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第26話

私の言葉に不貞腐れたのか、ノアはその後来た時と同じ様にバルコニーから帰って行った。結局の所ノアが嫉妬していたかどうかは分からず仕舞い。まぁ、自分でモテると言うような自意識過剰な男だ。そんな訳はないだろう。


私はそれを見送ってから、寝室へ戻る。

床頭台の引き出しを開き、私の小さなブローチと共にアダンからの手紙をしまった。

そこにはノアから貰った小さな容器も入っている。この薬のお陰で私の手荒れは随分と良くなっていた。


何だかんだとノアが私を気遣ってくれている事には感謝している。陛下と仲良くするなと言ったのも、私の正体がバレる事を危惧したからだ。……だけど……


「陛下が気になるのよね……」

私は誰も居ない寝室で独り言ちた。


陛下はいつも寂しそうで……全てを諦めてしまっているかの様に投げやりだ。


カサンドラ様もメリッサ様も失って……陛下は全てを投げ出してしまったのかもしれない。


陛下は話の途中でこう言った。

『王というのは孤独なものだ。心を許せる者は誰も居ない』と。


だからと言って、私に何か出来る訳ではないが、何故か放っておけない。


しかし……気になるのはメリッサ様との関係だ。メリッサ様は公爵に会った時、迷わず、躊躇わずにその胸に飛び込んだ。あの態度をみればメリッサ様が公爵の事を好きだった事は一目瞭然だ。……では陛下の事は?陛下の事をメリッサ様はどう思っていたのだろう。

愛しい婚約者との未来を奪った憎い男?それとも……。


ここで私が考えていても仕方ない。最近では、私の支度と食事の支度しかしなくなったマギーにでも尋ねてみよう。

私はそう決めると、寝台へと横になった。

今日は床を磨かずとも眠りにつけそうだ。そう思った私はいつの間にか、夢の世界へと旅立っていた。




「ねぇ、メリッサ様は陛下と仲が良かったの?」

私の髪を綺麗に結っているマギーに私は鏡越しに話しかけた。

マギーの顔色が一瞬変わった。しかし、またいつもの無表情に戻り。


「良くありませんよ。あるわけないじゃないですか」

と淡々と言った。だが声には少し怒りの色が見え隠れしている。


「どうして?」


「どうしてって……当たり前です。メリッサ様はジョシュ様を愛しておいでだったんですよ?」

淡々とはしているが、今度はもっと怒りが色濃くなる。


「でも……贅沢をしていたのでしょう?王妃の仕事もしないで」

私はわざと煽ってみた。


「………!!それが条件でしたので」

一瞬、マギーの目が見開かれたが、何とか感情を抑える事に成功したようだ。


「条件?」


「はい。『全てメリッサ様の自由にして良い』それが陛下とメリッサ様の間に約束された結婚の条件でした」


「ふーん……それって世継ぎを作らない事も含まれてたの?」


私は体型が崩れるのを気にして跡継ぎを作らなかったという噂を思い出していた。


マギーの顔色が今度こそ隠せないぐらい、怒りに染まった。そして、


「支度は終わりです!」

と櫛を叩きつける様に置くと、足早に部屋を出て行った。

乱暴に閉じられた扉の音に、私は言ってはいけない事を口にしたのだと理解した。


「ちょっと待って!陛下、体調を崩してるの?」


庭への散歩に行く道中、すれ違う陛下付きの文官が話しているのが聞こえ、私は咄嗟にその二人を呼び止めた。


「は、はい!あの……陛下は寝不足なだけだから心配ないと仰ったのですが、今日は大事を取ってお休みしていただく事にしました。今は自室で休まれていらっしゃるかと」


文官はいきなり私に話しかけられ、かなり緊張している様子だ。


「お医者様には診て貰ったの?」


「はい。侍医の先生に診察をお願いしましたので」

その言葉に私はホッとした。


昨晩、ノアに注意されたばかりだ。陛下の私室にまでお見舞いと称して押しかけるのは、流石に不味いだろう。


「そう……ならいいわ」

私はなるべく冷たく聞こえる様にそう言って、当初の目的である庭へと足を向けた。


花を見ながら、庭を歩く。しかし私の意識は体調が悪いという陛下の方へと向いていた。


「……気になるか?」

小さな声でノアが聞く。ノア以外の護衛は居ないが、庭師は居る。私も小声で答えた。


「少し。……陛下、いつも顔色が悪いから……やはり寝不足だったのね」

たまに陛下も散歩に誘うのだが、王というのは私が考えていたより、遥かに仕事が多い。『忙しいから』と断られる事が殆どだった。


「まぁ……仕事は多いだろうからな……」


「そうね。ふんぞり返っているだけだと思っていたわ」


「平民から見た王族なんて、そんなもんだ。だがこの小さくない国を治めているんだ。暇なんてあるわけがない」


「でも……議会?とか大臣?とか……そんな人達がいるんでしょう?手伝ってくれてるんじゃないの?」

私がそう言った時のノアの険しくなった顔を見逃さなかった。嫌悪の様な……怒っている様な……。

すると、直ぐ様ノアが、


「気をつけろ。下手な事は言うな」

と小声ながらも鋭く私に注意する。ノアの顔が強張っている様に見えて、いつものノアとの違いに私が困惑していると、


「おや??これは、これは妃陛下ではないですか。お散歩ですかな?」

と向こうの方から男が歩いて来て、私に声を掛けた。


此処に来て一ヶ月と少し。私が初めて会う男だ。


ノアは更に小さな声で、


「宰相のロウだ。何故か王妃との関係は良好だった」

と私に教える。『良好』という事は仲良しという事。私は一気に緊張した。


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