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撃滅師物語  作者: ぺぺぺぺぺ
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第一章 争奪戦(1)

「待てといわれて、待つやつはいないだろ」

 閑古鳥が泣いてしまったかのように、ひっそりと静まり返ってしまった都会のど真ん中で、鷹鶴総士かくよう・そうじは命懸けの鬼ごっこを繰り広げていた。

 目にかかるかかからない程度の黒髪に、どちらかといえば長身痩躯の少年で、モットーは『ローリスク・ハイリターン』と『世界とは俺と妹に奉仕するためにある』のふたつ。他人に厳しく、妹に激甘な性格のため、まわりからはシスコンと馬鹿にされることも多い。

 どこか減らず口で、陽気さも兼ねそなえたソージだが、今回ばかりは必死に逃げ惑っていた。なにしろ後ろから追い駆けてくるのが《蒼い死神》の異名を持つ、アイツなのだから。

 不意に後ろから声がした。

「ならば、全力を持って殲滅するだけだっ!」

 アスファルトで舗装された道路の真ん中を突っ走るソージを追いすがるようにして、紺碧色をした流線的なフォルムの機械の鎧を纏った少女が迫る。

 短めに整えられた群青色の髪に、これも同じく群青色の瞳をしている少女で、ソージよりも身長は頭ひとつ分低めだが、それを感じさせない強固な執念めいた意志が感じられる。彼女の引き締まった表情に負けず劣らずの険しい双眸からは、どこか猛禽の輝きを放たれている。

 その少女は、纏っている機械の鎧――強襲汎用装甲服〈騎竜〉――の上腕部に備え付けられた内蔵型のガトリング砲でこちらを狙う。神経伝達回路を介して、彼女の攻撃意志が反映され、ガトリング機構が小気味良い唸り声を上げた。

「くっ……。時雨っ、おまえには友情ってものがないのか!」

 跳んできた銃弾の雨を、ソージは激しく体を振り避け切ってから、後ろを向いて告げた。その表情には慌てていながらも、まだどこか余裕めいたものが感じられたが、それはおそらく彼の持ち味のひとつなのだろう。

「わたしの獲物を横取りしておいて、なにをエラそうにっ!」

 時雨は不満をあらわにして、ソージにせまる。

「横取りって……。心外だな。あの《守護獣》(ガーディアン)はおまえが倒しただろう」

「なら、その手に持っている《核石》(かくせき)を渡せっ!」

 時雨の指摘通り、ソージの手になにかを握りしめていた。

 野球ボールほどの大きさをした、ルビー色の宝石のようなものだ。表面は細かくカットされていてまばいばかりの光沢を放っている。なにも知らない一般人が見ても、なにかしら高価な物品であることは一目瞭然のシロモノだった。

「ソージ。……貴様がそれを返せば、矛をおさめてやらないこともないぞ」

 時雨が隙のないガトリング砲でこちらを狙う。しかし、ソージは冷静に状況を吟味する。

 このまま道路沿いを走ったところで、時雨の追撃を振り払うことは難しいだろう。時雨のパワードスーツはかなり高性能だ。なら、生身の自分が逃げ延びるためにはどうすればいい? ――もちろん、この核石を取り返されることなしにだ。

 周囲をさりげなく見渡したソージは、目と鼻の先にある、まるで自分の来訪を歓迎するかのようにエントランス・ロビーが解放されている高層ビルに目を付けた。

ビルまでの距離は、およそニ○メートル。異能者である彼が全力を出せば、一秒そこそこで移動できるだろう。突風を巻き起こして、時雨の不意を突くことが出来れば、辿りつけないこともない。

そう判断したソージは、決死の大逃走劇の継続を決意する。

(イメージするのは、吹き荒れる突風。風力は八ぐらい……か)

 ソージは時雨に向かって、真っすぐに吹き荒れる突風を脳内で想像した。

 そしてそれは現実のものとなる。

 実際に時雨に向かって本当に突風が吹き荒れた。毎秒約十八メートルで進み、小枝を折ってしまう速度の疾強風に彼女は苛まれ、巻き上げられた路面の土埃が目に入り、一瞬視界を奪われる。

その隙をついて、ソージはビルの中に駆け込んだ。彼のすぐ後ろを鉛弾なまりだまぜていくがてんで狙いが定まっていない。エレベーターをもどかしく待ちながらも、ソージは最上部へと向かった。

 屋上に着いた彼が、落下防止のためのフェンスに寄りかかっていると、時雨が息を切らしてやってきた。どうやら階段をつかって、このニ十階建てはありそうな高層ビルをよじ昇ってきたらしい。

「……見つけぞっ! さあ《核石》をこちらへ返してもらうっ!」

 ぜぇー、ぜぇーと息を切らしながらも、必死に追いかけてきた時雨の姿に、ソージはわずかばかりの同情を禁じ得ない。エレベーターを使えばいいのに……。取り返そうと焦る気持ちばかりが先走って、周りが全く見えていない。時雨の行動力と決断力は驚異的だが、思考は単純なアナログだ。デジタル思考の俺の方に分がある。

 ソージはにやりと不敵に微笑んだ。

「それはムリな注文だろ。だってこれを先に手にしたのは、俺だもん」

「それを横取りというのだ!」

「わかったわかった。返すよ、ほらこれ」

 その手に握りしめられていた深紅の《核石》を、ソージはビルの屋上から放り投げた。突然の出来事に呆然とその場に立ち尽くしてしまった時雨に対し、彼は内心でほくそ笑みながら、自らもフェンスを乗り越え、屋上から飛び降りた。

「そんじゃ、これでさよならだ」

 約四○メートルほどの自由落下したところで、風を切る音に包まれつつ、彼は空中で《核石》をキャッチする。

(これだけあれば、マンションのローンも一括払いできるな)

 一般人にとっては、絶望までのカウントダウンが始まるという状況でも、ソージは冷静だった。重力に身を委ねながら、落ち着いて自分の中で、チカラの発現をイメージする。風使いの超能力者である、ソージならではの行動だった。

「逃がすか。これでも喰らえっ!」

 どこか遠くから聞こえてくるような、かすかな声が耳についた。

 ソージがふと上を見上げると――屋上のにいる時雨のような人影がこちらに向けて、なにかしら砲身のようなものを向けていた。そしすぐに、プシュという高圧ガスが抜き出るような音がしたかと思うと、こちらへ向けてゆっくりと、だが確実に飛来する物体があった。

拳銃弾に比べて、その質量は遥かに大きい。

 相対速度は詳しくわからないが、その物体の方が上だった。距離が縮まるにつれて、ソージにもなんであるかははっきりとわかった。グレネード弾だ。爆風だけでなく、鉄片をも撒き散らすそれは、空中にいる自分を狙うには最善であり、彼にとって最悪の選択だった。

「どわわわ……。ば、馬鹿っ。命中したらケガじゃすまないんだぞ!」

 勝ち誇るようにしているであろう時雨に届くように、ソージは大声で説得にかかった。彼女の最新装備なら、どうにかしてグレネード弾を自爆させることができると信じて……。

「認可を受けていない撃滅師バスタードに関する処理については、全て自己責任が適用されることになっている。これは国連憲章第八条にも定められていることだ」

「チョイ待て! だからって、ンなもん喰らったら――」

「……そうか。死ぬのか。……ならば、好都合だ」

 説得は……ムダだった。

 俺に核石を横取りされたのが、相当頭にきているらしい。だからって、殺そうとする必要はないだろう。同級生なんだから。笑って許してくれるほどの器量があってもいいものだろうに……。時雨は冗談というものを介さないから、彼女の先程の発言はすべて本気なのだろう。なんて頭が固いやつだ。

ソージは自分に都合よく解釈しながら、生き残るための手段を探る。

 接近してくるグレネード弾は、おそらく遅延信管で爆破するつもりだろう。そう彼は見切りをつける。近接信管ならヒトという目標に対して小さすぎて作動しないだろうし、着弾の衝撃で爆発する接触信管を選ぶ愚行を、あの《蒼い死神》――一握りに人間しかなれない――Aランクの撃滅師――が犯すとは思えない。

 時間経過とともに爆発する遅延信管だと判断したソージは、グレネードの接近とともに、その衝撃をうまく受け流すように風の障壁を築き上げる。その風は自分の降下を加速させ、遅延信管を無力化させる形状――傘のように張り巡らされた全強風に爆炎がのしかかった。

 飛び散る破片と爆風。髪が少しだけ焦げた気がするが、生きてるだけマシだ。

「あぶねーあぶねー。もうすこしでこんがり焼き上がるところだった……」

 そのチカラで器用に危機を乗り越えたソージは、無事に地面に着地した。風使いなのだが、地面に足がついている方が、空中にいるよりも遥かに安心感があった。

 いくら時雨といっても、あれだけ苦労して上り終えた階段を、今度は大急ぎに下るのは至難の技だろう。体力的にはできないこともないだろうが、精神的には相当参ってしまう。もちろんこれらは全て計算尽くだ。卑怯で姑息な戦法――ソージが自称するところの『頭脳プレイ』が、彼の戦闘スタイルなので狙い通りの成果なのだろう。

 だが、ここでさらにべつの声がかかる。

「そう……。ならソージ、今度はあたしと遊んでちょうだいっ!」

 せっかく苦労して追手を撒いたというのに、今度は強奪者ロバーの登場かよ。ソージはやつれた表情をしながら、声のした方を振り向いた。

 その刹那。

ひゅっという風切り音とともに、なにかがソージの髪をかすめた。そして、それは近くにあった街路樹に深々と突き刺さる。よくみると、それは白銀の輝きを放つ、磨き上げられた投げナイフだった。しかも、その切っ先だけは妙に黒ずんでいる。

「おいおい……。凛っ! これってまさか毒じゃないだろうな」

 ソージは突然目の前に現れたナイフを手にした少女に注目する。

 後ろ髪を結わえてポニーテールにしている少女。その身なりからはどこか気品と優雅さが感じられるにもかかわらず、言葉づかいはどちらかというとガサツだ。だが、それがご愛敬とも感じられる少女で、来ている制服はソージと同じ学校のものだ。

「よくわかったわね」

 神宮司凛はにっこりとほほ笑んできた。

 上品さとは裏腹に、彼女が扱うのはおもに毒物や劇物といった類だ。それらはいわゆるオカルト系統に属する類にものであり、凛自身も神道裏十三家のひとつ、神宮司家という祓魔師ふつましという魔術師の家系に生まれている。

「経皮生の神経毒よ。体の大きな象さんも一発でころりの優れモノで、今回は南アメリカ産ヤドクガエルから抽出したアルカロイドを大奮発してるの」

 ひどくマニアックな単語だが、要は喰らったらただじゃ済まない、ということだろう。ソージとしては一難去ってまた一難なので、どこかやるせない気持ちに駆られてしまう。

 どことなく訴えかけるように彼は嘆願する。

「なあ……。同級生なんだから、見逃さない?」

「ダーメっ! あんたが手にある《核石》を渡すなら、べつだけど」

「でも、毒だぞ! 毒っ! 俺死ぬときは、老衰って決めてんだけどっ!」

「大丈夫よ。致死量ぎりぎりの量を塗りたくってあるから、半殺し状態で許してあげる」

 やはり話し合いには……応じてくれない。

 制服の中に仕込んであるナイフを、凛はどこからともなく取り出し狙いを定め、しなる竹のようなオーバスローで投擲する。対するソージは風を操って跳ね返すこともできなくなかったが、踵を返しそそくさとトンズラをこくことにした。超能力といっても使えるチカラの総量には限界があるし、いつ時雨に追いつかれるかも定かではないからだ。

 ひらりと背中を翻したソージは大通りを避けて、ゴミなどが散乱していて、じめっとしている、どこかこじんまりとした裏道を走って脱出をはかる。

この世界とは、そろそろおさらばしたいものだ。

 そう思った矢先のことだった。

 道端にあった小さめの大きさの鉢が、がたがたと音を立てたかと思うと、鉢ごと弾け飛び、中から巨大な植物のバケモノがいきなり姿を現した。

 地球上の在来種とは一線を画すそれは、驚きながらも逃げ惑うソージの足に絡みつき、彼の身体の自由を奪おうとした。彼は慌てて手を振り払い、風の刃を巻き起こして大気ごとそれを切り裂いた。一旦は体の自由を得たが、またすぐに他のツタが絡みついてきて、余計にひどくなってしまう。

 ツタの先――本来、花弁があるべき部分には、消化液のようなものを滴らせている、二枚貝のようなものが存在していた。これは花弁ではない、捕虫器だ。まるでアングリー精神まるだしの口だ。どうやら人喰い植物の類らしい。

「ゲ……っ! なんなんだよ、これ……」

「モノリスの《化身》用に設置していたトラップよ。あたしの魔力を媒介にして急成長するの。名前は〈シャーリーン〉。アメリカ産のハエトリグサに祈りが通じて誕生した、オリジナルの人喰い植物」

 モノリスの《化身》とは、この世界――虚幻きょげん世界――にのみ生存する生命体のことだ。現実世界に――モノリス――と呼ばれる暗黒物質が出現しはじめてから、ここ百年間、全世界共通の脅威として認識されている。

 縦と横と高さの比が、1・3・9の直方体で構成されているモノリスは暗黒物質の集合体である。黒曜石に似た輝きを放ち、どこからともなく現実世界に出現すると、一定の範囲内にいる全ての人間を、虚幻世界に強制的に引きずり込む。

そこは現実世界となんら変わりない景色が広がっているが、モノリスの《化身》と呼ばれる異形の存在がいて、人々を襲い、喰らい、そして殺す。人間が生き延びるためには、虚幻世界に居座る《守護獣》と呼ばれる《化身》の王を倒すか、虚幻世界に存在するモノリスに触れることで、現実世界に戻る必要があった。

そしていま彼らは、虚幻世界の《守護獣》を倒し、戦利品である《核石》と呼ばれる物質の争奪戦の最中にある。

「あのー、助けてってくんないの?」

 ツタの葉に雁字搦がんじがらめされて身動きひとつ出来ないまま、ソージが情に訴えかけた。すでにその手にあった《核石》は、凛の手元へと場所を移していた。身動きできない彼のすぐ近くには、いまにもこちらを呑み込んでしまえそうな捕食器がある。

「ソージが暴れなければ、〈シャーリーン〉も『獲物』がいることに気づかないから、大丈夫。……けど、ホント、動いちゃダメよ」

 ソージはひときわ異彩を放っている〈シャーリーン〉の口にあたる個所を眺めた。よだれのように消化液を垂れ流し、いぼいぼのついた二枚の口が禍々しく出迎えてくれている。こんなかわいげのないやつに、名前をつけるやつの気がしれない。

「じゃあ、これ、もらっていくね」

「おいおい、それは俺が盗んできたやつだぞ」

「あたしは背信的悪意者でもなければ、未登録の撃滅師でもないの。……これでも由緒正しき神宮司家の跡取りなのよ。あたしがこれを持って帰れば、すくなからず箔がつくわ」

 凛が撃滅師として虚幻世界にいるのは、現実世界で祓魔師としての評価を高めるためであるらしい。

「いいのかよ……。今ごろ、時雨が血まなこになって捜してるぞ」

 ソージは《蒼い死神》の撃滅師として高い評価を獲得している、同級生の姿を思い浮かべた。もしもこのまま拘束された状態で発見されたりしたら……絶命する確率が極めて高いだろう。

「盗まれる方がわるいのよ。……それじゃあね」

 凛は踵を返すと、足早に立ち去ろうとする。

「なあ……、助けていってくれないのか?」

 仕方なく彼女は足を止めて振り向く。

「《守護獣》がいない世界は平和的に消滅するから、そしたら現世に戻れるわよ」

「そのまえに《化身》に出くわしたら、どうするんだよ?」

「そのこがおいしく食べてくれるわよ」

「俺も一緒に喰われたりはしないよな?」

「動かなければね。……動いたらホントに見境なく食べるから、気をつけなさいよ」

 ソージはなんだかな、と頭を抱えたい気分になる。あいにくと手はツタの葉に縛られていて動かせないが、素早く現状を打破しなければならない。このハエトリグサもどきに喰われる末路だけは避けたかった。

「それじゃあ、今度こそホントに――」

 さよならよ――と、凛が言いかけたところで、アイツがやってきた。

「見つけたぞっ! 全員、そこを動くなっ!」

 紺碧の強襲汎用装甲服で身を固めた時雨が、いままさに駆けつけてきたところだった。彼女は両腕に内蔵されたガトリング砲をこちらへ向けながら、口元を綻ばせて、狂喜している。自分が《守護獣》を倒したというのに、あとから来たやつらに《核石》だけ奪われたことへの憤懣ふんまんが彼女を突き動かしているらしい。

「いやよ。動くわ」

 凛はいまの時雨の状態に気づいていない。

《蒼い死神》はもう爆発寸前だというのに……。

「ま、まて……っ! ゼッタイ動くなっ! ――いや、頼むから動かないで。お願いだから――」

 時雨の怒りが爆発寸前――というか、頂点をニ回分ほど通り越していることに気づいているソージが必死に止めようとしたが、ときすでに遅かった。

 凛が逃走を試みた。

 それと同時に発砲――

 数十発に及ぶ九ミリパラベラム弾が、凛……ではなく、その後ろに位置したソージに襲いかかった。雨あられのように降り注いだ銃弾は、ソージを掠めるように、ときとしてソージに直撃するコースをとりながら、毎秒九○○メートルの速さで直進する。咄嗟にソージは風を操作して、自分に直撃するコースにあった弾丸に、修正を加える――〈シャーリーン〉をみるも無残なボロ雑巾に変わっていく。

(なんか俺、受け流してばっかだ……)

 数十発の銃弾を一度に受けて、ズタズタに引き裂かれた〈シャーリーン〉からは、断末魔の叫びのようなものが聞こえた。植物に意識があることは最近の研究で判明しつつあるが、もしかしたら本当に叫んでいたのかもしれない。

 そのままその植物の下敷きになった彼のことなど歯牙にもかけず、時雨と凛は《核石》を巡って争いを始める。

 ソージはひれ伏した〈シャーリーン〉の下から這い出したときには、もう誰の姿も見あたらなかった。大通りに面した方から銃声と怒声、そして破壊音がもたらされているので、そこで戦っているのだろう。

「あいつら……。いまに見てろよっ!」

 隠れ蓑としての役目を果たしてくれた〈シーャリーン〉を一瞥すると、ソージも大通りへと向かう。やられたらやり返すのは、この業界では常識だ。《化身》などという人類の天敵と戦いを生業としている彼ら――撃滅師――は、たった一度や二度殺されかけた程度で砕けてしまうような、脆弱なガラスのハートなど持ち合わせていない。

 何度転んでも、冷静に状況を分析し、賭けたリスクに見合ったリターンが得られるのなら、彼らは戦い続けるのだ。ソージの場合は、リスクが自分の命であり、リターンが《核石》ということになる。もっとも、彼はこんなところで朽ち果てる気など、さらさらないが……。


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