よるのかわり
よるのかわり
蝉の鳴き声が、あたりから聞こえてうるさい
私の脳内に渦巻く文字列は、辞書を抜け出し
お勝手で宴会でも始めたかのような騒がしさを持って
そこにいた
薄暗い夜の闇だというのに
蝉は、昼夜逆転
いや、夜を忘れたように泣き続けている
これも、橋の電球のせいだろうか
朝と夜の違いもわからないのだろう
まるで、その一帯だけ、ビームでも当てられたように、蝉の行動を、制御しているのだ
しかし、私は、そのうるささに、がまんんができなくなっている
うるさいうるさいうるさい
いくら呪文のように叫んだところで、私の考えは、ぐなぐなと、私の周りを取り囲み
端から押し出されたように、惚けて眠りこけている
ふざけているとしか言いようがない
誰もいないような暗闇でも
蝉の声が、ここまで伝わり振動させ、鼓膜をなぶっている
何とも言い難い暑さ
それを、倍増させるように
蝉の音波は、あたりを包み
私の思考をどんどんと、奪っていくように感じられる
「なんと言うことだろうか」
そうしゃべってみることこそが、まったく持ってなんたることだと言うことの証明に持ってほかならないような気がした
暗い中、明かりをつければいいのだが
いよいよその熱が、電球が、熱を発しない時代
ではあるが
それは、反射的か、本能か
温度が何度か上がったような、気持ちになるのだ
私の頭の中に、巣くった蝉の鳴き声は、
脳内のタンパク質を、その声でスカスカにして
その中に、蝉の卵を産みつけ
脳内に孵化した
蝉の幼虫は、文字というなの線虫を、食すように
文字の電気信号を、チュウチュウと吸うのであろう
それは時折
血液の循環のように、細胞の道管に、さされ
記憶やらなんやらを、吸うときの弊害として
感情の高ぶり
偏頭痛
等を、起こすに違いない
この暑さも、きっと蝉のせいだ
脳が把握している情報を、ごちゃっと切断してしまっているに違いない
そうだ、そうに違いなかった
暗い中
蝉の鳴き声だけがこだましている
なんという暑さだ
夜は夜を忘れ
暑さをおいて、お日様は、帰って行ってしまう
これは、暴挙だ、暴言だ
暴君だ ボウボウと、まだ何かが燃えている感じがする
外では、なにが起きているのだろうか
私は暗い部屋で、蝉の声を聞きながら考えていた
外で音がした
それが雨音だと気がついたとき
私は、地獄の業火に
一滴の光が降り注いだ気がした
あたりの空気に水気が混じる
これが少量では、サウナのように、さらなる暑さを、蔓延しかねない
であるからにして
私は、その大量の豪雨を、そうでなければいけないと
一人可決決定したい気分に持って行かれている
私の周りには、先ほどとあまり代わりのない、空間
そして、それに、足されるように、雨音ばかりが、屋根を猛烈にたたきはじめている
これが、続けばいいが
私の考えをよそに、雨は降り続いている
眠気が、徐々に私を襲い始める
そろそろ、睡魔に勝てないかもしれない
仕事がある
私の思想とはよそに
雨は、豪雨となり、未だ、暑い部屋の外で、降り続き
今のところ、部屋が涼しい感じはない
ただ、湿度のある部屋の温度の中で、私は、横に倒れていた
もう、寝てしまおう
汗のべたつく布団の上
扇風機だけが、熱心に首を振っていた
「それで、どういう記事を書いてきたんだ」
クーラーが、がんがん利いているが
仕事効率がどの程度なのか、不明な事務所に
そんな声が、私に返答を求めている
「いえ、まあ、それなりに」
なんと、要領の得ない話であろうか
私の頭は、くらりくらり、と揺れており
考えのまとまらずに、この場所にいることこそが、最大の間違いに思えてしかたがない
「お前、人の話聞いていないだろう」
そう、確かに聞いてはいない
まるで、すべての映像が、二重にぼやけるように
私は、目の前の部長の話を聞いている
いや、編集長か
その肥え太った体は、二重にぼやけた視界のせいか
その中間が、やせ細って見える
めがねをかけていないはずが
めがねのように見えるのは、幻覚が見せる技であろうか
「お前なあ、どの程度進んだんだ
程度をいえ、程度を」
私は、白紙の紙を鞄から出す」
まさかなにをやっていないんじゃないだろうな
前の男が、そんなことを、言っている
いや、やっていないはずが
しかし、私の脳裏に浮かぶそれは、
どこまでも、白紙論文であり
それこそが、まさしく、空想のそれに感じられた
「いえ、考えはあるのですが」
私は、そう根強く言うが
相手は、そんなことは、どうでもいいというように手を振ると
「じゃあさ、まあさ、かけよ」
と、その紙の束を、私の頭に、のけると
またいすに座る
怒っている
怒ってらっしゃる
そうは言えど、もう少し、やり方があるというものだろうか
下の席の電話が鳴る
「はい、羚羊出版です
あっはい、いえ、今日中には、ええ、はい、いつも通り
はい、すいません
はい、はい
失礼します」
何かいやなにおいがする
我が社の、印刷を頼んでいる場所は、
二軒ある
そして、この時間に仕事をしていると考えられるのは、
あまり評判がよくないが
やすいと、言う
喜寿真印刷場のはずだ
私は、急いで、その場所を去る
どうしようもなく、ねちっこいともっぱらの噂であるが
しかし、社長の同級生ということもあり
そこら辺は、融通してもらっているとか何とか
私は、小言の嵐が、私へと、弊害的に、向かわないために
そして、部長のために、早く、ものを書かねばと
いったん、クーラー南極地帯から、脱出し
まるで、海底火山が、地下にでもあるような
うだるような、廊下にでると
そのまま、歩いて三分ほどの図書館へ向かう
クーラーがあるのだろうな、と言う程度の涼しさであるが
部長の熱球のいるような、場所よりは
腐った本のにおいでもかいでいた方が
数倍はましだ
私は、わざわざ誰もいないような場所に席を置くと
そこで、ノートパソコンを、動かし始めた
まだ誰もいないような、時間帯だ
まだ、締め切りまで、五時間と言うところだろう
私の脳内は、消しゴム虫が、最大の活動期を、迎えたように動き回り
なにをしようか考える端から
脳電波を、食し
新たな、産卵場所を見つけたように
空間が、広がり続け
その空いた場所に
私の脳内は、外部の蝉の音に、空間を占領され始めた
あまりには、遠目に、大学生らしき人間たちが、必死に、ノートを取っている
果たして図書館でなければいけないのだろうか
私は、そんな観察をしていると
ふと目に留まるものがある
それは、新刊コーナーであり
「世界グロテスク姑嫁問題
殺戮 残虐 惨殺事件簿
中国扁」と、かかれていた
一体、いつから発行されているのか、
私は、新刊がでたんだと思う反面
そんな物が置かれているはずであり
それは中央ではなく、辺境の漢和辞典の横に、
テーブルがおかれ
「ナナシノゴンベ
海辺の漂着地図
著者ジョンウー」と言う地図
「未確認
千人以上が食べられた
カバゴンの謎を追え
取材クルー三人死亡
しょくじん族に食べられた
追悼出版
多数他」
と、最近発行されたオカルト雑誌が、おかれ
昔からあるものを、驚くことに、追いつめていると言うが
実際問題、水着の写真が、所々挿入されているせいだと
もっぱらの噂であり、世間の評価である
しかし、売れているらしい
表紙の血みどろの中には、絵で、カバゴンらしきものが、描かれているが
確か、カバゴンとは、1951年
アメリカの艦船が、ヨドリ諸島沖で
謎の光を、発見
その後、その目撃を、報告した後
消息を絶つ
一説には、海底に、核を収容し
そこで、実験をしていたのではないかと言われているが
調査しても、さしたる異常は、確認できず
ただ、細長い青白い線が、泳いでいた
と言う謎の言葉だけが残った
後世になり、その海域に、海カバと言う
伝承が、存在しており
これは、恐竜の生き残りか
それとも、海洋ほ乳類のイルカやマナティー類ではと
考えられたが
それにしては、やけに、太く
そして、住人の描いた絵は、どうも、カバのように見えるその二つが、合わさり
本来では、沖合ではなく
浅瀬で、確認されたという
その存在が、ごっちゃっとなり
いつの間にか、カバゴンと言う名称が、つけられた
海外では、ブルーラインと、呼ばれ
カバのかの字もない
ただ、ほん表紙を見るに
それは、どこからどう見ても、カバでもブルーラインでもなく
それどころか、黒っぽい影に
なにやら、角やら鎌やら
何か恐るべきものが、取り付けられており
とうてい、許容できるものではない
目だけが、黄色く彩色されたそれを
私は、カバゴンと読んでいいのかわらない
ただ、地元では
クルーと、呼んでいたという
から、カバゴンではなく
クルーと呼ぶべきではなかろうか
カバゴンを、初めてのせたのは
世界の怪奇で、おなじみの
アノ世出版
怪獣のすべてが
初出と言われ
そのゴジラからUMAを、網羅したそれは
時として仏からキリスト
果ては、ゼウスまで、怪獣のくくりにしてしまっている
ただ、問題なのは、大まかにあっているものも、多少あれど
あまりにも地味なものが、大きな改変が、いくとなく行われており
そこで、カマキリが、カマギリスに、なることも珍しくはない
その例として、取り上げられるのが、この
カバゴンであったりする
そして、問題なのは、本来描かれたものが
カバのようなものだったにも関わらず
このとき、カバではなく
黒いぬめっとしたものであり
形を自由に、変化することができる
と、描かれたことがきっかけで
まるで、スライムか何かになってしまった
そういう戦犯を起こすあたり
それは、噂話の方向性を、色濃く残しているのかもしれない
私は、ついに、気になり、それを、読もうかと考えたが
いつの間にか、時計が、すすみ
針が、私の意志に反して、よくわからない数字を、指していた
どういうことだろうか、貴様は、私の所有物だというのに、反旗を翻したというのか
そんな、あほうな、ことを、考えるのをやめ、雑誌から手を離すと
席に戻る
人が増えてきたが
絵本の机には、誰も来ない
子供も、怖がって、近くの児童書を、読んでいる
私は、キーボードを、打ち付けた
なにも起こらない
さすがに、Enterキーを押しても
なにも描かれていない場所に起こるのは、
その部外に、キーボードを押す音しかないのである
「しかし」
私は、考える
周りには、ちぎり絵の表紙や、海外の毒々しくおどろおどろしい精密描写
アホみたいに単純さが、キョウキを恐怖を感じさせる絵本が、私を、監視するように、見下ろすように、並べられ
私の矮小さを、監視している
どうするか
私は「しかし」と、言いながら
考える
しかし、いくら考えたところで、なにを書いていいのか
いや、何を書こうとしていたかも思い出せない
私の目の前には、点灯する白い画面
この場所は、あまりクーラーの風がこない
ただ、私は、そんな場所で、停止したように
考えを、巡らせて居た
何を、書こうとしていたんだっけ
ここは、暑い
まるで、日差しが、ガラスを突き破って、直接私にスポットライトを当てているようだ
潜水艦から漏れ出した熱水を、浴びているような中
私は、キーボードに手を伸ばす
ただ、何も起こらない
そこにある、白紙の画面は、私の脳内を、暗示しているようであった
何かが、揺れている
私は、目を覚ますと
目の前には、部長が立っていた
「終わったのか」
画面は暗く
スイッチを入れると
文字が
ずっと
「れえええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええ」
と、続いている
なんと言うことだろうか
私は、頭が空白に消えていくのを感じる
「それで、お前は、これを、提出するというのか
私は試しに、一番下の行にいくが
同じような文字が、休むことなく、連なり
いっぺんの許しもない
「お前は確か、飯屋に、取材に言ったはずだ
そこで、チャーハンの作り方を、一から取材したはずだ
どうしてだ、どうしてそんな、三千文字に満たないことが書けないんだ
お前は言っていたはずだ
もうすぐ私は有休を取ります
そこで、チャーハンの食べ歩きに横浜に行くんです
と
それがどういうていたらくだ
風邪か
それとも失恋か
お前の脳内に、木枯らしでも吹き込んでいるというのか
お前なあ、本当に、時間はないんだ
最悪
写真だけでも提出しろ
無理なら、別の奴のあがっている
来月号を、入れ替えるから
写真をまず出せ」
私は、引き出しを、あける
そこには、茶色い封筒があり
なにやら分厚い
「お前は、馬鹿か
データーは、パソコンに、入っていないのか
私は、そういわれ
ピクチャーとカタカナで書かれた
部位を押すと
様々な、華やかな
これだな
と言う感じの
しゃしんぽい
それだけの写真が、沢山入っている
どれも、アホみたいに同じものが、同じ角度で、取られており
これが、フィルムなら無駄使いとしか思えないだろう
「・・・ないのか まさか」
そういわれ
別のファイルを、開くが、今度は、文字や
完成したのであろう
写真と文字の合わさったものが、並べられるが
すべてが違う
そう、私の求めて居るものではない
いや、部長がか
私は、ぱちぱちを、動かしているが
背後で、移動する音が聞こえる
「おい、加藤来月分の
お化け屋敷特集
あれまわせるか」
そんな、怒号を、聞きながら
私はあきらめたように
テーブルの下の茶封筒を、あけてみる
そこには、古い
いや、紙に映し出された現像された写真
私は、それを見て、ぎょっとする
そこには、赤い色と肌色
そして、服が、写り込んでいた
スプラッター映画の写真だろうか
それともスナッフフィルムの写真か
どちらにしても、縁起も気味のいいものでもない
皆、目が、白く白濁しており
赤い中に、目立ち
まるで、下手な魚屋の裏側のようである
「もういいや」
背後で、声がしたが
私の手元が見えたのだろう
「なんだ、おもしろいものを、持っているじゃないか
なんだ、それは、新しい作品か何かか」
私は、戸惑う
ごまかすように、裏側をみたが
何も書かれておらず
時折赤いものが、染み着いている
「それもいいな、まあ、加藤の奴とは別に、半分くらい
それを、乗せよう」
とんでもないことを言い始めた
これがなんなのかわからない
しかし、目の前の男は、それを、使うというのだ
もしもこれが、別の出版物や
作品だったら
それこそ著作権の侵害だ
昔と今では、そこら辺が、だいぶ違う
変わっているのだ
仕方なく、著作権を、持っている方がいらっしゃりましたら
お申し付けください
なんて言うのを、書かなければならなくなることだろう
私は、思案する
いつ入れたのだろうか
もしこれが、本物なら
そんな、疑念を、振り払いながら
席を立とうとする
これは、やはりやめておいた方が
私は、何か、人間という恐ろしいものはないと言う
根底から、覆せないようなものを
覆せるような、根本的恐怖を、なぜかそのとき感じた
その正体とは、なんだろうか
それは、絶対的物理
トンカツに殴られても死なないような
無理ゲー
何か、そんなものを感じた
「これはやめておいた方が」
私の小さな声は
「やっておきますんで」と
後輩に、それを取られ
席に着かれる
「さてまあ、どうしたものか」
この部屋は、冷たい
私は、定時がきたが
何もすることもなく
仕方なく、ぼけーと
白紙の画面を見ながら考える
そういえば、私は、いつから、仕事をしていないのだろうか
昨日、頭が、くらくらして
睡眠を、要し
仕方なく、寝ていたのだ
そして、そのまま、仕事もせずに
朝になり、出社したと言うべきであろうが
私は、涼しげな空気をは、反面
私の頭の中は、さらに冷たく
停滞し
逆に、暖かいのではと、錯覚する程までに
冷え切っていた
これは、低体温症ではないだろうか
周りからは、先ほどよりも数は減ったと言っても
キーボードを、たたく音が、あちこちから
からからと、音を鳴らしている
私は、仕方なく、キーを、たたこうとしたが
何もかくものもなく
ただ、明日の仕事を考えても
それに対して、書く気持ちが薄れているなんだろうか、
ひどく疲れている
眠い
今日は、何かしただろうか
私の、ぐるぐると、回転する
思考の温水プールは
円環状に流れ
時折、同じ浮き輪が、流れてくる
私は、そんな、頭が回るような事を
考えれば、いよいよ脳内の存在しないはずの血液は
私の耳から流れ・・
なんだろう、ひどく、体が寒い
クーラーに、こんなに長い間あったっていれば
仕方がないことなのかもしれないが
しかし、ここまで寒い理由もない
しかし、私が、これを変える理由もまたない
彼らは、これを、標準として、生活しているのだ
それを変えることで、
あまりの気候変動により
泡吹いて、しんでしまう人が居ても、おかしくはない
老兵はさるばかり
私は、うきゃきゃと、小声で、脳内で、言いながら
部屋を、去った
相変わらず
暑い
しかし、この熱風に混じる
湿度の高過は、まるで、雨蛙など死滅したような都会にも関わらず
私の脳神経で、ゲコ と
どこから現れたのか
部屋という密室にも関わらず
脳内の水槽で
そんな声を出している
おかしい
どこにいたのだろう
何もない空間
その場所に、は虫類が
寄生虫を、携え
雨を、知らせている
雨
見上げても、何も写らない
ただでさえ
曇り空だというのに
私の考えからは、遠く上空
どうも、これは、くもがでているのではないかと予想する
それは、公害スモッグでもなければ
明かりが明るすぎて、空がどうなっているのか
見ることもできないとかでもない
これは、雨だ
そう思ったとき
頭に、何かが当たった
これが、硫酸なら、私は、一瞬にしてはげていたかもしれない
しかし、私は、それよりも、パソコンを、守るために
鞄を、抱きしめると
急いで、電車のある駅に走る
ここから十五分もしない
歩かず走れば、もっと早い
しかし、降り始めた雨は
尺度を知らず
私の仕事を、奪うように
ザーゥザーぅと降り始める
私の速度は、サンダルに比例しており
普段の車運転が、祟ってか
重い足は、自動車により踏み固められた
地面の怨念がなせる技か
私は、よろめきながら
よろつきながら
ていていの体を、呈して
さらしながら駅に着く
定期券を、かざし
改札の奥へ通ると
いつもこの時間に、止まっている
緑の電車に乗り込む
暴力的な、雨が、静かに、閉じるドアの向こう
屋根の奥で、山谷に、なっている
屋根から線となり
縞模様に落ちていく
私は、席に着き
一息つく
足元を見れば、雨に濡れたのか、所々黒い
いや、赤い
どこか怪我でもしたのだろうか
私は何となく靴の中で、足を動かすが
痛みはない
指でつつくと
それは、手に着く
ゆっくりと持ち上げ
顔をこする仕草をして
嗅いでみると
妙に、生臭い
なんだろう
本当に、血なのだろうか
私は、寒い室内
明るい電気を、見ながら考える
私は、家を、覚えている
しかし、やけに眠い
こういう時は、寝過ごすことが、多い
私は、やはり立とうかと考えたとき
電車が、動き始め
その反動に、横に動いて、反対に動き出す
席は、まばらであり
反対側へ行く列車には、押しつけられたように
人間たちが、座っている
どれだけ人間が好きなのだろうか
私は、手元の鞄からノートパソコンを、取り出すと
開いて膝の上に載せた
周りに人はいない
起動すると
白紙の文を、提示した
「チャーハンの作りかた
合同料理店は、昭和三十六年に開業
初期メンバーである佐藤 田中 鈴木は
戦死
後の金田と言う警官が、それを、乗っ取る形で
始めたという
この店の名物は、なんといっても、チャーハンであり
あまりの技に、卵が、完全に、ご飯にコーティングされ
卵しか見えないような、そんなチャーハンなのだ
この技は、はじめ、卵に、ご飯を浸し
それを、大きな中華鍋を使用
一気に、焼き上げるのが、こつであるが
その途中で
ご飯と卵が分離しないで、焼き上げるのが、最大の難所となる
この技は
警官 金田の技
早撃ちが、元とされ
その暴力的な正確性は、技術というよりも
血の滲むような感覚と計算による知性が必要とされ
体力馬鹿でも無理
知性だけ持っていても無理とまで言われ
後継者は、今のところ居ないと言う
この店は、寂れた商店街にも関わらず
毎日限定百食を、皮切りに、しており
スープもゴマとわかめが少々はいった
シンプルなものであるが
一晩に込ませた
鳥 丸ごとはいったそれは
次の日に、チャーハンのぐざいとして
味を付けられ
提供される
ぱさついた肉も、味を付けられることで
独特の甘みがまし
卵の甘さとは、対照的な触感を、有している
その肉の秘訣は、ラードであろう
ぱさついた鶏肉に
ラードが、入り込むことにより
それは、とろけたような触感を、さらに煮込むことにより
提供する
肉は、だしを抜かれるとぱさつくものだと、思われがちであろうが
其れは、肉汁に限ったことだ
その先
煮込み壊れた先に存在する
その柔らかさは溶けるではない
溶けているとしか言いようがない
この肉に関して、不思議と言えば
目をつむって、食べれば、肉の所在が、不明になるところだろう
今回取材に応じていただいた店主金田さん89歳
は、絶賛 弟子を、募集中であり
たいてい三時間で、やめてしまうと言うから
これは、何か別の問題が、あること請け合いなし
私は、このチャーハンを、食べて
これは、チャーハンを越えたチャーハン
卵包み飯と、提案したが
却下された
どちらも焼いてあるので焼きめし
で良いという
このチャーハンを食べるためには、開店三時間前が、
ベストであり
それ以下であれば、地震でもなければ到底
たどり着けない
この店の場所は、寂れた商店街という風であり
一年中クリスマスツリーとサンタのコスプレをしたマネキンが置かれているショーウィンドウ
がらくまどま
の服屋が、その反対側向こう三軒目に店を出している以外
ほとんどの日は、銀色の鉄板で当たり一面覆われ
さながら巨大待合室のような、感じがある
是非この場所に行ったときに、よってもらいたいのは、まだあいている店
服屋なのだが
そこで、手ぬぐいが買えるのであろうが
そこには、合同飯屋の歴代の中華鍋が、写真で、乗っており、今年で、九十九代目
あと一つで、白寿を、越えるという
果たして、どうしたらそんなに、中華鍋をだめにできるのか
はたはた疑問であるが
其れ程までに、その作業は荒く
お玉ではなく
鍋をたたきつけるに等しい
また、それに対しての情報として
基本的に、壊れて居るのは、鍋ではなく
とってだと言うことを、忘れてはいけないとも付け加えられているのを
ここに記しておく
近所の鉄鋼場で
溶接してもらっているらしく
その左右につけられた取っ手は
まさしく中華鍋の証でもあろう
これが、リベットだと、鍋に穴をあけてしまうので
強度はあるが
壊したときに面倒だと
わざと溶接にしているらしい
私は、この世にも珍しい飯屋に、行くことをおすすめする
画像には、そのとき撮った飯と
その作業風景を記す
なお、下には、一般家庭に置いての作り方を、示すが
まず、上部のものにはならないことを書いておきます。
まず・
電車が、止まる
私が降りる駅だ
「まず、一般家庭で、作る場合
中華鍋でなくてもフライパンでもよい
まず、卵を焼き
その後 醤油に漬けたネギを入れる
よく混ぜて、水気をとばし
そのとにご飯を入れて
更に混ぜる
完成である
どこからどう見ても
チャーハンであるが
それ以上でも、それ以下である
其れは、店の味ではないし
作ってもらおうとしたら
取っ手が、弾け飛んで
台が、フライパンの着地地点となり回っていた
ですので、みなさまは、普通に、おいしく食べませう。」
スーパーを、通り過ぎる
いや、食材を・・
何かあった気がする
私は、脳内で、打ち続けた
文字列を、考えながら
すぐに、打たねばと、自宅へと急ぐ
あたりは、雨が降った後が、地面に残り
気温も所々
風も吹いているのだろうか
比較的、冷やされて冷たい
私は、家の玄関の、鍵を開けて
室内に入り
電気をつけ
テーブルに向かうと
そういえば、と冷蔵庫を、あける
すると、はみ出たろうに、何かが、落ちた
赤いものが、床に広がる
私は、疑問視を考える
そういえば、どうやって、焼けばいいんだっけ
私は戻り
靴下を脱いで
風呂場に行き
戻ると
足を拭いて
畳の上の机の前に座る
電源を入れて
先ほどの途中から打ち出す
そう、そうだ
私は、途中まで打って、ふと疑問に気がつく
なぜ、私は、文字を打っているのか
帰り道の文字は、すべて打ち終わった
写真も、入れた
どこかにはいっていたようだ
しかし、なぜだろう
ひどく怖い
何が、恐れるに恐怖に値するのだろう
私は、一人
暗闇の中 恐怖していた
「しかし、不思議なこともあったもんだな
あいつが、こんな趣味があったなんて」
私は、部下の背後にたって、できあがった、ページを見て、思う
よく見れば、その顔は、部下の十里であり
その髪に紛れた目は、カラーコンタクトであろうか
白く濁り
血糊も、掃除が大変だったであろう
床に、混ぜ込むように、全身血塗れである
私は、映し出された
数枚の写真に
恐怖 餃子殺人事件
編集者は頑張った
今年は、血塗れ死体偽装に挑戦しよう
と台うち
掲載されている
「もうそろそろ時間だ、送っておいてくれ」
はい、と、下で声がする
私は、最後のまとめと
ざっと、集まった記事に、目を通す
しかし、あいつが、そういう趣味があったとは
私は、そう思いながら
旅行の記事に、マウスを向けた
その写真は、コピー機で取り込み
画像を、切り取る
どうせ、ぺらぺらのカラーになれば、到底細かくは見れない
これが、白黒かどうかは、部長の指示でありさじ加減だ
一応、其れ相応に、そのどちらにも、其れがあうような、文字 書き方 色 などが存在するが
しかし、こうもいきなりだし
しかも、半分も文字数が、削られたんじゃたまらない
まあ、どちらでも良い
私はとりあえず
カラーと仮定して印刷する
どうせつぶれるのだ
私は、内蔵が、飛び出すのを見て
しかし、よくこれだけのことを、あの人はやったなと
少々、印象が変わる
見直したとでも言うべきか
どうなのだろう、この内蔵は、後においしく食べたというのだろうか
血糊は、甘いなんて、聞いたことがあるが
肉と砂糖は、比較的相性がいい
まずい肉でも、甘辛くにれば、大差はない
それどころか、おいしいことだ
私は、最後に、ざっと目を通す
しかし、きれいな、切り口だ
この指は、どうやったのだろうマネキンだろうか
なにやら、寒気がする 先輩のくせに
一人データーを、うってEntaerキーを押して
画面を閉じる
私一人しか居ない
電気がやけに暗かった
私は、一人、何か、巨大な音を聞いた
其れは、来るなと、そう思った
なぜなら、雨に混じって、何度も近くで聞こえていた
其れは、予感だったのだろうか
私は、雨に混じって、巨大な衝撃音を聞いた
其れは、どこまでも大きく
そして、気配を、感じられないはずなのに
そこには存在した
まるで、海の中で、巨大な生物を見るように
いや、水の中では、鯉や鮒でさえ
驚異に感じられる
其れ程までに人間は無力だ
その存在を、目を開けた瞬間
私は、感じていた
存在は、入れ替われど
そこに物体は残り
精神は、喰われど
その入れ物は残り
私の存在とは、ただ別の次元に
存在している




