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感じる違和感

第11話出来ました!

 月曜日、いつもと同じ時間に目を覚ます。


 日曜日は家から出ずに小説を読んで過ごしていたから、何も起きなかった。


 そういえばネットで、商業エリアの路地裏で学生が血まみれで倒れているのが発見された、という記事を見た。


 土曜日に対処したスーツ男が言っていた学生だろう。


 あれは殺したと言っていたが、記事では意識不明の重体ではあるが一命は取り留めたと書いてあった。


 実力はあるがあの粗雑な性格は問題だな。裏の人間では致命的な詰めの甘さだ。僕が対応しなくても、そう遠くない内に自滅していただろう。


 いや、依頼を達成出来ていない時点で、あの日の内に消されているか。


 今日も比乃宮と一緒に登校する約束をしているので、遅れないように準備をする。


 エントランスに着くと、もう比乃宮が着いていた。


「今日はそっちが先か」

「おう、今日は早く目が覚めたから二度寝はせずに準備したんだ」


 比乃宮と歩きながら話していると、部活動の話になった。


 興味を示していた闘錬部にもう申し込みをして、今日の放課後に体験入部の形で部活動に参加し、入部するかどうかを決めるようだ。


「いやー楽しみだなぁ。聞いた話だと、めちゃくちゃレベルが高いらしくて、今年は歴代で1番の世代じゃないかって話題になってるらしいぜ」

「へぇ、そうなのか。それは凄いな」

「あんま興味ないか?」

「正直な。どの程度なのかは知らないが、風紀委員会とか生徒会レベルじゃないと何とも思わないな」

「急にレベルが跳ね上がり過ぎてないか? 一応言うとあそこは学園の最上層の集団だぞ。期待しすぎっていうか、そんなに求めすぎない方が良いと思うけど」

「まぁ、そういうものか」

「そんなもんだろ。あーそういや、風紀委員会の彩辻って人は元々闘錬部に入ってたって話だぜ。スカウトされて所属を変えたんだと」


 彩辻先輩は闘錬部に所属していたのか。


 闘錬部時代の彩辻先輩に興味があるし、機会があったら今度聞いてみよう。


「ま、今日は1人で参加してそのまま帰るとするよ。欠神は神崎と図書館行くんだっけ?」

「そうだが、神崎から聞いたのか?」

「おう、前一緒に帰った時に聞いた。欠神お前ー、会って数日の異性を誘うなんて……意外と肉食なところがあるんだな。お父さんびっくりだぜ」

「放任主義の成果じゃないか? 親が見なくても、子は勝手に成長するさ」


 前に見たニヤニヤ顔で言ってくる比乃宮を適当にあしらいながら教室に着き、もう教室にいる神崎に挨拶をして席に座る。


 矢吹先生のホームルームとともに、今日もまた学校が始まる。


 一般教育の授業が始まるが、正直つまらない。なので机を上手く使って先生にバレないように小説を読んで時間を潰す。


 内職というものとはまた違うが、これはこれで学生らしい授業の受け方だろう。


 こうして時が過ぎ天耀学(アルフェイド)の時間になった。僕は身体を動かすことは好きで、天耀学は授業の特性上身体を動かすことが多いから楽しく授業を受けている。さて、今回は何をやるんだろうか。


「よし、今回は結界術について教えるが、結界は高度な技術だから成績には何の影響も与えないと先に言っておく。知識として頭に入れておく程度の認識で構わない。じゃあ私の周りに集まってくれ」


  今日は結界術か。となるとあまり身体は動かさなそうだな。


 クラスの皆で先生を囲むようにして集まり、先生に注目する。


「結界術は内と外を分け、新しい空間を作る技術だ。特定の存在だけを通しそれ以外は弾いたり、結界内に侵入した者を自動で探知したりと様々なことが出来る。しかし、その難度はとても高い。正確に言えば、展開した後が難しいな。結界を作った後はそのまま維持する必要があり、その間は天耀力(アルナ)を常に消費し続けるし、形を維持するために操作に意識を割かないといけない。そこにさっき例で言った効果を付与(プログラミング)するとなると難易度が跳ね上がる。短い時間で簡単な結界を展開するだけなら努力すれば誰でも出来るが、長時間複雑な結界を展開するのは私でも難しい」


 そう、結界術は使い勝手が悪く特に燃費の悪さが厄介な技術だ。常に天耀力を消費し続け、効果を足していったらその分更に消費量が増えるという点がクソだな。


 それに、結界の展開自体色々と設定する必要がある。展開する範囲、持続時間、発動させる効果などを決めておかないといけないので、戦闘時に状況に合わせて展開するのは並の異能使い(エクストリア)では頭がパンクする作業だろう。


 なので戦闘時に使われることは少なく、非戦闘時に使われることがほとんどだ。だが便利な技術であるのは確かであり、習得して損はない。


 術者の腕次第では結界内の空間を自由に書き換えることが可能で、理論上は結界で生活することも出来る。


「とりあえず、1回くらいはやってみよう。じゃあ20分程練習してくれ。作りたい結界を脳内でイメージして現実に持ってくるんだ。今回は手に収まるくらいの大きさで感覚を掴む程度の気持ちで良いぞ」


 前回と同じで比乃宮と神崎と一緒に3人組を作って練習する。先生が言ったように小さな結界を作ろうと頑張っているが、2人とも中々上手くいかないようだ。


 僕もやるか。周りに合わせているだけだが。


 前回と前々回と同じで、僕はもう出来る内容だった。土曜日もスーツ男の対処の時、近くにいた人が戦闘音を聞いて警備隊に通報するのを防ぐために防音の結界を展開していたから復習はバッチリだ。


 20分経ち、後は強化術の復習と練習をして授業は終わった。


 放課後になり、比乃宮と別れて神崎と図書館に向かう。図書館はかなり広く、デザインがとてもお洒落で僕好みだ。


「どう? 凄いでしょ。たくさん本があるし雰囲気も落ち着いてるから好きなんだよね」

「僕も気に入った。これから3年間お世話になりそうだ」


 その後は神崎と一緒に良さげな小説を探したり、隣に座ってそれぞれ小説を読んだりして図書館での時間を過ごした。


 きりの良いところで読むのを中断し窓の外を見ると、空が茜色になってきたので読んでいた小説の貸し出しの手続きを行い図書館を出て、そのまま寮に向かう。


「おっ、欠神と神崎じゃん。帰りの途中か?」


 歩いていると後ろから比乃宮の声が聞こえ振り向くと、比乃宮と見知らぬ男子生徒がいた。


「あぁ、そうだ。そっちの人は?」

「初めまして、2年の天羽乱摩(あもう らんま)だ。闘錬部に所属していて、比乃宮と一緒に帰っていたところだ」

「そうですか。僕は比乃宮と同じクラスの欠神戒斗と言います」

「私も同じクラスで、神崎姫奈って言います」


 自己紹介を終え、比乃宮と天羽先輩と一緒に寮に帰ることにした。


「さっき比乃宮と話していて話題に出たんだけど、今日は結界術が授業で出たんだな。俺も1年の時に授業で教わったけど、まだ苦手なんだよなぁ。お前らは出来るか?」

「私たちも全然ですよ。千変武創(トリビス)も完成形で作れないですし、結界術はまだまだ先の話です」

「ま、そうか。1年のこの段階で出来たらマジモンの天才で学園中で話題になってるだろうし。あーそうそう、何か聞きたいことがあったら連絡してくれ。一応お前らより1年ここ(アスカーディア)にいて色々と学んでるからな」


 流れで先輩と連絡先を交換する。先輩は打ち解けやすい人だな。先輩と後輩というラインはあるが、それを意識させて会話に壁を作らせないようにする雰囲気作りが上手く、比乃宮も神崎も気を許しているようだ。


 僕も2人と同じように緊張せずに話していた。表面上は。


 僕は危険や脅威に対する勘が良い。その勘で先輩から感じるナニカが僕に気を許すことを許可せず、脅威に感じる程ではないが一応は先輩を警戒対象として設定した。


 ナニを感じたのかは分からないが、接していく内に分かるだろう。


 寮に着き、皆と別れてその日は終わった。





 次の日。起きてメールを確認したら、彩辻先輩から今日の昼食を一緒に食べようという誘いが来ていた。断る理由が無いので了承する。


 少し待っていると既読になり、風紀委員会室で食べることになった。


 午前の授業が終わって昼休みになり、風紀委員会室に向かう。


 前来た時にスマホをドアの認証装置にかざせば入れるようにしてくれたので、かざして中に入る。中に入ると、彩辻先輩の他に白井先輩と獅子宮先輩がいた。


 彩辻先輩と獅子宮先輩は暖かな出迎えムードだったが、白井先輩は冷たくジト目で少し睨んでいる。


 まだ嫌われているのだろうか? まぁ良いが。


「今日はいきなり誘って悪かったな。さ、座ってくれ」


 席に座り、それぞれの昼ご飯を食べ始める。僕はコンビニで買ったおにぎりで、先輩たちは弁当だった。しかし気になるのは、彩辻先輩と白井先輩の弁当の内容が一緒であることだ。


「彩辻先輩と白井先輩は弁当が同じですけど、偶然ですか?」

「いや、これは白井が作ってくれたものだ。俺も前までは欠神と同じでコンビニで買ったものを食べていたんだが、白井が俺の分の弁当も作ると言ってそれからは白井の弁当が昼ご飯になったんだ」

「ま、まぁ? ずっとコンビニの商品ばかり食べているっていうのはちょっと心配でそれで作ってて、それが習慣化して今も作り続けてるって感じだね」

「いつも作ってくれて本当にありがとう。こんなに美味しい昼ご飯が食べれるのは、白井のおかげだ」

「ど……どういたし……まして」

「白井が良いのなら、これからも弁当を食べさせてもらいたいと思っている。」

「……良いけど」


 急に甘い空気が出来たな。塩気が効いているおにぎりなのに一気に甘みが出てきたぞ。


 目の前のラブコメの気配を感じていると、隣に座る獅子宮先輩がげんなりした顔で耳元で囁く。


「この2人は、まぁ……こういう感じなんです。付き合っているわけではないけど、白井さんは彩辻さんが好きで健気にアピールしてて、彩辻さんはそれに気づいていないって構図で、見ていて何だか疲れるというかしんどい気持ちになるんですよね」


 なるほど。だから白井先輩に敵意を向けられるのか。


 自分の想い人を保健室送りにした奴が相手ではあんな態度になるのは仕方ないことだろう。


 付き合っていなくてもこの空気に出来るのなら、本当に付き合ったら一体どうなってしまうんだ? 僕の疑問を解決するためにも、白井先輩の恋路のためにも、2人に付き合ってもらいたいものだな。


「あ、そうだ。彩辻先輩って元々闘錬部にいたんですよね。確か……榊委員長にスカウトされて風紀委員会に入ったんでしたっけ?」

「ほぉ、良く知ってるな。そうだ。俺は最初は闘錬部に入ってたが、委員長に誘われて風紀委員会に所属を変えたんだ」

「1年の冬休み前くらいでしたっけ? その時から彩辻さんは序列がかなり上の方で、スーパールーキーが現れたって学園でよく話題になってましたよ」


 獅子宮先輩が当時のことを思い出しながら補足する。


「へぇ、凄いですね。風紀委員会に誘われるのも納得って感じです」

「そんなに持ち上げても何も出ないし、話題になってたのは俺だけじゃないだろ? 天羽もよく話題になっただろ」

「天羽先輩と知り合いなんですか?」

「あぁ、クラスは違うが闘錬部で一緒だったからそこで友達になったんだ。切磋琢磨してお互いに実力を高め合うのが楽しくて、つい学業が疎かになったりして2人で先生に説教されたのは今でも覚えている。欠神は天羽を知っているのか?」

「はい。昨日闘錬部に入ってる友達と天羽先輩が一緒に帰っているところに出合わせて、それで知りました」

「そうか……」


 楽し気に話していたのに、急に表情が曇る彩辻先輩。他の2人も、特に白井先輩は彩辻先輩と同じくらいに曇っている。


「何かあったんですか? 言いたくないなら良いですけど」

「いや、大丈夫だ。実はな……天羽とはもう話したりしていないんだ。顔を合わせて話すことは無いし、メールを送ることも今は無くなった」

「何故? 彩辻先輩と天羽先輩はとても仲が良い友人の関係だったように聞こえたんですけど」

「確かに仲は良かった。風紀委員会にスカウトされるまではな。いや、今思うともっと前だったのかもしれない」


 スカウトと仲違いがどう繋がるんだ?


 疑問に思っていると、彩辻先輩が重く口を開いて話し始めた。


「俺は風紀委員会にスカウトされたが、天羽はスカウトされなかったんだ。俺が天羽より強かったから選ばれ、天羽は選ばれなかった。事実、当時の模擬戦の勝率は俺が圧倒していた。だが、それがあいつのプライドを刺激してしまったんだろう。あいつは委員長に抗議をし、委員長は決闘で勝った方を風紀委員にすることにしたんだ」

「で、彩辻先輩が勝って決定的な亀裂が入ってしまったと」

「あぁ、あの時からお互いに避けるようになって、今はもう元に戻れないところまで来てしまった。俺はまたあの時の関係に戻りたいと思っているんだが、あの時のあいつの目を思い出すと……どうしても足が竦むんだ」

「当時は2人がすれ違うだけで変な緊張感が生まれて……同じ学年の僕たちは大変でしたよ」


 プライド……正確には劣等感か。今までは横を向けばいつも彩辻先輩がいたが、いつの間にか背中しか見えなくなったことで、そこから生まれた感情が横に並ぶのではなく追い越すことに執着する原因となり、決闘をすることになったのか。


 対等(友情)よりプライド(勝利)を選んだのは、それほど追い込まれていたということか。


 僕が感じたナニカの正体が分かった気がする。


 好奇心で聞いたことでこんなことになるとは思わなかったな。部屋の空気は重く静かで、僕がお茶を飲む音が大きく聞こえた。

どうも、神座悠斗です。

色々あって更新が少し遅れました。ぺこりm(__)m

私の画力が不足しまくっているので、キャラのイメージイラストが描けないのが地味に嫌だなぁと思っています。

主人公は顔はマジで無表情で目は光が無い真っ黒な感じをイメージしてください。どこかのチェンソーの女性を殴ってそうな人の目が近いですね。

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