1.妄想にはデザートですー
午後四時、学生のほとんどが部活動に向かい汗水たらしたり、一緒に創作活動をして学校生活をエンジョイしている学生の本業と、学生目線では言ってもいいだろう時間だ。
そして、そこに青春をいまいち感じられず、帰宅部ということで精を出すものが一切ない高校二年生である俺、香山優也はへろへろと下校を楽しもうとしていた。想像をして、断じて妄想ではない。
「っふ、今目の前で爆発が起きてふっ飛ばされるってのも面白そうだ……」
周りには絶対聞こえない小声で馬鹿みたいなことをつぶやいた。で、溜息。
みんな部活、部活。部活! 一緒に帰る友達さえいないっ。断じていないわけではないぞ?
女の子がいきなり助けを求めてヒーロー、強盗犯をとっ捕まえてひー――。
俺だって、最近まではここまでひどくはなかった。
テストで赤点を何回かとったら、親に部活辞めさせられてさ、でも上がるどころか次じゃさらに落ちた。文句愚痴その他もろもろ、変にもなるだろ。
何度目か忘れた溜息をつき、信号に引っかかる。車が流れるように目の前を通り過ぎ、目の端からは道路に向かって何やら人影が歩いていき……は?
反射的に人影のほうへ振り向く。
そこには、光るような金色の髪をツインテールでウサギの耳みたいにぴょこっと立たせた日本人ではなさそうな中学生くらいの女の子が信号に見向きもしないで道路に足を踏み出そうとしていた。
外国人? でも、いくらなんでも信号くらいわかるだろおいっ!!
周囲をざっと見たら気づいてない人、気づいてあわてている人やらがいたが、助けようとしてる人はいなかった。
躊躇のかけらもなく足を動かすその様子にもう妄想とか想像とか考えてる暇はなかった。自然と体が動き、手を思い切りつかんで引っ張る。
「っ!?」
ギリギリ間に合ったけど、自分の勢いを止めれず女の子と入れ替えで急ブレーキで減速中の自動車の横腹にタックルするよな感じになった。
案の定、減速をしていたおかげで怪我ひとつせずに助かったのだが、助けた女の子を見ると俺を睨んでいるときた。なんだ? 自殺志願者かよ。
「大丈夫ですか!?」
止まった車から、二十代くらいの優しそうな男の人が下りてきて、本当に心配して声を掛けてくれた。
いい人だ。こんな堂々と轢かれにきたやつを本気で心配するなんて、俺なら怒鳴るな。
で、当の本人には殴りたくなった。
「あなたかしら、今私を襲ったのは」
はーあ?
「えっ――」
もちろん運転手さんもこうなるわな。
「私を狙ったスナイパーなんて山ほどいますわよ。手口も言い訳も腐るほどにね!」
殴っていいか? ほら、運転手さんなんて病院に連れていくか悩んでるような顔してるぞ。
「今すぐ消えてくださる? さもないと命の保証はできませんわ」
運転手さんが思わず俺をのぞき見る。二人顔を見合わせ、たぶんだ。
同じ顔をしている。
これだけは、いわせてください。
妄想、妄言。そして暴走から書いておりますので、程よくしかり飛ばしてあげてください。でもたまには優しく・・・。