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怠け者は優雅に暮らす

「ああ。静かな湖畔でする釣りは最高なんだけどなぁ」




 ここは、シュガアーツ国の王都オオウッツから遠く離れたナハマ領にあるヨーゴゴ湖である。


 そこで、この物語の主人公ヤッス・オーサンはため息交じりに竹竿から糸を垂らして釣りに勤しんでいた。


 その後方には、魔獣種が消滅した後に残る魔素片と呼ばれる魔石のかけらがいくつも転がっている。




「依頼は魔魚ブウラックバッシュの女王個体の駆除。産卵一回につき十、二十と増えるから、放置するすればするほど完全に駆除するのが面倒になるんだよな」




 魔魚とは、この世界にありふれる魔素の影響をうけて突然変異した魚の総称であり魔獣種の一つである。




「っと言ってる傍から」とオーサンは竹竿から手にくんっと伝わる瞬間を逃さずにしゅっと引いて合わせた。途端に竹竿は大きく引っ張られてしなり沈む。




「よしよしよしっ」




 それは、ただの竹竿であれば一瞬で折れ爆ぜるほどの力で右に左にとうねりを上げて抵抗する。




「この手応え。まちがいなく女王個体だ。はっはーっ、逃がさないぜ


って、おらァああっ」




 オーサンは全身に氣を巡らせる。


 勝負は一瞬であった。


 穏やかな日差しに似つかわしくないゴツさ満載の魔魚ブウラックバッシュは、竹竿から伸びる糸に雁字搦めにされた状態でその巨影を曝け出した。




「ふう。まだまだ若い個体でこれだからなあ。はやめに対処に来れて本当によかった」




 それは全長にしておよそ1.5メートル。オーサンの身長と同程度であった。




 この魔魚ブウラックバッシュの恐ろしいところは三つあった。一つは巨影をささえる旺盛な食欲。二つ目は女王による異常な繁殖力。そして、三つめは、女王は産卵のたびに増えていく各個体から還元される力を受けとることで加速度的に巨大化していくところにあった。


 ある地方の湖では、このブウラックバッシュによって生態系が根こそぎ刈り取らて死の湖と化し、またあるところでは巨大化した女王個体によって人間が捕食されるなどの人的被害すらあったとも伝え聞くほどであった。


 


「女王個体には悪いが、野放しするわけにもいかないだよね」




 オーサンは胸の前で手を合わせると絡め着いている糸に魔素を込めて、ブウラックバッシュをズタズタに切断、駆除した。


 そうして駆除された女王個体は塵のように消滅、魔素となって世界に還っていった。あとに残るのは、核となっていた魔石のみ。 




「よしよし。しばらく影響はのこるだろうけれど、これにてヨーゴゴ湖におけるブウラックバッシュの駆除依頼はおおむね完了かな」


 


 魔魚ブウラックバッシュは、女王個体による産卵以外で増えることはないタイプであるため、女王を駆除さえすれば自然消滅していく魔獣種なのだ。




「さてと、辺境伯家我が家に帰るとするか」

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