第四話 子が成る器に注いだ本能
それはジョウが眠りについて、いびきまで小さく聞こえる夜。
傷が癒えてきた、と自分から喋りかけた日。
星空が窓から見える夜中。
看病している彼女と熱に任せて、からみあった。
弟君は、まだ気づいていない様子。
そして当時の彼女も。
妙な毒が抜けきるまでに思いもよらぬ時間がかかった。
三月半。
意外にも彼女は処女だった。
もらってしまった、と思った。
見事に発芽した。
俺は側にいたらいけない・・・
おそらく敵派閥の弟、リーオがそろそろ居場所を嗅ぎつける。
協会側にも狙われているから。
悪党として。
今でも熱がうずくけど、俺は側にいないほうがいいと思った。
堕天使を束ねる両親は、その『王族の王』と『妃』。
そして俺はただ、『ヴィリアンでありたい』だけだ。
自分らしく、自分なりに思考する。
それが世の名実、『ヴィラン』であっても。
堕天使の敷地から出た事情は、ただ、それくらいかもしれない。
母は妻を寝取った。
そしてそれを知った俺を殺めようとした。
ある程度 可愛がってはいたが、一度もしたことがない妻。
許嫁であり、それが出生してすぐに婚約することになったんだったか。
政略結婚。
育つ様子を見ているのはなかなか可愛いような気もした。
そして婚姻の儀をして、見事に『妻』になる筈のそれは・・・
以前から、俺の『母』の愛人だった・・・
それは、『死』、を、意味した。
妻である筈のそれを殺めた。
そしてその報復に、母の手勢から奇襲された。
毒の具合から、本気なんだろう。
俺の母は堕天使で、俺の父は堕天使王。
父が俺を探しているのだとしたら、
後を継いで欲しいのか、
それともこのまま行方をくらませたほうがいいのか。
・・・まぁ、こちらの都合もある。
しばらく見聞でもするさ。
俺の立派な黒羽根に、妙に色が濡られているような気分がする。
ここから去らねば。
居心地が好いのか悪いのか、よく分からない。
時々なんともない会話に微笑する自分を、認めきれていない。
まだ、なのか、ずっと、なのか。
・・・・分かりたくなかった。