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第24話

部屋に戻る私に、


「暗いな。どうした?」

とノアが心配そうにそう言った。


「別に……分かっていた事だけど、はっきり言われると……ね」


人はいつか死ぬ。だがそのいつかはもっと先だと思っていた。


「……待ってて欲しい。絶対に見つけるから」

ノアの言う『見つけるもの』がメリッサ様だという事は分かっている。


「絶対って……。でも、見つけたとしてどうするの?」


「連れ戻す。そしてお前を解放する」


「公爵がそんな事させる筈ないわ。それより王国軍が勝つように祈ってたら?」

私は茶化す様にそう言ったが、ノアはそれに対しては何も言わなかった。

……王国軍が勝つ確率はそんなに低いのだろうか?ここに居ると、そういう情報が全く耳に入ってこない。平和そのものの様なこの場所がいつの日か戦場になるのだろうか?


「努力するよ。公爵は手強いが俺も剣の腕には自信がある」


「切り合うって事?!」

私の声は少し大きくなり過ぎた。ノアが『シーッ』と指を自分の口に当てて黙る様にジェスチャーで示す。

人が剣で切られている所など見たことない私は、一気にその非現実的光景が身近に感じられ、怖くなり立ち止まる。


そんな私にノアは、


「騎士の仕事だ。心配するな。さ、行くぞ」

と声を掛けた。


私はこの少し強面で、横柄な態度の騎士が目の前から居なくなるかもしれないという事実に、恐怖を覚えた。



その夜。私はなかなか寝付けずにやたらと肌触りの良い夜着の上にガウンを羽織り、寝室を出た。


さて……疲れるまでまた床でも磨くか……そう思った時、窓をコンコンと叩く音が聞こえた。


不審者かと思い、身構える。

キョロキョロと周りを見回し武器になる物を探す。私が眠れない時の掃除用にと置いてあったモップを棚から出し、私は構えた。


『コンコン』

まだ窓は叩かれている。バルコニーに出る為の窓だ。……ということは敵はバルコニーに居るという事だ。

私はモップを握り直し、ゆっくりと窓へと向かった。すると、


「おい。開けてくれ」

と言う声が聞こえる。この声は……。


「ノア?」

私は聞き覚えのあるその声の主の名を呼んだ。


「そうだ」

私はモップを握ったまま、カーテンを開く。

そこにはバルコニーに立つノアの姿があった。


いつもの近衛騎士の制服ではなく、上下黒の装束に身を包んだノアは、いつもと少し違って見えた。


私は窓の鍵を外し、ノアを部屋へと招き入れた。

ノアは私が持っていたモップに目をやると、


「それで何するつもりだったんだ?」

と苦笑した。



「驚かさないでよ!夜は別の護衛が付いていたから、休みなんだと思ってたわ」

 

「夜は休みだよ。だが、この部屋に護衛は入れないからな。強硬手段だ」


「夜、女性の部屋に忍び込むなんて……変態なの?」

私がモップを棚に直しながらそう言うと、


「そこは『変態』じゃなくて『好意があるのかしら?』とは思わないんだな」

とノアは笑った。


「だって、貴方は王妃の事が嫌いなんでしょう?」


「確かにあの女は嫌いだが、別にお前はあの女じゃないだろ」


「まぁ……似てるのは顔だけだろうけど」


そう言った私に、


「思い出した!お前……あの時馬車に轢かれかけた女だな?」

とノアが私の肩を掴んだ。


「は?え?馬車??」


「ひと月程前か?ベイカー公爵の馬車に轢かれかけ……あ!だからか!だからお前……あいつに目をつけられたのか……」


「何一人で納得してるの?どういう事?」


「お前、街でベイカー公爵の馬車に轢かれかけただろ?」


「なんで知ってるの?」


「あの時、お前を助けたのは俺だ。ボーッと歩いてたろ?あの時お前の顔を見て……王妃に似てると思ったんだよ……だから見覚えがあったのか……」


「え??あの時の?」


馬車から私を助けてくれた人が居た。太陽を背にしていた為、顔は良く見えなかったが……それがノア?

私はあの時の事を思い出そうと頭をフル回転させる。そういえばあの時……馬車から公爵が降りてくるのを見て……一緒に居た男性が確かに『ノア、不味い』と名を呼んでいたのを思い出した。


「そうだ。思い出したか?」


「顔は見てなかったけど、確か誰かが貴方をノアって呼んでいたのは思い出したわ。あの時、ちゃんとお礼を言えなかった……ありがとう」

私が礼を言うと、ノアは少し照れた様に笑った。



でも何故あの時、ノアはベイカー公爵を見て焦って逃げたのだろう?

私は何か重要な事を見落としている様で心がモヤモヤした。


ただ、それを尋ねる前に、ノアが私に封筒を差し出した。


「これは?」


「お前の……兄からの手紙だ」


私はその言葉に急いで封を開けた。


見慣れたアダンの字。ほんの一ヶ月程しか経っていないのに懐かしく感じてしまうのは、自分の立場があの時とあまりにも違いすぎるからかもしれない。


手紙には私を労る言葉と身体を案ずる文字が並べられていた。そして……寂しいと。会いたいと。そう綴られていた。

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