買ったの?」
「秘密」
にやにやする夫を
「あら、そう」
と軽くいなし、トコトコ公園へ向かう。
よく晴れて気持ちの良い初夏の芝生の上に、持ってきたシートを広げ、腰を下ろす。
由香がサンドイッチを広げ、夫がコンビニ袋を開ける。
「お!ワインじゃないですか!」
「いいだろ?休日らしくて」
「うん!…ねえ、コップは?」
「あ!」
あからさまにシマッタという顔をする夫を由香が笑う。
「しょうがないなあ。水筒のコップで飲もう」
サンドイッチをつまみつつ、ワイン。
時々、ひばりが鳴く。
由香の頬は、次第にばら色になってきた。
「私ね〜世界中の食べ物の中でサンドイッチが一番すき」
「じゃあ、サンドイッチ伯爵に感謝しなきゃ」
「うん。ね、幸せのサンドウィッチって言う歌、知ってる?」
「知らない」
「幸せだねぇ」
「それは知ってる」
空は澄んでどこまでも青い。
夫が言う。
「幸せだねぇ」
「うん。それは知ってる」
休日の昼下がりを二人、ほろ酔いで過ごした。