始まりの日
世界は変わった。本当に、文字通り変わった。
西暦2030年に厄災が起きて人類は未曽有の危機に晒された。
地震、噴火、津波、果ては隕石。絶望が世界を覆った時、奇跡が起きた。アメリカのある州で人間離れした身体能力で市民を救った男性が現れたという噂が流れた。
最初は狂ってしまい妄言を吐いているだけだと一蹴されたが、生中継でその姿が放送されたこと。そして、世界各地で似たような力を持った人が次々に現れたこと。これらによって、人々はこの奇跡を夢や幻ではなく、現実であると認識した。
世界はまだ終わっていない。そう信じて、異能に目覚めた人たちと希望を胸に奮起した人たちが尽力し、人類は滅亡の危機を回避した。
その後、壊れきった世界を立て直すのと同時に、異能を覚醒させた異能使い《エクストリア》のための法律や設備を作った。
僕が今立っている学園都市はそのうちの1つだ。北太平洋に浮かぶ正方形型の人工島に築かれた学園都市であり、どこの領土にも属さない完全な治外法権都市となっている。
運営は大人がしてるとはいえ良いのだろうか? ま、どうでもいいか。
さて、電車に揺られてる内に僕が入学する才麗学園に着いたわけだが、まだ入学式まで時間があるな。どうやって時間をつぶそうか。とりあえずベンチに座って本でも読もう。
今は端末でデジタル媒体の本を読むのが主流だが、僕は紙媒体の本で読書をするのが合っているようだ。紙の質感やページをめくる動作が読んでいるという感覚にしてくれてしっくりとくる。
しばらく読んでいると、周りに学生が増え始めてきた。本から顔を上げて時計を見てみると、入学式が始まるまでちょうどいい時間だった。
「さて、僕も行くか」
席は指定されておらず自由に座っていいようで、とりあえず前から詰めて座った。
僕はコミュニケーション能力がある方ではない。なので周りに座っている新入生たちと交流しようという気はなかった。式が始まるまで腕と足を組み、目を閉じて待つことにした。結果、話しかけるなというオーラが出てしまい僕は全く交流できていない。
やはり少しは話そうとするべきだったか。
せっかくの学生生活のスタートが上手くいかなかったことに若干の後悔をしてはいるが、時すでに遅し。話しかける勇気を持たなかった者はもうタイミングを見失ってしまった。救いなのは僕が端の席であったことだろう。
仕方ない、このまま待つか。3分ほど経って入学式が始まった。在校生代表として生徒会長が壇上で答辞を述べている。生徒会長は長身の男性で、クールな印象の人だった。整った顔立ちで、周りの女子が見惚れて声を漏らしている。
重心にブレがない。強い人だな。流石は生徒会長といったところか。
生徒会長の次は校長が壇上で話をしている。見た目は50代半ばだが服の上からでも分かるほど身体は鍛えられていて、まだまだ現役、といった雰囲気だ。威圧感とまではいかないものの確かな迫力のあるオーラを纏っており、多くの新入生が圧倒されている。
一瞬校長と目が合った。こちらを見て微笑み、すぐに視界から外して話を続ける。先ほどとは違い、どこか安心したような雰囲気がある。
僕を心配していたのか? 心配しなくても問題行動を起こす気はないぞ。
まぁ、あの人は僕をこの学園に入れた当事者で、ある意味保護者のような立ち位置だからな。この学園に入れるだけでもかなり面倒だったわけだし、僕がちゃんとやっていけるのか心配するのは当然か。
壇上に視線を戻すと校長は話を終えていなくなっていた。その後は大した盛り上がりは無く式は進み、式が終わり次第新入生はそれぞれのクラスの教室に移動するよう指示を受けて、入学式が終わった。
どのクラスに所属しているのかは配布されたスマホで確認できるようだ。
確認したクラスの教室に移動する。この扉を開ければ、本格的に学生生活が始まるのか。未知への期待とともに、僕は扉を開けた。
どうも、神座悠斗です。第1話を読んでいただきありがとうございます。
一般大学生が書く駄文ですが、今後も投稿していくので、気が向いたら読んでください。
理想は毎日投稿、現実は週2回投稿を目標に頑張っていきます。