血のような味の紅茶
血のような味の紅茶
古くさい店内は、昭和初期からあるような
黒い木が、店内のあちこちに内部から組み込まれた様子が
漆喰の中から見ることが出来る
天井からぶら下がる、明かりは、
どうも頼りなく
されども一定数で、ぽつぽつと、配置された
豆電球のような橙色の暖色は、妙に赤く
黒い部屋の上部を照らし
部屋その隅までその明かりは、完全に照らしているとは言い難い
されど、それは暗いせいなのかは、定かではないが
机の上に置かれた
いっこしだんは、あろうかという
直立した電化製品は、そのほとんどが、多くても二、三個同じ種類であるが
どれもが、孤立した品番であろうことが
見て取れる
その赤を占める数が比較的多い
懐中電灯の配列された陳列は
どれもこれも、一定数を置き
4、5センチの距離を置き
ざっくばらんに
乱雑に、法則性も持ち置かれ続けている
ある場所は、階段
とある場所は、戸棚の上まで、その弾幕
のような面は、続き
一種のもような、一つの内装の模様のような
デザインを、示している
私が、その店に入ったのは
ゲボが、でそうなほど、酔いが回り
頭が回らなくなった
金曜の深夜
店を閉め忘れた店内に
土曜の始まりに入ったように思われたのである
その場所は、新城 見枷が橋の袂
柳が、欄干近くまでせり出している
幽霊通りと小学生が、呼んでいる付近を
さらに、路地裏に向かった場所に
隠れ家的な居酒屋を、さらに封印したような
気まぐれな場所に、
その店内は存在していた
私がその場所には行ったのも
実を言えば、吐き出す物を、
どこにしようか、思案した後に
川ではなく
なぜか民家に迷い込んだのが
元はと言えば、大元であり
今から考えるに
実は、外で吐くのをはばかられ
もしかすると
トイレを探して
店を見つけたかったのかも知れないが
残念ながら
幽霊通りにあるのは
扉もない民家の裏側であり
まさしく幽霊がでてもおかしくないような
暗闇が支配し
しだれ柳のみが
さらさらと涼しげに
陽気な音を、奏でているくらいである
これでは、幽霊でもでないと
陽気すぎて、収まりきれず
祭り囃か、サンバのカーニバルでも聞こえてきても
何らおかしくはなくなってきてしまいかねない状況だ
特に柳のしだれ性は、美しく
数あるしだれ性の中でも
その一品は、見ていて飽きない
そんな魔性の清潔感と行動を
私に、まじまじと昼間なら見せていたに違いないが
しかし、そのとき私の脳裏には、
吐き気と倒れ込みそうなほどの泥酔感を、
脳内に、埋め込み
さして、風流もどこ吹く摂理か
はたまた動作か
そこにある感情は、田んぼの土ほどぬかるみ
私の鈍足を
さらに引っ張って、しまっていた
そんな私はついに、限界を迎えたと見え
その千鳥足は、よちよちと
限度を超した
細切れな足取りを見せながら
そのままふらりふらーりと
細い路地へ路地へ
まるで傷ついた手負いの獣のように
このままでは、縁の下まで、逃げかねない勢いであるが、しかし、現代日本には
縁の下の割合は低く
味気ない再生不可能に近い
白いコンクリートが埋め尽くされて
入れば、完全犯罪が、コンプリートできそうである
コンクリートだけに
私の、千鳥足が、向かった先は
路地裏のドン詰まりに
一件の居酒屋のように
赤い明かりが、点灯しており
その大きさから、私は、内部に電灯でも入れられた
赤提灯かと勘違いしていたが
しかし、実際には、現実には
それは、まごうこと無き
巨大な60センチは、あろうかという
大きな
懐中電灯の張りぼてであり
その上部からは、サーチライトを、幾分緩くしたような明かりが
天空を、やんわりと照らし
さながら、大怪獣の余裕ある放射熱線の練習風景にも
見えなくもなくもないことだろうか
私は、ようは、それを、赤提灯だと勝手に解釈
または、間違えて
その取っ手を握ることにより
内部の金具が、開き
押し入ることの出来る
開き戸を押し
木の床の店内に、入ることになる
その日、あまりにもいやなことがあったにも関わらず
私の後輩は、皆早々に、退社し
私は、何をやっているのかわからない先輩を、置いて
「おさきにあがらせてもらいます」と一言の残し
蝉の聞こえるような
猛暑がもう少しで、沈下する時間帯、表へ、
灰色のビルの入り口から、脱出をした
辺りは、クーラーの吐き出した内部の熱処理の影響下か
はたまた、コンクリートの反射する
鏡のような乱反射の鏡との双響の影響か
ただ走り回る機械の悪魔の契約のせいか
どちらにしても、暑かった
それは、地球環境を、感じさせる
実に危険信号のように
蝉のミンミンと言う警告音と共に私は、人混みの中
信号に向かいながら
歩道を、何かに並んでいるように
確実に、歩いている
私の脳内では、一人であるが
とりあえず店は決定していた
その前後左右は、多少揺れるが
大体に置いて
それは、諸先輩方の受け売りとも
伝統とも継承とも言えるのだろうか
行く店は、あまり変わらず
それはもしかすると
戦前から同じと言うこともないだろうか
あまり代わり映えの無いような店を、選んでいた
一件目の暖簾をくぐり
一人カウンターに腰掛けると
冷や奴が、出てくる
それはまるで、電卓を、三四枚重ねたような
大きさであり
とても、お通しと言うには、大きく
さして、このみ背のメニューには、後二つの豆腐と
日本の酒しか存在していない
能美翔通りの名物
とうふじごくである
私は、そこで、豆腐二丁
日本酒一杯をお猪口でもらい
なにやら、腹の調子が、ぐだんぐだんしてきたところで
千円札を、一枚置くと
外にでた
枝豆のにおいが、強いその豆腐は
自家製であり
その裏には、銀色のプールが
さながらチェレンコフ光を、まき散らしそうな
なにやら、機械的な外装のように
内部には、幾何学模様の
豆腐の長方形の物体が
規則正しく並び
何かの実験室にみえる
その味は、量産品とは違い
にがりをしっかりと使用しているせいか
苦みが、文字として妙
あまり少なく
その風味は、くさいほどに
しっかりと残り
豆腐のなんたるかを、表現していた
その魔術のような豆腐の値段は、一丁300円
日本酒は、お猪口で良い物が400円なのだから
これは、ほとんど豆腐を食わせる店である
私は、豆腐で、その筋肉を補強し
そのまま、通りを通り過ぎ
またしても信号に向かうと
そのまま、肉屋に向かう
これだけ言うと
飯屋を巡っているように
感じられたかも知れないが
それは事実であり
何をするにもまずは
手始めには、準備が必要である
私は、釜ののれんが掛かった
これもまた古いというか汚い店に入ると
定食とビールを一本頼んだ
机には1200円を、置くと
注文品が届くのを待つ
この場所は、定食を
食しに来たのであるが
大盛りのどんぶりざらは
通常の二倍ほどの大きさがあり
そこに、白飯が、多少大きく
そして、キャベツの千切りが
草原のように
同じ厚さ、その上に断層のように盛られ
さらに上には、スタミナ丼とでも言うような
味付けをされた豚肉ほうれん草ネギタマネギ
ショウガニンニク醤油胡椒等々が
大きな中華鍋で炒められ出てくる
その横には、味気ないほど具のないスープがあるが
そのわかめの多少見えるか見えない程度に浮いたそのスープこそが絶品であり
ラーメンがないのが不可思議に思えるほど
それは、この辺の飯屋の七不思議へと数えられるほどなのだ
私は、まず、ビールをなめると言う
水代わりの妙なのみ方を、少し口を付けるか付けないぐらいで
一緒に出てきた、その容器を
テーブルの脇に避けると
割り箸を、割り
その大鍋のような大混乱なる
戦場に、二つの橋として
天空より
店内の雲を、わり
煙が少し煙い中
換気が出来ていないのか
どうかは知らないが
私の木製のそれは、
人間たちを
いや、オークに接触していた
温いビールを
最後に腹に流し込むと
店内を出た
それは、戦場からで出たように
空気が良く
少なくとも店内のように
曇ってはいない
その焦げ臭くないにおいが
生還を意味しているように思えた
私は、満腹のためか
ふらふらと道を歩くが
この時間この場所を歩く人間で
千鳥足でなく
規則正しくあるく人間は少なく
少なくともてきぱきと
まっすぐ歩くことはなく
多少、昼間より
その速度は、ゆるりとしているように感じられる
ただ、私の眼下には、そんな酔っぱらいのことなど
道ばたの枯れ木かごみのように
かきわけるように、歩く姿が、目に入った
学生か何かかとも思ったが
違う
その赤い外套を、かぶった姿は、一種の変化ともコスプレとも思え
その眠気と酔い気を、分断する姿は
さながら、赤い刃物であり
その赤は、肌が避ける返り血の断面の光跡のようにも見える
それは、わずかに見えたが
人混みの中
どうも、女性のようであり
迷ったか
近道を考えたかは知らないが
こんな場所に近道もなく
ただどん詰まりのように
酒屋が腐っているだけである
ただ、その足取りは、トロッコかモノレールのように
確実なようで
あるところで、人混みに潜ったのか揉まれたか
はたまた、路地裏に、潜っていく姿を見た気がしたが
私の目的とは違うので、目は、次の信号へと向いていた
巨大な注文が、破棄されたとき
嫌気がさしたように
後輩たちは、蜘蛛の子を散らすように
帰宅していった
先輩方達は、なにやら、何もなかったように
書類の整理をし
私はただ、果たしてことの所在は、どこにあるのだろうかと
宝くじの半券をなくしたような面もちで
いすの上に座っていた
ことの発端は、納期に、記されていた
商品の一部に、明らかに違う部品が、かかれており
それにより、取引が、中止したことなのだが
問題点は、その説明が、自分のところではなく
破産した会社の商品だったことが、全く持って
問題だった
元はと言えば、それに気づけなかった
自分の問題でもあるし
出してきた書類を、素通りしてしまったのがいけなかった
型番が、一つ新しい物はみたが
外装だけが同じであり
内部の構造が、その一点をのぞき
違うことに、後になり気づいたのは
実に、実に、問題だ
あの説明書が、一個前の型番だと渡されたときに・・・
お通夜モードの白い蛍光灯の所内において
無駄にクーラーのみが暖かい温度を変換していた
一体どこの世界に、多機能計算機を欲しがる企業が入るのだろうか
計算能力よりも
10得ナイフのように
良くわからない機能が目白押しである
いくら、ワゴンセールに置かれていたと言っても
私は、手に取るどころか
見もしない可能性もある
何とか
重苦しいその場から
脱出したのは六時を過ぎていた
そのあと、何件か飲み
最後に、カラオケ喫茶で
何を歌っているのかわからない自称落語家と言う
男の歌を26曲か七曲ききながら
私は一人焼酎を、そのまま
何も混ぜず、
マッチ箱を、いじくりながら飲んでいた
目が据わり
足がふらつき
財布は軽く
その足取りのみが鳥のよう
な、私は、そして、店に行き着くことになる
意気揚々とは全く持って、無かったが
会社に行くときの私の早朝の足取りは
普段より一ミリくらいは、多少はしっかりしていたに違いない
しかし、今現在、台風により、洪水が、発生し
橋の欄干までせり上がり
堤防を、並々と濁流が、通り
後少しで、お味噌汁にも似た色合いの水が
堤防を越えて、満杯に張られた風呂に浸かるように流れ出すか
はたまた決壊しそうな程のぐちゃぐちゃ感である
私は、逆に、のぼせてるんじゃないかと言うほど
頬を赤くさせ
店内に、入る
「トットイレ」
そんな声には、反応はなく
ただ、静かな
いや、静穏
何の音も声も聞こえない
ただ静寂のみが
懐中電灯に、照らされている
その真下から頭上に照らされたそれは
所々熱線でも吹き上がるように
上に垂直に
いや、徐々にその口径を上げながら
照らしている
それぞれ、徐々に色が違うのか
僅かな差異が、見受けられた
点々とすべてではなく
忘れられた
もしくは、気まぐれか
点灯した懐中電灯の柱
試しに、一つテーブル上から手に取ると
スイッチを押すと
点灯するから、内部の電池が、切れた訳ではないらしい
私は、そのスイッチを再び切ろうとしたとき
目の前に人がいた
「入れてしまったのですか」
私はどきりとする
まさか、置いてあるものを、入れてはいけなかったのだろうか
スイッチから手を離し
すいませんとあやまる
買い取りになるのだろうか
それにしては、みょうなシステムだ
ぼったくりの類である
箱やパッケージされていない物を
確認のために
いや、あやまってさわることもあるだろう
このような懐中電灯という
あまり売れなさそうな物ばかり売っているのだ
そう言う独自のルールの上に高く売っているのかも知れない
私は、買うという意味を証して
彼女にそれをわたそうとして気づく
赤い外套を、かぶっていた
と言うことは、この懐中電灯屋に、行くために
彼女は早足で歩いていたということなのだろうか
いや、どちらにしても、色々な店があるのだから
懐中電灯専門店があっても
さして不思議ではない
懐中電灯とは
そんな僅かながらの安心感と
なにやら、冒険の前日譚のようなわくわくが、付きまとうものである
私は、なぜ、スイッチを押してはいけないのかを、聞こうとして
彼女の顔に、筋がよるほど
真剣なのに気がつく
これは、脅しと言うよりも
何か、とんでもない失態をしでかしてしまったような
気がする
いや、それを含めた、商売のスムーズな取引なのか演技なのか
しかし、彼女は、それを、非常に、非常に
慎重に、受け取る
その際にも「決して、スイッチを切ってはいけません」
と言う
何とも、その物々しい言い方に
なぜとも、彼女の年齢は、わかりかねるように、思えた
懐中電灯を、受け取った彼女は、それを慎重に、机の開いているスペースに、置くと
それは、天井へと光の柱を立てている
私は、彼女の行動に、幾分不自然さを感じながら
その原因を、探ろうとも
ここは、懐中電灯が、所狭しと
面という面に置かれた空間であり
そんな中で
置かれた懐中電灯に一体
どの程度の意味があるのか
それは、この群帯の中では、実に自然に思えたが
しかし、それが、何か、危険視するほどの物には、
どうしても思えないのである
しかし、実際問題に置いて
彼女はそう言う言動を行っており
現に、目の前で、懐中電灯は、灯っている
何か私はしてしまったのだろうか
それは、ぽつぽつとではあったが
お彼岸の灯籠のように
幻想的でさえある
「あなたが、やってしまったことは、重大な違法です」
彼女は、何か、それっぽいと思ったが
それを確実に確定するような言質を、言う
やはり、何かまずい行動をしてしまったのだろう
しかし、私としてもそこまで危険な行為なら注意書きをするなり
ケースに入れるようなことをしていただきたい物だ
何だったら、誰かは入れないようにしておいたほうがいくらも良いに違いない
勝手に触っておいて何であるが
私はそう思う
「これは、生命燈 あなたは、命を、勝手に付けてしまったのです」
何を言っているんだ
チュウニビョウな人か
そう言えば、この外套
私はそれを見たときに
コスプレイヤーの方なのかと
そうふと思ったことを思い出すことを思い出していた
「あなたは何を言っているんですか
それは、死に神か何かで、ここは、そう言うモチーフのテーマパークか・・」
私の返答に対して
それは一刀両断 爆破じみた声により破壊された
それは、否定である
「だまらっしゃい
あなた、勝手に時間外に、入店して
なおかつ、私の慎重かつ大胆に
そして繊細無味な、この世界観
一体、何代これをやっていて
あなた、このそのどのどれのこのすべての
重みを台無しにしてしまっているんですよ
way分かっているんですか
ことの重大性が
あなたに、あなたに分かっているんですか
生物的行動を、すべて許容するなど
アホの骨頂
台所のネズミに劣る低脳痴能
アホバカチャンリン土台どうだい全く至極
何もかもすべてが、台もなく台無しです
あなた、子供を、作ったときの責任はとれないでしょ」
何を言っているのか私には全く理解の及ぶところではないが
ゆらゆらに、揺れていた眠気は
5000円の対価を、まさしく水のように、消し去り
それは、胃袋から抜けるように消失し
今まさに、私は、素面のただの阿呆へと
時間を戻されてしまった気分だ
すなわち
気分は比較的落ち込んでおり
それを、まっさらなナイフで
法律無視で、ノーガードな私は、
盾もなく真横でもなく
まっすぐに、切られた気分で
ずどんと落ち込みそうなもので
視界が揺れている
「あなた、これが、点灯しているということは、
この世の中の何処かに、新しい生命が、一つ生まれたということになります
私、名乗り遅れましたが
幻楼隠頭首 生命燈 篶灰 エンカイと申します
あなた、今晩 懐中電灯を、探さなければいけなくなりました
すぐに、言ってください」
私は、どこにと言う前に
何を言っているのだという疑問点を、かき消させるように言う
「ここに、地図があります
あなたが付けた懐中電灯は、本来であれば、後に三年は、静寂の中で充電しなければいけないのです」
私は、懐中電灯に、そこまでの充電はおろか
あれは、電池を使うのでは無かろうか
いやいや、大体において、
懐中電灯に、コンセントのような物が、刺さるのはおろか
その懐中電灯に、コードもない
もし木のテーブル伝いに充電できるような
接触面があったとしたって
そうする理由が分からない
「すいません、冗談なら
私、そう言うのはあまり得意ではないので」
「だまらっしゃい」という 言葉が、私の右頬にまたしてもクリティカルを、与える
名前も、思い出せない
確か灰とか言っていたか
懐中電灯に、灰とは、実に笑えない話だ
電気に取って代わられた蝋燭
それがなんだという話かも知れないが
サイクルもミニマムになったものだ
やっていることは、とても、前とさしてかわら無いどころか、大きくなっている気がする
対価とは、常に同じであり
結局何処かに、その後が、押し寄せてしまう
最短距離など存在しないのだ
其れが出来る数学など
実は、かなり無理があるのかも知れない
しょせんは、紙の上のままごと
それこそが、一次元的考えを抜け出せていないのかも知れない
彼女が出した、地図には、何カ所か、丸い赤ペンで文字が書かれており
そこには、丸が、点在していた
「あのすいません、生まれるって
赤ん坊でも生まれるんですか」
彼女は、赤ペンでさらに丸を、増やしながら
よく分からない文字を、書き記す
日本語なのか
漢文なのか
どうも小さくて読めない
「ひとなものですか
これは、鬼ですよ」
鬼
それは、妖怪のたぐいなのか
仏教的地獄の使者なのか
どちらにしても、勤勉に、行動している気がする
「鬼とは、生命的不明りょな生命体
つまり命の源というわけです」
私は、意味を見いだせずにいた
妖怪好きの馬鹿なのではないだろうと言うきもしないが
「つまり、私は、あなたに、何をやらされようとしているんですか」
私は、
血のように赤い丸を、ききとして書いている
一見まじめそうな表情と
手元の地図を、見ながらそう言う
「あなたは、兎に角、この地図の場所を、見回ってください
私は、別の場所を、見ておく必要性があるので」
私は、地図を渡して、何処かに行こうとしている
彼女を、止めるように聞く
「そこに、何があるんです
私はもし何かを見つけたとしたって、何をすればいいんですか
いや、ここは何なんです
何をやっている場所のお店なんですか」
彼女は、懐中電灯を、一つ持ちながら言う
「電気をつければ、その分そこには、闇の代わりに
光が、当たる
その消えた闇の差分を、何処かに現れてしまう
それ故に
我々は、その分を、補わなければならない
この町の梁下町の区分は、私の仕事です
あなたは、そこに行って、懐中電灯を、確保していってください
これ」
渡された懐中電灯
「押してみてください」
私は、スイッチを押していいのかと思案したが
そう進められて
銀色のスイッチを押す
カチリと音がして
何かが点灯した
それは、真っ青であり
まるで色が付いているようである
「これは」
お化け屋敷にでも入るときに渡される
懐中電灯のような物を片手に私は、目の前の女性に聞くと
「これで、見つけることが出来ます
ただ、あまり長いこと点灯しないでください
あなた、自分自身を見失うことになりますよ」
私は、手に痛みを感じて
手元を見ると
何か、ワイヤーのような物が、懐中電灯から
飛び出しており
それは、毛糸のように、周りに漂い
手に、突き刺さるように付着している
「これは」
点灯するのは、丸の場所だけにしておいてください
ではでは
彼女はそう言うと
外に出た
私は仕方なく外にでると
鍵をかけて
彼女は、地図を残して
道を歩き出す
私は仕方なく
地図を片手に、暇つぶしにような
よく分からないことを
酔った物と考え歩き出すことにした
ビルの上には、ほこらがあることがある
屋上に植えられた木というのは、あまりにもかわいそうに思えることもあれば
車の真横にあるよりは、幾分かましなのではと思えてくる
私は、手の懐中電灯をつけると
なにか、赤い物が、通り
懐中電灯に伝わると
それは、幾何学な光方をし
ただの青い明かりを付けた
大丈夫なんだろうな
感染症とか
いや、これはどういう原理で、ここまでのことをしなければいけないのだ
私は、一応
その生命が、何かも知れないし
懐中電灯と言っていたが
もし懐中電灯があるにしたって
小さいものでは、暗闇の中で、見つける自信が
いくら懐中電灯で照らしたって
それが青いからと言っても
無いに等しい
ぐるりと一周回るも
何かめぼしい物はない
私は仕方なく
スイッチを切ると
少し息切れがする
大丈夫なのか
この装置は
私は、丸がかかれた場所を、虱潰しのように回る
まるで営業活動だが
幾分
人に会わないだけましだろう
私は、10件目の丸を、探しているとき
青白い光の中で、何かが動いた
それは、動物にしては、動きが遅く
まるで、肉屋のような生々しい内蔵のような弱さを見た
何なのだろうか
私は、それに対して、明かりを近づけると
それは、なまめかしく濡れ
脈動している
ただ、それは、幾分いびつであり
それは、缶ジュースほどの大きさでありながら
その体からは、何かが延びている
それは、ホースのような形で、体に刺さり
その細いチューブから何かが、ぽたりと滴る
「ありましたね」
背後から声がして、跳ね上がる思いだ
「っあ・・ええっと お名前は」
私の戸惑いをよそに
「篶灰です
それよりも、これを、持ち帰らなければいけません」
それはとても、生命にも懐中電灯にも思えず
グロテスクな映画のクリーチャーとでも形容詞した方が良さそうに見える
ただ、彼女は、ライトに照らされるそれを見ながら
私に無茶なことを言う
「それを、持ちなさい」
全く無茶なことを言う
こんな物を触ったら
それこそ感染症か寄生虫に寄生され
私のひ弱な防御層は壊滅的に死に至ることだろう
しかし、彼女は、それをまるで、歩きたての子供を
促すように、さも当然のように、見守る
「少し待ってください これは何なんですか」
彼女は言う さも当然のように
至極まっとうなことだとでも言わんばかりに
わたしに
「カイチュウデントウ」
わたしは文字の変換が出来ない
何か、全く違うことを言っているんだろうか
これは、ドッキリとかぼったくりとかよりも
よほど、あくどい別の
根本的にもっと悪質な
何か、理不尽な死刑宣告か
いじめに遭っているのではないか
わたしは今、何か この世の物ではない
別の何かへの生け贄か供物か餌にされているのでは無かろうか
そう言えば、店内で、何かの代償みたいなことを言っていなかっただろうかこの女は
いま、わたしが付けている
この青白い明かりを付けている
この懐中電灯だって、少し使っただけで
心臓が、苦しくなってくる
もし、あの店内の懐中電灯が、
それ以上の何か、とんでもない対価によって何かが出来ているのだとしたら
今目の前にいる何かは
わたしが手に出してはいけない
そんな何かの可能性だって捨てきれないではないか
「早くしてください
わたしも暇ではないのです」
そんな言葉が、背後から投げかけられる
今振り返れば、きっと目は爛々と黄色く輝き
唇から見える目は
捕食者のように
ギザギザと鋭くと勝手見えていたに違いない
しかしわたしは、その脈打つ何かを
ゆっくりと近づき手を向ける
肉塊のようなそれは、心臓のように筋肉質であり
その中から
わたしは、それがゆっくりと動き
こちらに、目を向けた気がした
それは、確かにこちらを見ており
その目は、黄金色に光って見えた
「それで、これは、何なんです」
懐中電灯と言われた物は
水槽に入れられ
ぽつりぽつりと動いている
チューブは、外部に出ており
何かにつながれている
今まで持っていた
青い懐中電灯は、切断され
手元には、腕に刺さったチューブが、数本残っているが
それは、メスのようなもので、軽く血管に入れられると
簡単に、何もなかったように引き抜かれ
血も出ることはなかった
ただ、腕には、青筋が、数本浮かび
何かはあったことだけは示している
「あれは、何なのですか」
店主は、水槽を、見ながら口を開く
「だから、生命だと言ったじゃないですか」
全く説明になっていない
こんなファンタジー合って良いわけがない
もし、あれが動物だとして
それが懐中電灯とどうなつながりがあるのだというのだろうか
少なくとも
わたしが点灯したこととあまり関係があるとはわたしは到底思えない
「良いですか」
彼女は振り向きざまに話し始めた
「この肉塊に見えるものこそが
電気の正体なのです
根本です」
理解できない
「肉体を動かすのにエネルギーは必要です
そして、この電気を動かすエネルギーの肉体化
こそ、この懐中電灯の正体なのですよ」
理解が全くできていない
「あなたの言っているのは、わたしが普段思い描く
懐中電灯と待ったくでは無いにしろ
同一の物とは到底思えないのですが」
わたしは、立ち並ぶ懐中電灯をみる
「ここにあるのは、先ほども言ったとおり
この区域の魂です
この明かりを、付けてしまえば、そこには、
世にも恐ろしい生命体が誕生する
消してしまえば、その穴を埋めなければいけない
面倒なことをしなければいけない」
わたしは、話の答えになっていない言葉に
反論する
「今現在、ついているかいちゅうでんとうは、何なのですか、それに、消えている物は」
あなたは、質問が多いですね
わたしは答える義務はありませんが
一応言わせていただくと
ここにある物は、人間の生命ではなく
電気の生命なのです
昔であれば、それは、火でありましたが
今現在
面倒くさいことに
コレは、機械と生物の合体により
色々調べないといけないことが、増えて
非常に、困っているのです
以前であれば、そこまでややこしいものではなかった
しかし、今現在
コレは混沌を、極め
たたけば直るようなものではない
それこそ、使い捨てが、基本の
実に無意味な物なのですよ
ただ、それでも、やらなければいけない
なぜなら、それを、戻さなければいけないですからね」
電気の生命体
SFかアメコミだろうか
少なくとも日本だと・・・
「今現在、点灯している物は、現在使用されている電力
そして、ついていない物は、現在使用されていない
もしくは、まだ使用していない物
それは、予備とも・・
まあ、そんなところですよ
ようは、ここは、貯水タンクのようなものです
溢れないように使う
その程度なのです」
わたしは聞く
「ここは、店なのですか」
彼女は、わたしを、外套を来た服装で
こちらを見て言う
「ええ、懐中電灯屋です
明かりがあれば、仕事も増えます
まあ、こちらからは売りませんが」
もう付けないでください
わたしは、そう言われ、なんだかと思いながら
店の扉を開け
外にでる
外は、ぼんやりと明るく白と紺を混ぜたようだ
酔ったような頭で
振り返るが
そこには、ひび割れた
コンクリートの壁で
他に何か、めぼしい物はない
「あれっ」
あたりを見ても何もない
夢でも見ていたのだろうか
わたしは、帰宅後
すぐに、仕事場へと向かう
頭は重たい
ディスクにおかれた
新聞には、見出しに
「今年の夏 電力自給率増加 新たな発電を再開か」
の文字
わたしは、冷たい部屋で、活字を、眺めて見ていた