表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/12

第二章:氷の侯爵と紅の契約

王宮から追放された翌日、私は馬車でグランフォード家の離宮へと向かっていた。都心から遠く離れた辺境の地。政治の中心からも、社交界からも見捨てられた場所だ。


——だが、いい。


むしろ都合が良い。ここからが私の「ざまぁ」劇の始まりなのだから。


「お嬢様、そろそろ目的地です」


侍女のミレイナが窓の外を指差す。見上げると、雪に閉ざされた灰銀の大地の先に、まるで氷の要塞のような黒き城が見えた。


この地の主は、“氷の侯爵”と呼ばれる若き貴族、ゼフィルス・ヴァン=エストレイア。


ゲームの攻略対象の一人。冷徹無比で人嫌い。だが実は、魔力制御の天才であり、王家さえ恐れる氷魔法の継承者。


原作では終盤に仲間になる隠しキャラだった彼を、私はこの時点で“味方”に引き込むつもりだった。



「……君が、あの“断罪された令嬢”か」


応接室に通された私は、銀の髪と翡翠の瞳を持つ青年から睨まれていた。まるで氷柱のようなその視線は、普通の令嬢なら泣き出すほどに冷たいだろう。


「ええ、断罪されましたの。けれど、少しも反省はしておりませんわ」


私はにっこりと笑った。


「むしろようやく自由になれたと、心から喜んでいますの。これから私、“戦争”を始めるつもりですから」


「……戦争?」


「ええ。私を侮った愚か者たちに、“立場”と“命運”を賭けて、ざまぁしていただきますの」


ゼフィルスの目が細くなる。そしてその瞬間、彼の背後にある氷の花瓶が、ピシッと音を立てて凍りついた。


「……面白い。君は“愚か”じゃない」


彼は立ち上がり、私の前に片膝をついた。そして手を差し出す。


「ならば契約しよう、アリシア・グランフォード。君が望むなら、俺は氷でこの世界の秩序を覆す」


その指先に、私はそっと自分の指を重ねた。次の瞬間、私の瞳に紅の魔法紋が浮かび上がる。


それは、古の「主従契約」——すなわち、私の最初の“騎士”が誕生した瞬間だった。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ