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いらっしゃいませ。
私は『案内屋』の店長の源内と申します。
ええ、依頼ですね。もちろん任せてください。どんな人でもどんな動物でもどんな物でも、必ずや目的地に案内して差し上げましょう。
はい、御名前は名乗っていただかなくて結構ですよ。名前を言ったところであまり意味があるとは思えませんしね。私の名前と同じようにどうせ偽名でしょう。
嗚呼、失礼いたしました。別にそういう意味で言ったのではありません。私も色々な世界を見てきたので、そういうのはわかってしまうのです。申し訳ございません。
迷わせ屋?
いるようですね、そんな輩も。最近それのせいか、仕事の進みが悪くて少し困っていましてね。
でも、心配は無用ですよ。信頼も実績も経験も、こちら方が上です。彼に後れを取ったことなど、数ある案内の中でたったの十数回。割合にして一割未満。なにも恐れる必要はありません。
ところで案内する相手ですが。
ほう、これは珍しい。大手企業の社長でもなく、マフィアのボスでも大統領でもない。
ただの一般人とは。
いえ、もちろん引き受けますよ。この案内屋、断った依頼など、記憶の限り一つもありません。
お代? それはいりませんよ。案内屋は迷わせ屋とかいうどこかのぼったくり店とは違って慈善事業ですから。あなたの感謝の気持ち、それだけで十分です。
任せてください。
私案内屋、放火をしてでも事故にみせかけ会社を壊してでも欠陥のあるネットカフェを紹介してでも結婚詐欺にあわせてでも多額の借金を背負わせてでもコーヒーの代わりにコーラをカップに注いででも、必ず――
――その方を目的地まで、案内いたしましょう