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第三章:仮面の情報屋と毒の取引

ゼフィルスとの契約から三週間。私は辺境の離宮を拠点に、着実に“復讐の手駒”を集めていた。


だが、情報がなければ戦はできない。敵の動き、貴族たちの腐敗の証拠、そして——王子の失脚に繋がる鍵。


それを握るのは、首都の闇市場に潜む、仮面の男だった。



「“黒鴉くろがらす”——王都でもっとも忌まわしい噂を持つ情報屋。貴族を堕とし、王家を嗤う裏社会の亡霊」


ゼフィルスはその名を聞いた瞬間、眉をひそめた。


「奴はただの情報屋じゃない。人間の本性を値段で売買する、“魔眼”持ちの呪術師だ」


「なら話は早いですわ。私と同類、ということですもの」


私はローブを羽織り、首都へと向かう馬車に乗った。



深夜、王都の下層にある“黒楼”と呼ばれる酒場。誰もが目を逸らす奥の個室、そこに彼はいた。


仮面の男。全身黒衣、左目だけを露出し、紅い魔眼が妖しく光っていた。


「へえ……お姫様みたいな声だ。なるほど。貴族の元令嬢にして、“ざまぁを目論む令嬢”か。噂は聞いてるよ、アリシア・グランフォード嬢」


「光栄ですわ、“黒鴉”。あなたに会うために、わざわざ悪評を利用しましたの」


男はくす、と喉を鳴らして笑った。


「貴族の皮を被ってるくせに、よくもまあそんな毒のような言葉が吐けるな。で、何を買う気だ? 王子の浮気写真か? 貴族議員の賄賂記録か? それとも——人間の“裏側”?」


私は小さく首を振る。


「買い物ではなく、提案に来ましたの」


「提案?」


「あなた、私の“飼い猫”になりません?」


静寂。


次の瞬間、空気がぴしりと張り詰めた。魔眼が私を測るように見つめる。


「冗談にしては、度胸がありすぎるな。俺を手懐けるつもりか?」


「ええ。毒と毒は、混ぜると薬になることもあると聞きましたの。あなたの力、私の“毒”と混ぜれば、王宮なんてすぐ腐りますわ」


仮面の下から低い笑いが漏れた。


「面白い女だ……気に入った。なら、試してみよう」


彼は指先で自らの魔眼を抑え、私の額に指を触れた。


「契約しよう。情報も命も、欲望も、君に委ねてやる。“毒姫ポイズン・プリンセス”」



こうして私は、二人目の“従者”を得た。


冷たい氷の騎士と、毒を操る仮面の情報屋。


夜が深まるほど、私の味方は闇に染まっていく。


だが、それこそ私の望み。


光の中にいたあの人たちが、私を見下していたなら——


今度は闇の中から、引きずり下ろして差し上げますわ。


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