第弐話 夜の死神探し
この街には眠りが残ってるらしい。
協会の関係者やその親戚、つまりはほぼ一般人。
わざわざ窓を開けて、うるせぇっ、と怒鳴った男の声に、周りの家の電気が照明した。
「やばいっ、やばいっ」
俺を発見した男児が慌てている。
そこに軽快な足音。
やはり気配が読めないし、耳の機能が衰退している。
「お姉ちゃんっ。どうしようっ?」
「血の匂いっ・・・」
足音が近づいて来て、建物の隙間の壁に凭れている俺を、
お姉ちゃんと呼ばれた『彼女』は、刹那、警戒した。
「どうしたらいいの?」
何かあったの~?と、暢気な近所に住んでいるのであろう声が建物の三階あたりから。
「大丈夫、なんでもなーいっ」
彼女が声を透すと、少しして照明がぽつぽつ消えていく。
彼女は持っていたランプを『弟』に渡すと、急いで俺に近づいて来て、様子を・・・
うかがうために・・・
その顎に伝った血を、舐めた。
「・・・読み取れない?」
乾いた笑いが出て、すぐに少量の吐血に変わる。
こいつ、清蓮潔白症だ。
「君、亜人種?」
答えたくない・・・
嗚呼、もう、足を止めたらいいんだ。
何をしていたんだろう?
足を止めたらいいんだ。
壁に背中をあずけて、ずるずると座る体勢になる。
この女の側で、死んでやろうじゃないか。
このなかなかの美人さんの前で。
「生きろ」
・・・少しして、閉じかけたまぶたを上げた。
何かがショートしたような、消灯したような心地だった。
「大丈夫。私は人間とヴァンパイアのハーフなの。君は亜人種だね?」
微笑んでしまう。
こっちの 闇は 甘い ぞ
「記憶が何故か見えないから、君は多分、亜人種。大丈夫。治療をするから」
「ハーフ・・・?」
「そう」
「・・・オーケー・・・」
俺はそのまま、意識を手放した。