七七四
長い円環構造に置いて
私は、深い眠りから覚めることを、諦めていた
私の上空を回る
天空の記憶は、どれをとっても、取るに足らず
私さえもが、その一つとなり得る現実に
辟易していた
考えは、孤立し
繰り返されることに差はなく
私は、同じ事を、同じような、考えの中
繰り返される現実に置いて
私の死を、意識した
それは、意味を、得ると言うよりも
元素の消失
いや、人間的に言えば、原子か
それさえも、この世の中には、存在し得ない
なぜなら、何処まで細胞を、小さくしても、そこには続きがある
終焉など無いのだ
我々は、まるで、点画のように、何処までも、平面上に、粒が、かなさり合い
それがまるで、動いているようにも見えるが
そんなことはない
それは、静止画に、近く
意味など、存在し得ないのである
私は、考えの海にいながら
それこそが、一つの絵でしかない
私の存在さえも
また、紙に記されたような、
一枚の存在でしかないのである
蝉の声が、うるさい
もう六月をとうに過ぎて
七月を、過ぎ去っている
私の、その十五日という日に置いて
いつものように、繰り返される考えの中
私の思考は、ちっとも進まない
宿題よりも
扇風機の向こうで、ガーガー鳴いている
テレビに視線が向かった
ー ガァーガァー
こちら、狭川テレビ局
今川面に大量の死体が、流れ着いております
警察では、バーベキューか
もしくは、集団・・・」
「こら、何見てんだ、お前は」
母親はそう言うと、テレビのボタンを、押す
私は、仕方なく
宿題の前で、鉛筆を持って、考え始める
何と言うことだろう
あれは近くの川だ
全く釣り竿を垂らしても、何もかからず
網で救っても、カワエビさえいない
そんな所に、死体だって
僕は、喜び勇んで、
表に飛び出したかったが
とりあえず、握った鉛筆を、紙に、叩きつけながら
文字を、書いていく
間違っては、教科書を見て、また、まちがっては教科書を見て
と、不毛な繰り返しを、繰り返しながら
私が、顔を上げたとき
夕日が、向こうの空に上がり始めている
実際には、下がっているが
しかし、沈む間近の
爆竹にも似た騒ぎ要は
否応無く、その存在を、焦らせている
私は、急いで、宿題をまとめて、部屋の机の上に置くと
そのまま靴下をはいて
サンダルではなくシューズを、突っかけるようにして
表に飛び出した
全く、夕焼けが、辺りを、こんがりと、焼いている
気温にしては、先ほどよりも、幾分ましだろうが
私は、自転車に飛び乗るようにして、ペダルをこぎ始めた
辺りは、帰宅途中の、人間が、ごたごたと、走り始めている
それをよそ目に、私が、橋に向かう堤防に、登ると
がたがたと、人が、ごわごわと、集まり
何かあることの正しさを証明している
虫だって、明かりや餌のないところには集まらない
いや、虫だからか
実に機能的な生き物だ
もし、契約を相手に押しつけるような悪い人間に捕まったら
ひどい扱いで、こき使われることだろう
私が、土手の道を歩き
橋にさしかかると
堤防沿いに、黄色いテープが、たなびき
その下には、青いシートが、敷き詰められ
川では大人たちが、
必死に、何かを探すように、、水の中に、手や棒をつっこんでいる
一見して、遊んでいるようにも見えるが
しかし、上にかかった
橋から、下をのぞく
橋の上にも、数人の警察官が、制服を着て
下を見ている
何をやっているのかとは、思わないが
しかし
その光景は、異様の一言に付いた
僕は、そのまま、自転車を押して、そのコンクリートの橋の上から、流れる川を見る分には普通だが
しかし、これだけのことが起きてしまえば
一部の人間にとっては、大変と言うしかないだろう
私は、またペダルに
足を引っかけて、川向こうの商店街で、何も買うこともなく
ぶらぶらと、店を、見ながら
冷やかし半分
適当に歩いた後
また、橋向こうに、戻る途中の図書館に行く
この図書館は
昔、昼間仕事のある人のために
夜間に運営
してから、今日まで、十時まで、開館
している
私は、そこまで遅くなるつもりもないが
多少、生ぬるい空気を、たれ流している
玄関から、館内にはいると
そのまま、マンガコーナーへ向かって
言さんのマンガを読み始めた
夕焼け子やけが、向こうの方で鳴っている
城島小学校のチャイムのようなものだ
と言うことは、六時が近い
私は、マンガをしまうと
同じような手順を踏み
図書館を、後にすると
また自転車をこぎ出す
三段編成のギヤであり
それを帰る度に
恐ろしい段差を、感じることになる
今となっては、さして不自由でもないが
しかし、当初も、今も
余り、一番と二番は、使わず
三番目のセカンドギアだけを
使用している
前は、大きめのギヤのせいで
漕ぎ出しは、めっぽう弱い
まるで、サーカスの曲芸か何かのように
ギヤに、足をかけても、スムーズに動かず
その上を、観覧車か何かのように
ゆっくりを、私の体重の重さにより
前進するに任せることになる
もちろん、ギヤを低くしたり
加速を付けて、走っても良いが
前の一つに対しては、ギヤを変えるのが嫌
なのと
後方に関しては、まあ、どちらでも良い
と答えるしかない
格好を付けるのであれば、走っても良いが
別に走る理由がない
私は、先ほどは、違う橋を、渡ると
そのまま、向こうの土手までは走る
先ほどの橋は、農業車がはしるような
一本の物であるが
今走っているのは、
自動車と歩行者が、分けられており
構造も、幾分か、複雑なように見えるし
渡る距離も三、四倍ほど長いことだろう
私は、そのまま、渡りきると
傾斜になった坂を、適当に、足を引っかけながら
フリーギアと言う
漕げば、力が伝わるが
漕がなければ、つまり、後ろ向きに
反対方向に、漕いでも、ギアに力が伝わらない
画期的なものだ
海外では、それがない固定ギアが、一般的に
子供の教育で、使われている
私は、そのまま、幾本も、道を曲がり
何とか目的の我が家に付いたときには
表の明かりがついて
わずかに、電気が、辺りの暗闇を照らしている
中にはいると
そのまま、お勝手に行く
そこには、料理が出来ており
「手を洗ってきなさい」
そう言われて、そのまま、洗面台に、向かった
廊下の薄暗い明かりの下
洗面台の鏡が見える
容器に入れられた
青い頭を押して、液体石鹸の
暗いだいだい色が、手の中で、粘りけのある存在を
吐き出す
私はそれを、もみくちゃに適当に
洗いながら
混ぜることにより泡を立てている
石鹸とは、そのほとんどが、油で出来ている
しかし、それは、消毒液を、飲むようなもので
余り健康によろしいとは思えないし
また、食べても決しておいしいものではない
歯の中に、口の中に
いつまでも、恐ろしいほど
油分が、残り
それは、想像を絶する気色悪さだと言える
流しの水道を、出して、手を洗うと
私は、その下の手拭きで
手を振いてから、廊下をまた、戻ろうとしたとき
私は、自分の背後に妙な物をみた
それは、廊下の暗さかと、疑ったが、どうもそう言うたぐいでは無さそうだ
私の白っぽい
いや、
黄色に、英文が、馬鹿みたいに踊っている
その後ろに、私は、妙な、暗さをみた
それは、決して、明かりが弱いとかそう言う意味ではない
さび付いたような、四隅の鏡
その中央に、写る
私の影
いや、虚像の後ろに
確実に、物体として、固形物のような物が
目に入る
果たして、あれは何なのか
私は、おそるおそる、目を懲らすが
それは、陽炎か、黒いビニールマルチの畑にたなびく奴のように
ゆらゆらと、消えように、去れども存在している
私は、電気の下に、照らされている鏡から、目をそらして
振り返るが
そこには、廊下にあけられた窓
そんな物を、見間違えるはずがない
いや、本来であれば、壁以外に
そう、木の板の間に出来た
その窓が写っても、おかしくはなかったのだ
しかし、そこには、そんな物は、存在せず
ただ、そこにあるはずのない物を
私は、鏡の中の私の背後に、この目で、見た
それは、ちょっと
数秒
五秒も前だというのに
何故か、その記憶は、曖昧であり
また、見誤ったかのように
強く思えた
(そんなわけがない)
私は、そう思ってから
もう一度、鏡をのぞき込むが
やはりそんな物はなく
押さえ込むように、視線を動かす
すると
角度を、見る場所を変えれば
窓が、右側に写り込んだ
どうやら、やはりか
見間違えだったようだ
やはり、木の壁に、暗さも相まって
死界のように、目で、ついつい見落とす角度
もしくは、暗さが生んだ、誤りの可能性が、強い
私は、電気を、廊下のスイッチに手を押して、消す
やはり何もないはずだ
そこには、窓からわずかに明かりが射すばかりで
暗い廊下の姿がある
その光景を見ても
やはり、不明としか言いようが無く
私は、明るい、茶の間を、通り
食卓へ行く
インドにはないニオイだろうが
今日は、カレーライスであった。
カレーの流儀は、各家庭に、存在するだろう
世の中の奥さんには、同情を、隠せない
古今亭 今輔のような、事を言うのは容易いが
しかし、現実問題的に、それが、どの程度の
ルールかは、それぞれ難しい
なぜなら、茸か竹の子かと言うだけで、
人はこれまで争うのである
それが、宗教となれば、ここ百年二百年
何て、近代の話ではなくなる
しかしながら、脈々と受け継がれる
家庭間ルールとは、
まるで、石にいや意志に、彫り込められた
下に恐ろしい、細胞単位で、決められたような
いにしえのルールだ
それは、移り変わる時代にも関わらず
それでも残っているような
恐ろしい都市伝説にも似た存在
時代と共に、移り変わる中
それでも、職人のように、変わらない存在
時代遅れと言われようと
非人道的と言われようと
効率的だと言われようと
非効率だと言われようと
意味が分からないと言われようとも
それは、誰が望むのか
地下水脈が、遮断なかなかされないように
そこには、意味が、ルールが存在する
私は、その意味不明な中に、
まるで、敵の陣地から
嫁さんが来るような
それを、驚きと畏怖と
そして、軽蔑か恐怖か
私はそう思わずに入られない
我が家のカレーには
昨今 牛やその他の家畜
の生育改善を、求められるなか
五百グラムの
黄色い箱の半分
銀紙の中央から
切られた、それは、
煮出された
黄金色のタマネギが、舞い踊る地獄へ投入される
その他、ジャガイモ不在の
その鍋には
人参 椎茸
その他 こんにゃくが、入っている
他の家が聞いたら
何と非人道的な
それでも、人間の心を持っているのかと、言われかねないが
しかし、さらなる、阿鼻叫喚は、始まりに過ぎない
中間ほどで、鷹の爪 ケチャップが、投入され
ここで、豚が、入ることになる
しばらく煮込むこと三十分
ジャガイモが無いせいで
とろみのない汁に
ここで、遂に
ルーが投入されるが
しかし、問題は、それは、黒褐色の一つではなく
乳白色の温泉のような
または、まだまだ先の
六、七月先のホワイトデーの板チョコレートのような
その白い個体を、同じ鍋に投入される
世間で何と言われようとも
これこそが、黄金比であり
絶対なのだ
それは、古く陰陽五行に、触発された
戦争帰りの曾祖父ちゃんが、考案し
それから、何故か、とぎれることなく
ここまで、続いていることにある
私は、フクジン漬けが、乗せられた
平皿の上のカレーを見ながら
銀色のスプーンを、手に取った
もわぁとした、空気が、天井めがけて
上昇気流を起こし
ただでさえ、油っぽく
天井には、水滴のように
鍾乳洞のように
油の黒い染みが、立体となり浮かんでいる
天井の油分を、増して さらには
以前、薪風呂だった名残か
家のあちこちが
黒い色合いの木になっている中
「それではいただきます」
父親が
白いランニングシャツで、そう言うと
一斉に食べ始める
以前 妹が居たが
死んだと言うが記憶になく
姉は、今東京に行って
不在である
何でも黒門町に、居ると言うが
本当に生きているのか
死んでいるに違いない
私は、その他、老人二人
おや二人
の中
コップの水を、飲みながら
食べる用意をする
目の前の皿以外に
キュウリ 漬け物
その他、昼の残りが、並んでいる
私は、水を、半分ほど飲んで、
いただきますと
手を合わせると
銀色のスプーンに
手を付けた
だるい中
お風呂に入りなさいと言われ
適当に、服を持つと
そのまま風呂に向かう
蒸し暑い中、服を脱ぐと
そのまま、体を流して
桶を置くと
風呂に入る
淡いグリーンというのか
乳白色が、混じったような色合いの中
私は、ボート窓を見ている
暗闇の中
時折
点滅するのは、自動車だろうが
私は、そう思いながら
百ほど数えてから
あがると
頭に、シャンプーを付けた手を当てて
洗い始めた
わしゃわしゃと、かき混ぜる度に
納豆のように
白い泡が立ち
質量を、増やしていくようである
それはまるで、入道雲のように
増え続け
私は、その弱酸性雨の中
頭を、動かし続けた
その内に、頂上が、崩れ
積乱雲に、変化したそれは
轟音と共に、水道水を、流しはじめ
ようやく、私は、目を開くことが出来る
軽く、体を、流して、また風呂の中に入る
水滴が、目蓋に辺り
目の脇を落ちていく
私は、そろそろかと、思いながら
一度、深く潜ると
そのまま、早数えに、百数えると
ざ・ぁー
と、風呂から上がり
大きめのバスタオルで、体を拭くと
パジャマに着替えて
茶の間の扇風機の前
野球を見ている
父親の後ろで
畳に、あぐらをかいた
時刻は、時計を見ると
八時を、越えている
今日は、水曜日
特に何もない
日である
私は、布団の中で、天井を、見上げた
暗い室内に漂う感覚は、夏の熱気が、由来する物だろう
徐々に室温が低くなっているとは言え
私は、頭の中を、先ほどの考えが、渦巻き
うまくまとまらないように、感じられた
長い時間とも取れるが
しかし、この部屋に、時計はない
計る物は、窓ガラスの外からのぞく
月の明かりの位置だろう
しかしながら、先ほどの考えが、私の脳内に、やはり渦巻き
良く理解、出来ずに居る
どうしたものだろうか
これでは、トイレにもいけない可能性が
出てきてしまう
私は、月が、窓枠にかかったとき
起きあがると
思い切って、トイレに向かう
二階から、一階へとむかい
そこで、トイレに向かうが
電気が、ぼんやり、誰かが消し忘れたのだろう
付けっぱなしになっている
私は、それを、遠目に、急いで、その前まで行くと
ドアをノックした
もちろんというか、誰も居ない
私は、ドアノブを握ると
ひんやりと冷たい
廊下で見た時計は、十時を、回っていたが
時針は、見えなかった
冷たいそのノブを握ると
扉を、開いた
そこには、誰も追らず
汚れたような便器が、だいだい色の明かりに照らされている
背後の廊下で、時計が鳴る
「ボーンボーンボーン・・」
それは、十回を、打ち終わると
静かになる
私は、トイレの便器に、お尻を付けると
考える
外は、暑いはずなのに
水回りのせいか
この場所だけが、やけに冷たい
私は、早くしなければとも、思うが
こう言うときに限って
なかなか用がたせない
焦る気持ちと反対に
何か、嫌な感覚が、私の背後に感じる
何だろうか、それは、私の妄想が、現実化して
意味をみいだしているに違いない
そんな物は、存在しない
私は、それに、意味を見いだせない
そんな物は、居ない
私は、踏ん張り用を足すと
表に出た
水道が、ながれる音がする
もちろん、その小さな個室に、誰かが居ることはない
そして、変わったことも
私は、近くの暗い洗面台で
手を洗うと、そのまま
走るように、廊下を、渡った
誰も居ない
きしむ音だけが、辺りに響く
不意に私は、何かが動いたような気がした
振り返っても、誰も居ない
私は、そんな物は、はじめから居ないことを
知っている
しかし、そうは、言っても、見た気がしたのだ
あれは何だったのか
私の考えとは別に、時計だけが、振り子をならしている
そのまま、振り返りもせず
二階に駆け上がる
布団に入り
タオルケットを羽織る
やけに、嫌な汗が、背中に張り付いている
夕方のあれを、見てしまったせいだろうか
そんなことが、関係しているのか
寝よう寝ようと言う
考えを、よそ目に、刻一刻と
月は、傾いていった
私は、羊を、数えていくことにしたが
悪夢のように、皆、どこかへと運ばれていってしまう
それは、トラックであり
私は、その羊が
無機質な、白い壁の工場に、入れられるのを見る
中では、羊が、列になるように、押し詰められている
見たくない
考えたくはない
そう言う思考とは別に、私の視線は、その先端へと向かう
羊の鳴き声がする
北海道では、ラム
いや、ジンギスカンだったか
私は、熱い感覚に
目を覚ますと
いつの間にか、朝になっていた
何て嫌な、夜だったのだろう
実に、いい加減に、何かを適当に、押しつけられた気分だ
実に不愉快である
布団から、上半身を、上げると
だるい感覚が、寝た後だというのに
全身に伝わる
シーツが、汗で、濡れている
パジャマを、着替えようとしたとき
私は、妙な物を、見た
それは、足から太股にかけて、妙な、赤い筋のような物が
散見された
それが何なのか
思い当たりが無い
ただ、締め付けたような
それは、細く
まるで、髪か糸のように感じられた
私は、それを、しばらくこすったが
なかなか消えない
仕方なく、手早く着替えると
長ズボンをはき
そのまま、近所の神社へと向かう
もう周りの家の
同じ地区の子供たちが集まっており
私はその中で、ラジオ体操のカードを、
境内の石の上に
置くと
また、子供達の中に戻る
「昨日 カブトムシが、公園にいた」
そんなたわいもない会話
その中で
「私、昨日テレビ見てたんだけど
川で、水死体が、大量に揚がったって
誰か見てないの」
私は、それを、傍観するように、後で聞いている
疲れたのかも知れない
「お前何か知っているか」
リュウヤが、そう尋ねてきた
「いえ、昨日行ったが
ブルーシートしか、見えなかった」
見たんじゃないかよ
そう言われたが、やる気が出ない
これが、罰当たり
レイショウと言うものか
それにしては、やけに早すぎる気もしないではないか
人は死ぬと七日七晩
そこら辺を、彷徨いていると言うが
それ故に、葬式は、その最終日に、行うと言うが
しかし
現実問題
今現在、それほど、死体を、長くもたす事もなく
すぐに、と言っても、二三日ほどで、火葬にするだろう
昔は皆、土葬であったらしいが
火を、比較的、簡単に扱える
現代になって
その方が、割安に変わったのだ
果たして、人は、そのせいで、死が遠くなったのか
それとも、便利になったのか
どちらとも変わらないか
「えー始めるよ」
そんな声がすることもなく
大音量で、ラジオが、付けられる
無愛想な大人が、スイッチを、押すと
ラジオがAMに、切り替わったのだろう
ラジオ体操の前になる番組が、終わりかけていた
広くもなく狭くもない境内
皆それぞれが、ぶつからない程度に距離をあければ、
比較的自由に、行動できる程度には
広い
もちろん、子供が散らばれば、それで、一杯になる程度ではあるが
もう少し時間が早ければ、マレットゴルフの光景が見えるだろうが
農家とは、嫌に早い
鶏が目を覚ます前から、行動を、起こしている
ラジオ体操が、終わると
自分の名前の書かれた
紙を
首から下げる
別にそんなことをする必要は、余りないが
しかし、なくすことを考えれば、致し方がない
私は、そのまま
帰ろうとしたとき
「お前」
と、また呼び止められる
「なんぞ」
私は、振り返ると
そう聞く
「どうだったんだ
川は」
私は、首を傾げながら
「まだ、封鎖は、されてなかったけど
別に、行くほどの物はないんじゃないかな」
彼は言う
「これから、行かないか
朝食を食べたら」
私は、首を傾げて、それを、拒否しようと考えたが
しかし、別に今日はやることもない
宿題を、済ませて、寝ようかと
考えていたが
それを、二三時間、遅らせる程度であれば
別に、悪くもない
しかし、だからといって、また、わざわざ行くようなものでもないと
考えている
昨日の今日でもあるし
「何かあったのか」
私が考えあぐねていると
リュウヤが、そうきく
「ああ、じゃあ、行く」
私はそう言うと、適当に、話をして
その場を解散した
なすの味噌汁が
テーブルに並ぶ以外
漬け物と卵焼きがおかれ
私の茶碗の中には、ご飯が、こんもりと
五センチほどの
標高を称えている
しかし、これを見るに
山という物は、地面と地続きであり
地表から計るという物は、それこそ、海水の表面を、コップですくう程度の計り方でしかないような気がする
しかし、世の中という物は、そう言うものだ
それが必要かどうかではなく
一番、手っ取り早いことを
無理矢理、現実に、結びつける
それが正しいかどうかではない
お味噌汁が、水爆でも打たれたように
その中で、雲を、もうもうと立てている
まるで、どこかの映画監督のようだ
私は、適度に、かき込むと
ごちそうさまと手を合わせて
それを、お勝手に持って行って
軽く洗うと
外に出た
「どこ行くの」
母親の声がする
「友達と待ち合わせ」
母親が、さらにどこかと聞こうとする前に
私は、飛び出すように、玄関のガラス戸を出ていた
朝の冷たい空気が、しなびたように
徐々に、きらめいた朝日が、熱を、強くしていく
私は、車庫の中に置かれた
自転車に飛び乗ると
そのまま、また、神社へと
待ち合わせ場所に向かうことになる
町はまだ、朝ご飯の最中なのだろう
人通りは少ない
私は、ブレーキをきかせながら
神社に止まる
もう三四人
そこには、人影と自転車が、止まっていた
私は適当に、手を挙げると
まるで、挨拶のように
向こうも
「よ」と手を挙げる
ぶらつくように、自転車を走らせるのは、それから
四五分、経ってからだ
皆自転車に乗り
ゆるゆると、堤防沿いを
走る
さすがに、朝では、人影はなく
黄色いテープだけが、また、はためいている
下には、ブルーシートがしっかりと
たたまれており
そこに、何かあった
跡は、見ることが出来ない
一人が、帰るか
と言う中
リュウヤが、斜面をおりだした
「どうした」
私が聞くが、男は
そのブルーシートの
近くへと行く
「やめなよ」
そう言うが
その折り畳まれた物を
彼は、広げると
そこには、何にもない
青い色が写っているだけである
汚れさえ
髪の毛も見えない
洗った跡なのだろうか
「君たち何をやっているんだ」
上を見ると
制服を着た
お巡りらしき
大人が居た
「ゴミが落ちていたので」
大人は
「ゴミじゃない
ここから出なさい
まったっく」
そう言って、出ろ出ろ
と、手を、振った
私たちは、仕方なく
土手まで上ると
そのまま川にかかる
橋を、渡ることにする
「何かあったんですか」
私が聞くと
「水死体があがったんだ
だから近寄っちゃだめだ」
そう言う
皆で、頭を下げて
「さよなら」と言いながら
橋を渡る
コンクリートの中に埋められた
砂利が、タイヤに当たる度に
振動するように、ふるえる
低い草木が、川沿いに生え
その二つに分かれてい川を、上から見ることが出来る
しかし、果たして、その幅は、せいぜい二三メートル
と言ったところか
そんなところに、人がながれることが出来るのだろうか
そうなると、これは、かなり付近か
それとも、たまたま、遠くで、流れ着いたか、か
見渡せば、上に行くほど
石が、多くなり
そして、大きく見える
一応、河川は、整備されており
自然と言うには、余りにも、対岸が、コンクリートで、固められている
一体
この死体は
どこから来たというのか
向こうで、車のとまる音がする
ひとが、増えてきたようだ
私は、適当に、川を見たが
そのまま、引き返すように、帰宅しようとした
「どこ行くんだ」
私は、帰ると言うと
「図書館にでも行かないか」と言われた
「うむ」
私は、昨日のマンガを思い出し
別にどっちでも良かったが
「まあ、つきあいますか」
そう言って、渋々、自転車に乗る
お昼ご飯を、家で、食べながら
宿題しなさいと言われて
仕方なく
勉強机の上で
同じような、紙を、同じように繰り返す
果たして、何の意味があるのだろうか
朝顔の花も
別段面白い品種でもなく
愛着もなく
それは、研究室のように
ただ、無感情に、色を塗っていく
算数の計算
国語の漢字
どれをとっても
あやふやだ
漢字の意味は、形は、バラバラに失われ
あるのは、外見だけの張りぼてである
それを覚えろと言う方が苦痛である
全く間違った外見をしているとさえ言える
外は、徐々に、日が陰る
まるで、昨日の焼き直しのようだ
土日は、ラジオ体操は、あるが
プールはない
市民プールまで行くには、私の軍資金がないし
それを使う気もない
果たして、死体は、どうして、川を、ながれようと
考えたのだろうか
私の思案の先に
宿題はなく
仕方なしに、英語を書き写し始める
言語など、実際に、話さなければ、意味もないだろうに
カラスの声がする
最近、雀が、減少し絶滅の危機に瀕しているという
私は、カラスの鳴き真似をしながら
英語を、書いている
まるでそれは、懺悔のように
意味を必要としない
ただ、型どおりの行動
実に、ナンセンス
人間の無駄遣いである
それとも、憎しみのエネルギーでも変換しようとしているのか
最後の一文字を書き終えると
辺りは、夕暮れに染まり
私は、一日が、終わりを迎えるのを知る
私の一日は、いつ始まりいつ終わるのだろうか
それは、私の心臓が、一日 休み無く働いているのと
同じであろう
肉体は、代金を、貰わずに、働いている
しかし、これほど、雄弁で、有能な存在も
居ないことだろう
それなのに、世の中とは、それを、いつもないがしろにしてきている
元来、もっとも効率の良いのは
その流れに、逆らわないことだ
しかし、それさえも気づけずに
人は、理由を、でっち上げ
適当な理由で、すべてを、否定する
それこそが、自分の処刑台だとも知らず
ロープを、自分のみならず
その周りや
家族 子供まで
それは、連鎖のように、続いている
図書館の本で、貸し出しカードを追えば
その人間の趣味思考を
考えることが出来る
それはまるで、ゴミ袋を漁るように
その人間の思考
構成の一端を、探ることが出来るのだ
果たして人は、脳味噌を、解剖されたとき
そこに何が残っているのだろうか
それは、信じるに値するものか
残すに値するものか
それは、ただの無機物なのか
それとも、燃える有機物なのか
ゴミと有意物
どちらだというのか
どちらでもないような気がする
我々にすくいがあれば、
それは、継続を望むことであり
我々に、すくいがないのであれば、
それは、誰かと居なければいけない事だろう
人間的本能を、肥大化させた解釈は
必ずしも正当性を生まない
しかし、ルールに縛られて
コンクリートで
無我に沈められた
兵隊は、使い物にならず
ただ、海底で、己の正当性を、泡を吐きながら
喋り続ける
私は、夕暮れの
空を見ながら考える
意志のある死体とは
親戚が居る死体だろうか
意志のない死体とは
無縁な無機物なのだろうか
生体活動を、やめた個体は
鉱物的
原始的最小単位に、向かおうとし
ルールの呪いに縛られた物は、
マネキン人形のように飾られて
ピエロに上から操られるしかないのであろうか
私は、青いブルーシートの下
彼らの理由を、考える
果たして、私が、トイレで感じたもの
窓ガラスに
いや、鏡に見た物は、全く関係がないのだろうか
私が、それを思ったから、それは存在する
私が、脳内で、そう、想像し
電気信号を、発したから
それは、実際に、それに、作用する
もし、私が、気がおかしくなり
窓に、無理矢理、頭に、電極でも、ぶっさされて
そう、何か、ショートケーキでも
シュークリーム怪人でも、想像したら
それは、現実世界に、存在しかねないのでは無かろうか
私の目は、ショートケーキ怪人を、窓に写す
勿論そんな物は居ない
窓に浮かぶ月
それは、夜とは違い
青く写っている
何だろうか
疑問に思う
私は何となく
畳に寝っ転がると
窓を、見る
そこには、青い月が、浮かんでいる
・・・
私は、昨日
この窓から、月を見ていた
しかし、青い月が、夕暮れと、反射するかのように
染められることなく浮かんでいる
おかしい オカシイ おかしいぞ
私は、もう一度、寝ころぶ
時刻は、六時くらいであろう
この時間帯から、この場所にあれば、七時も過ぎれば、窓の右側に行って
見えなくなる
何度か、意位置を調整しても、結果は同じだった
その時、私は、窓が、開いていることにきが付いた
ああ、そう言うことか
そう考えると
単純なことであった
ガラスが、反射して
そうなると
昨日の、鏡も、洗面台の鏡が、少し開いていれば、話は、単純だ
本来であれば写っている物が
ずれて見えることで
見えなくなる
それを、押さえ込んで、戻してしまったせいで
また、見える
どちらでも、良いことだが
しかし、どうにも、面白くない
こう言うとき、たいてい、同じように、繋がることが多い
無意味な物を、拾い集めておくことで
それが無意味に玉突き事故を起こす
問題は、それが、本文になってしまって、先に進むことがないと言うことだろうか
今回の死体も
見方を変えれば
後日、私は、不可解な話を聞く
死体は、多数ではなく
一つであり
体が、岩などで、ばらけて、散乱したと言う話だ
では、あの聞いた多数というのは、全くの誤報
だったのであろうか
あのとき、私は、一人だけ
あのニュースを見たのだろうか
あいにく、だれもそれを覚えていない




