六
六
見慣れない教室
すべてを数えたことがある
床の木の残片
知らない内に感じる既視感
知っているような感覚とは裏腹に
私の脳という
作られた機関の中で
くるくると回る
閑古鳥は
一定の間隔をあけた棒に
紐をつるされたように
同じ軌道を再現し繰り返し
いつ見ても、それは、似たような動きを機動している
目線はその断片を、目のはしに宿しながらも
見ている物は、いざ知らず
天井の無機物板でもなければ
前方のかじられたような黒板でもない
それは見知らぬ少女であり
私とよく似ていた
立っている場所は
黒板の方向であり
まるで雨に途中であったかのように
濡れ
髪は、額に張り付き
服も、体にすいつき
その物体は、水分を含み色を黒く
重そうに、膨張させていた
暗い室内で
その光景は、異様に見え
私の見間違いも、十分に考えられたが
その背丈や
顔
そう、主に、顔である
それは、正直、あまりまじまじとみる機会も
自分にはないが
しかし、手や頭からだ
を見るよりも
面と言う存在は、それよりかは、いくらか、その存在への認識は、強いと思う
しかし、もし自分そっくりな人間が居て
その写真もみせられたとき
私は、それを、果たして正しく
自分自身だと、認識、いや、正しい答えを、
確実に、それが私だと、言えるのだろうか
あたりは、夜と言うよりも
空は、灰色で
そのせいで、時計が止まっていなければ
三時の空は薄暗く
とても、夜にしては明るく
昼間にしては暗すぎる
あたりは、雨が降りすさみ
窓には、時折
忘れたように、それを起こすかのように
雨が、風という動作により
雨粒が当たる
雨が、降っているのは、分かる
しかし、目の前の少女は、それにより
濡れているのだろうか
髪から水が、垂れる
彼女は、目線の先
何を見ているのだろう
私は、彼女に見覚えがある
どうも、私に見えて仕方がないのだ
「あの」
暗い教室
離れた距離に
雨以外の声が聞こえる
周りに音はない
廊下を歩く音も
生徒や教師
いや、人の声が聞こえない
ただ、風と雨が降る音が続く
私は、彼女に声をかけた
しかし、彼女は、それに返事を返すことなく
私の方
いや、後方を向いている
確証はない
私は、さらに声の声量を増やし
言う
「あの、あなたは、誰ですか」
しかし返事はない
先ほどの問いは、何か要領が、得なかったが
今度はそれを訂正して
なおかつ声も上げたが
どうも、だめだったようだ
もしかしたら、この声でも聞こえていない可能性もあったが
しかし、目の前の少女は、濡れたまま動かない
死んでいるのだろうか
立ち上がった私は、気の床を踏みながら考える
ゆがんでいるというか
それは、安定をもった物ではなく
歩く度に、わずかではあるが
軋む感覚がある
最近の物では、色からも分かるが
その素材をむき出したような教室内を
歩く
「あの」
彼女と近づく
背も同じような気がする
腕から延びた その手に類する部分が
私に似ているようなきもする
しかし、それが確実に私だとは、断言できない
声を聞いてみたい
話し方、思想 仕草
何か、近づける物があるかも知れないが
もしそれが確実に自分だと思っても
それが百パーセント私だというかくしょうにはならない
もし科学により
それが、100パーセント
私と、同一人物だと検査で判明して
それは、判明したから
同一人物だと思うだけで
その後同一人物なのだろうか
それは、判明したからそう思っているだけなのではないだろうか
いや、分かったところで、本当に、それは、同一人物と言ってもいいのだろうか
そして、それが、そうだとしても
それはどう説明されるのだろうか
未だ科学が、足りない情報なのか
それとも、最初から、その存在は、別の物なのか
私は、感覚という
曖昧な機関を、前に
それは、手品や、ごまかし 目の錯覚
そして忘却
その他色々な中で
徐々に、近づく
鏡の中で、みた自分を、私は、どの程度 覚えているだろうか
輪郭がぼやけるように
目の前に、存在している
何かに近づく
これは夢のなのだろうか
近づけばそれは、鏡を見たように
輪郭がはっきりしており
私よりも老けても若くもない
最近見たような、顔つきに、見えて仕方がない
「あの、あなたはどうしてここに」
私自身分からないことを言う
そう、これは夢なのかも知れない
そうに違いない
あたりは、暗い
誰も電気をつけようとしない
彼女は、やはり、服を乾かすことなく
座ることなく
教室の登壇
するような
同じ高さの床で
教師のように
背後を見ている
何を見ているのだろうか
本当に見ていると言えるのだろうか
それは確実に
マネキンだと言えないのだろうか
私は、微動だにせず
瞬きもせず
そこにいる彼女の姿を見る
人形なのだろうか
それは、鏡の中のように無機質であり
また、動かない
人形なのだろうか
ふれて、私は、それを、何かだと断定できるのか
私は、もう一度
彼女に呼びかける
「あの、あなたは、だれですか」
私は、ほんの一メートルも距離を離さず
彼女にそう問いかける
それは、まるで、陰のように
現象として、そこにいると
私は、そう思ったがしかし
彼女の目が動いた
それは、無機物ではなく
有機物だった可能性がある
瞬きも、かなり遅かっただけなのか
「私は、鈴木 栄子 あなたは、先ほどから
私に話しかけてくるようだけど
何かようがあるの」
実に流暢に話す
しかし、それならもう少しはやくはなしてくれても良いだろうに
「いえ、ここはどこなんですか
あなた、失礼だけど 私にうり二つのようで」
彼女は、こちらを見て言う
「全然違うわ、あなたは、私に見えないし
私は、あなたとは違うでしょう」
どう言うことだ、彼女から見たら
私は私に見えないらしい
いや、うそを言っている可能性もあるが
何の意味があるのだろうか
それは下逆心か
それとも、いたずらに類するデーターか
「この場所は、分かりません
私、酷く寒くて、動くことも出来ないんです」
彼女はそう言う
本当に、動物
いや、人間なのだろうか
この何もないような無機物の中に
立つ彼女の存在は、異様に写る
「服を脱いだらいいんじゃない
教室の後ろに体操着でもあるだろうし」
私はそう言うが
彼女は、首をわずかに動かし
「いいえ、後ろには、体操着はありませんし
先ほども言ったとおり
私は、体を動かすことが出来ません
ですから、濡れたままなのです」
本当に、人間なのだろうか
ロボットがしゃべっているような
無意味さが考えられる
私はそう思いながら
後ろを振り返ると
体操着を持ち帰る日なのか
後ろの木の箱には、何も残っているように見えない
「じゃあ、暖房でもつければ良かったんじゃ
ないの、つけましょうか」
時期的な物なのか、暑くもなく
さりとて冷えるほどでもない
それは人間が獲得した
世界の平均気温が、有ることでの耐性なのだろう
「お願い」
彼女は言う
私は、部屋の窓側にある
暖房を、起動させると
なにやら、いやなおとをたてながら
ファンが回る回転の振動が聞こえた
「あなたは、いつからここにいるの」
私はそう言うと
彼女は、動くことなく
「ずっと」と言う
「どのくらい」
彼女はこちらを向くことなく
「ずっと」と言う
それが何を意味しているのか
私は、彼女に、聞いてみる
「ヒーターの前に行きたい」
すると、それはゆっくりと頭を、動かした
私は、彼女にふれると
服は、ぐっしょりと濡れ
肌まで、それがしみこんだのか
重い
私は、郵便ポストでも引きずるような気持ちで、
その靴を履いた少女を
足を軸に引きずりヒーターの前に行く
「さむい」
私は聞くが
彼女は答えない
暖房が、わずかに、利き始める
しかし、時計を見て、疑問に思う
動いていない
先ほどまで三時を指していたように思えたが
しかし、それは、動くどころか
よく見れば、分針も秒針も
いや、よくよく見れば
何か、書いてあるようにみえる
「なんだ」
私が言うと
背後で
「止まっているし
今何時かも分からない」
彼女の声だ
その声は、正直、自分だという自信がない
元々声というのは、変わりやすいし
なおかつ
私は、こんなしゃべり方だっただろうか
とも思う
まるで、片言の機械に、合成音声を、打ち込み流すような言動
先ほど、つかんだ胴体は、機械やマネキンのような感覚ではなく、太い人間を、持ったときのような
脂肪にあふれたような感覚を、感じたが
しかし、比較的細身であり
その外見的特徴は、前の感触とは、合致しない
しかし、あの重さは何だ
「あなた、これは夢だと思う
やけにあなたおもいきがしたけど」
ヒーターのまで
少女が体育座りしている
服は、乾いていない
温度を、あげた方が、良いだろうか
「いいえ、これは現実だわ、私が居るんだもの
それに、私が主さを有しているのは、重力が、有るからであり引力もあるから
私は、あなたと違って、重さがあるの
あなたは、存在 していないから
そんなに、軽いんでしょ
夢みたいに」
とんでもないことを言う
それはまるで、彼女と私では、考える事象が
違う
物理の法則から違うか
彼女自体が、無知か
それともわざと何かを隠しているのか
私は、彼女に、もう一度聞く
「あなた、名前は」
彼女は、こちらを見て言う
「鈴木 栄子 あなたと同じ名前よ」
私は、疑問に思う
彼女は何を知っていて
何を、なぜ話さないのだろうか
聞き方の問題か
「なぜ私とあなたが違うのか教えてくれますか」
彼女は言う
「あなたは、私ではないし
私は、あなただけど、あなたではない
でも、私とあなたは、同じ存在としてここにいる」
意味が分からない
「なぜ名前が、一緒なんです
先ほど、私の容姿があなたとは違うと言いましたが
私は以前あなたと同じ容姿だったように思います
何が違うんですか」
彼女はヒーターに当たるが
いっこうに、水が引く様子はない
タオルで拭いた方がいいだろうか
「あなたと名前が同じでもおかしくはないでしょ
それに、容姿なんて、同じの定義は、
似ているの程度
その遺伝子が、同じでも
それが、同じ物であるとは、
そんなわけは限らない
私と、あなたは、同じ物ではない
あなたは、私ではない」
意味が分からない
「ここはどこなんです」
彼女は、押し黙る
まるで、その答えを知らないとも
隠しているようにも感じられる
しかし、口を開いた
「ここは、存在しない
しかし、存在しないと言うことも
存在しない
それ故に、ここは存在する」
謎かけにしては、たちが悪すぎる
白紙の問題用紙を前に
この問題は、存在しない
しかし、存在すると言われれば
と言うようなものだ
やはり、これは、夢に違いない
私は、そう思って
夢だ夢だと、考えようとしたが
相変わらず
水は、落ち
床の木を黒くぬらしいる
「タオルでも持ってきましょうか」
彼女は首を振る
廊下には、何もないし
教室にも何もない
これでいいの」
何がいいのかは分からない
しかし、何もないので有れば、何かある可能性もあるのではないか
「廊下に何かあるの」
彼女は首を振る
「廊下は、明かない
なぜなら、何もないから」
私は、振り返る
廊下には扉があり
窓ガラスがあり
そこからは、なぜか
画用紙の黒でも貼り付けたように
黒い色が見える
「なぜ開かないの
存在しないなんて事、無いでしょ」
彼女は、こちらを見て言う
「そこに存在しなければ、それが開く理由もない」
私は、
机の下の
椅子を持って、廊下に行く
いや、扉の前まで行く
銀色の取っ手に手をかけたが
それは、開くことなど想定されていないように
動くことさえない
振動することもなく
私は、鍵をかける以前に
ボンドでも接着されてしまったような
その扉を前に
椅子を持ち上げ
それを、たたきつける
窓ガラスが割れ
板を、ぶっかった椅子の振動で揺らす
しかし、その奥には、何も見えない
まるで墨汁でも流し込んだように
外は暗く
存在が、確認できない
悪い夢のようである
まるで、漂流教室のようだ
いや、ブラックルームとでも言うべきなのか
ここは、どこなのだろう
現実なのか
もし現実で有れば、彼女は一体何なのだろうか
彼女の存在が分からない
なぜ彼女は、私と同じ容姿をしているように思えるのか
なぜ濡れていて
なぜあんなに重いのか
第一
ここは、どこなのだろう
こんな教室は、見覚えがない
私の通っていたそう学校は、もう少しくらい近代化している
全面木造ではない
しかも、時間が、分からない
時計は、壊れてるし
外は暗く
雨が降っている
私は、椅子をもう一度持ち上げ
彼女を、部屋の反対側に、息を切らせ移動させると
「やめなさい」と彼女は言う
「なぜ」と私
「それを、壊せば、ヒーターの温度が、また下がるじゃない」
とかのじょは言う
「しかし、外にでれば、ここから、逃れられるじゃない」
と、私は、返す
彼女は、首を振る
「ここも、外も、いつも雨が降っている
逃げ場なんて存在しない
室内も室外も
皆同じなのよ
廊下だって、そう
あそこは、存在していないから
存在している
でたところで、何もないし
それに、私たちの記憶は、そこにしかない
それ以上なにもない」
何を言っているのか
私には、分からない
しかし、椅子を持つ手を置き
外を見てみる
森と町が見える
しかし人影はどこにもない
まるで絵がのように
ただ、雨だけが
いや、動いていない
音がするだけで
雨粒が、まどにまるで、書かれたように
張り付いたように、動かない
「なんだこりゃ」
私の声が、後ろに聞こえたようで
聞きもしないのに答えてくれる
「だからいったでしょ、この世には何も存在しない
だから、我々は、存在している」
どうも全く要領を得ない
あなたは誰で、私はなぜここにいる
ここは何なのか
ここは存在するのか
これは、何なんだ
どうすれば良い、どうにもならないのか
私は、ふらつく頭をして
置いた椅子に、座り腰かけた
雨音が聞こえるが
どうせこれも、嘘だろうと思う
暗い室内
暖房の音がする
しかし、このファンが回転する音は、
本当に、ファンが回転する音なのか
この暖かい熱風は、本当に、このヒーターから出ているのか
私が暖かいと感じている
このはだの機能は、本当に、熱を正しく感じてそうかんがえて、居るのか
どこかで失敗して、その情報が遮断されているというようなことは、本当にないのだろうか
私は、ヒーターの送風口に、顔を近づける
「何をやっているのだ」と、背後で聞こえるが
気にしない
確かに暖かい
そして熱いほどだ
振り返ると、相変わらず、そこには、濡れている
私がいる
「あんた、何で乾いてないの」
女は、むすっと何も言わない
「あなた、一番はじめにかってもらったプレゼント覚えている」
人によって内容は違うだろうし
それが何を指すかも曖昧だ
しかし、私の場合、もっとも覚えているのは
クマのぬいぐるみ
「メリー」さんだ
私が、保育園の時
近所の骨董屋に、捨て値同然で
売られており
そのあまりの気持ち悪さに、
親は買ってくれなかったが
私がどうしてもと
頼み込んで、ようやく
三年後に、私はそれを誕生日に、手に入れた
その無駄に大きな顔は、両目のボタンが、取れたのだろうか
代わりに片方だけ、良く知るメーカーの物が代用にくくりつけられており
毛はふかふかで、分厚く
その中の、中身は、まるで、ちいーさな、発泡スチロールの粒が入っているような
感触が、抱きしめると、ぎゅうぎゅうと
むぎゅむぎゅ
いやなおとを、出す
私にとってプレゼントとは、それであり
私の視線は、相手に向けられる
「鉛筆」
違う、やはり、こいつは、私じゃない
「あなた、私じゃないわね」
私は、一歩彼女から距離をとる
「何を言っているの
私は、おまえだ
おまえが、好きな男子から貰った鉛筆
相手は何にも考えていないだろうが
それでも、おまえは、それを大事に、取っているだろう」
確かにそれは確かである
そう言えばそうだ
しかし、それは最近である
そうなると、こいつは、最近私の貰った物を見ていて
それで、推理したというのか
「違う、私が今思い描いたのは」
相手は言う
影になって顔が見えない
私の言葉を遮り
「メリーさんだろ」
女はいったが、暗い中
本当に口を開いて言ったのか
私には確証がもてずにいる
「それじゃあ、何で、そう言わなかったのさ」
私は、彼女に言う
これは、問いである
問の答えが、何個かにわかれたとき
後に、別の答えがあり
それが出たときに、前に作っていた答えが
その答えが正しいかどうかに関わらず
それによって、答えが変わった場合
もしくは、答えが複数合った場合
もしくは、一番はじめに場所が、
答えにより答えが変わった場合
答えが一つなのは、どうせ、答え合わせが、しにくい
とか、一律に、教師側が、理解できない
とかそう言うことになり得ないだろうか
そうなると、もっと答えがあっても
いや、それ以上の答えなどごまんとあっておかしくはない
しかし、私は、それを、メリーさんだと思ったし
相手に対して、それを、求めた
しかし、今更考えてみれば
そうとも言いきれない物が、出土した
「ねえ、あなたは、その答えを聞いて、どうするつもりだったの
あなたは、私が、答えを、答えてしまった
それは、あなたが勝手に私しか知らないと
自分で考えているだけで
その二つは、案外
周りの近しい人間に聞けば、すぐに思いついたかもしれない
でも、どちらにしても、私は、あなたが答えそうな物は、これだと思うし
そして、自分でもそう思った
つまり、あなたと私では、考えまでが繋がっているわけではない
引き出しをあけて、一つ選べと言われて
本当にそれが、合致しするか
もしくは、好きな物はどれ
ときかれたら変わるかもしれない
そこに、意味が見いだされ
勝手に、改変しても、私は、それを予想できない
改変するかもしれないとは、思っても
それを口に出しても、改変が変わるかどうかは不明だし
それにたいして、罰金などの処置をよう居れば
もしくは、話は、変わるかも知れない
どちらにしても、あなたが本当に出したいという答え
私とあなたが、同一かどうか
それを出す意味は、あまりないんじゃないかしら
あなたは、それを知ってどう何が変化して変わるというのかしら
私は、あなただし、あなたは、私のはずだ
しかし、全く同じように見える生物でも
その生物から見たら
その差異は大きな物なのかも知れない
私たちが、人と自分は違うと考えていても
ほかの生物が、人間を見たとき
その差は、どこに感じるのかしら
外見 行動 その他
あなた、私をあなたと似ていると言ったけど
それをあなたは、説明できるの」
私は、写真が有ればと思うが、しかし
先ほどもいったが
それはあまりにもうるおぼえなもので
似ていても、それが本当に、確証足り得るものではない
「じゃあ、好きな食べ物は」
即答するように
「サクランボ・パフェ」
正しい
確かに正しい
ほかに、オムライスやたこ焼きひやしちゅうか
冷やし焼きトマト焼き鍋などがあるが
しかし、どうも、正しいらしい
それも数打てば当たるように
たまたま知っていたかも知れない
これはいわゆる
藪から棒
いや、破れかぶれに相当するのかも知れない
「私が、今月行った公衆トイレの数」
「三回」
正しい
それも、たまたまなのかも知れない
宝くじに当たるような確率が
そこに存在しており
今までのすべての行動が、
たまたま私にそう見せているだけで
実は、裏側は、全く別のことが起こっていたとして
それを知らない私にそれを、知るすべはあるのだろうか
「ねえ、あなたが私と同一だという、確証は、どこにあるの」
私が、聞く
もう暗くなっても良いはずだと思うが
空は相変わらず、暗く
それ以上にはならない
時計も分からない
「あなたの顔が、私にそっくりだからよ」
何を言っているのか
「あなたは、さっき、私に、同じ事を言ったけど
でも、あなたは、私とあなたの顔は、違うとしっかりと言ったはずよ
それなのに、あなたは、私の顔が、あなたとそっくりだというの」
彼女は「そう」と、うなずくと
ヒーターにあたるが
まるで暖かそうに見えない
湯気が出るわけもなく
なんなら、テレビを見ているように
「あなた、暖かい」
私は、少女に聞く
「ええ」
彼女はそう言うが、服が乾くそぶりもない
「貴方の顔の、どこが、私と貴方、同じだというの
貴方はいつそう思っていたの
貴方と私の違いって何」
質問が積み重なるが
それはまるで、殴れば殴られ返されるように
無意味に階段を重ねている感覚さえ合る
すべてが無意味なのではないか
黙ってストーブにでも当たっていた方が、よほど賢いのではないか
もしここが密閉された場所であり
食料もトイレもなければ
私は、ここで無駄に、頭や体を動かさず
冬眠したクマのように
出来るだけ動かないことを、優先した方が、いいのではないだろうか
私の考えは、意味をなさず
ぐるぐると、ストーブの炎に、あぶられるように
風で熱しては、揺れている
彼女は、ふふふと、笑うように
暗闇の中で、口を、ひきつらせて言う
「貴方と私が、同じ事は、間違いがないし
それは、自分自身に対して、
昨日とかおがちがうからと言って
別人な訳ではない
それは今でも、過去でも、未来でもそうだ
骨と赤ん坊
両方が、同一人物なら
それは、形は、違えど
同じ物と言うことになる
ただ、それは、概念的なもので
もし、脳味噌のみが
その人間だとしたら
同じ細胞で、
いや、外見のみが、全く同じ物が、存在したら
私という存在は、どこにあるのか
しかし、私は、貴方が生まれたときから、そこにいたし
現に目の前にいる」
ちょっと待て
「と言うことは、私と貴方、どちらかが、脳味噌の無い、ノータリンと言うことにならない
同時期に、私たち二人が作られたとしても
その片方に、意味がない
それこそ、一人の経験が、もう一人に
蓄積されるような装置があったら、それなら、どちらかが、偽物といえるんじゃない
それは、その生き方が、本物で有れば、どちらとも言えないけど
どうなの、貴方の記憶は、私の記憶なの
どうなの、経験したの
それとも、経験したかどうかさえ分からないほどに
それは、非常に、いえ、見分けがつかない
もしくは、見分けがつかないように
または、私の知っている記憶と
違う手順を踏んで、それを思い出しているせいで
私の考えていることと、貴方の考えていることが、全く違う
しかし、意味という
言葉という物が示す
ゴール地点が、同じように、感じるようなもので
それ故に、なぜか、同じように、聞こえるとか」
私は一気にまくし立てるが
今日、何度目か、分からず
彼女が、首を振ると
雨粒が、ぱらぱらと落ちる
そう言えば、彼女はなぜ濡れているのだろう
何か、記憶にありそうだ
「貴方の言っていることは、すべて違う
私は、貴方であるし
貴方は、私、だし
それに違いはない
ただ、同一の定義は、非常に難しい
それは、空想場の机の上で有れば、容易いが
しかし、実際問題
私と貴方の同一化という物は
魂なのか
それとも、肉体なのか
人はほんのわずかな時間で
その体のほとんどが別の物へと置き換わる
ゴムが劣化しないように
それを、継ぎ足すのではなく
新しくするように
しかし、それを、抜きにしても
貴方と私が、直線に、繋がって居るとも考えにくい
貴方という存在が、本当に、私なのか
それが違う可能性はある
しかし、世間一般から見れば、それは、百パーセント
私であり、あなた
しかし、そこを、細分化し始めると
不安が残る
なぜなら、未来と過去という物が、進んでいるので有れば、それは、変わるものであり
貴方の知っている行動と
私が知っている行動
貴方が今まで、動いて居たことが
すべて私とシンクロする可能性はあるのだろうか
それは、私と貴方が、すべて、同じであり
そのすべてが、固まった決定事項でなければならない
つまり、貴方と私がここであう
と言うことは、それ以外もあってもおかしくはない
しかし、会わない物など、存在しない行動をとったのだから
それは、会わない以外は、選ばなかったのだろうか
この行動は、私の意志ではなく
まるで、熱いから、涼しくなるように、行動した
魚の産卵時期は、魚ではなく
時期が土地が生き物が天候が決めるものであり
それは、私が、そうしたのではなく
そうしたから、残っているのだ
貴方が、私だという事は、私が知っているが
貴方がそれを認めないことを
それは、貴方が知っている
それ故に、この問題は、解決しているのだ
決定事項のように」
分からない
そう言いきった彼女が、何を言いたいのか分からない
いや、何も言いたくないのではないだろうか
それなら、この場所は何なんだ
それを、解決するための
情報を、得ることの方が、重要なのだろうか
彼女もこの場所も分からない
なら、分からない彼女の言うことは、分からないのではないだろうか
それは、この空間が分からないのと同じように
部屋は暗く
電気はつかない
ヒーターは、ついている
しかし、本当に、ついているのかは分からない
しかし、部屋は暖かく
しかし、彼女は濡れて居るまま乾きもしない
私はこの部屋で、雨が降っていると思ったが
しかし、それは、絵が、暗く
雨が降っているように見せているだけであり
その正体は、音がそう聞こえるせいで
実際のところは分からない
そう言えば、雨音のパターンが
先ほども同じタイミングで同じ音を聞いた気がする
それは、録音された、嘘の雨の音を、流している証拠だろうか、しかし、耳を澄ませても、それが分からない
いや、それどころか、これが、人間が作り出した物なのか
それとも、実際に雨音を録音した物なのか
それだって、ここで録音したものか
それが、海外で録音したものか
海外で録音した物を、別の場所で録音して
それをここで、ダビングしたとか
それも、私には、判別できない
しかし、雨の音は相変わらず
降っている
鍵は開かない
外が、壁の場合もあるのだろうか
たたいてみても、冷たいガラスの感触
外には何があるのかは、分からない
廊下も同じである
「ねえ、外はどうなってるの」
私は、ヒーターを見ると
いつの間にか、誰もいなくなっている
誰もいない
誰もいない教室
私は、あたりをくまなくみる
ロッカーのなか
教壇の下
机椅子
すべて調べた
屋根裏があるのではと
持ち上げようとしたが、持ち上がらない
ヒーターに当たってみるが
温風が流れてくるだけで、
彼女が現れてくることはない
水は、乾いたのか
木には何も残っては居ない
私は、考えた
どうする
廊下に出てみるか
何かを考えてみるか
腹は減らない
眠くもない
暖かくも寒くもなく
ただ、薄ぼんやりと暗く
存在しないような外は、今から、土砂降りのような
雨が降りそうな、
雨雲と黒が、交差して混ざり合うような、激しい空だ
雨音がする
どうする
ふと、足元を見る
先ほど彼女が立っていた場所だ
そこには、雨が溜まっている
少しシミだと
離れたときには思った
しかし、それは、液体であり
確かに始め彼女が居たように思える
「おーい」
私は、部屋に言う
しかし、教室は、静かに静まりかえっている
もしかしたら、先ほどの答えのせいで
彼女は消えてしまったのか
それともはじめから居ないのだろうか
私は、その黒い水たまりを、のぞき込む
誰もいない教室に
小さな子供の顔が、薄ぼんやりと、反射して写る
鏡のようだ
その円形の崩れたような、それは、
表面張力のように水をわずかに、浮かせ
あの人が、かなりの間、ここに立っていたせいだろう
木が水を吸わず
そこに、溜まっていた
あれ
私は思う
その姿には、見覚えがある
確か、子供の頃の自分だ
その顔が、私を見ている
のぞき込んでいる
そんなバカな
それはまるで、記録ビデオを見ているように
しかし、映像だからそれは、はっきり写るだろうが
しかし、それはまるで、話しそうな
いや、現実として
そこにいた
それは、ビデオや記録ではない
生で、そこにいる
いや、本当だろうか
こんな妙なところだ
それが、映像だとしてもおかしくはない
水たまりの反射など、それこそ、古いビデオと大差はない不鮮明さだ
其れは、私自身であっても、
私自身ではない
しかし、私の記録だ
其れが、映し出されたものだとしても、何らおかしくはない
そこに、自分が写っていないのも
見るかげん
もしくは、これが、水たまりに見えるようで
実は、水たまりに見えるような、テレビかモニターのような物だろう
足で、揺らすと
波紋がたち
私の見ていた白い顔が、揺れて消える
水だ
水のような別の物質であり
其れは、最新鋭の技術で
そのように映し出されているのかも知れないが
そうでなければ、そこに映し出されている物は
私の顔のような、気がした
もし、私が、写っているのだとすれば
どうして私の顔は、小さいなろう
幼いのだろう
あいつは、私が私と同じだと言ったが違うとも言った
しかし、私が幼い理由が分からない
私が、幼ければ、記憶が
そこで、私は、こんな場所に来たこともなければ
鉛筆だって、つい最近貰ったことであり
この場所でではない
まだ、小学校にも行っていない
しかし、あの女は、
あの女性は、中学生くらいに見える
と言うことは、あれが、将来の私だと言うことか
しかし、分からない
最近私は、雨に濡れたことがある
その恰好は、まるで、彼女のようであり
着せて貰った制服に酷似している
ちょっと表に言って
見て貰おうと思った帰りに
服が、びしょ濡れになったのだ
いや、そうだとしてもおかしいではないか
あれは、私なら、私と同じ、顔でなければいけない
私は将来、あの顔になると
何となく考えていたが
其れは、私の妄想である
現実ではない
其れは、空想であり
未来ではない
あれは、何なのだ
なぜ、濡れて立っていたんだ
ここは、どこだ
私は、誰だ
本当に、私は、私なのか
外は、相変わらず暗い
ただ、雨音が、教室内に響く
病院内に、包帯で、ぐるぐる巻きにされた少女が寝ている
ほかに患者はおらず
機械と清潔さが、表面を、覆う その場所で
蛇腹のホースが、口に付けられ
横には、機械が、段ボールのように、数台積み重なっている
其れ以外に、人間らしい物はない
彼女の目は、二度と開かないだろう
彼女が自分の顔を、見たことなど、もう存在しない
病院を、ぬけだし
貸してくれた服を着て
病院を、出たとき
彼女は、うまく歩けず
雨の中
倒れ
放置された
彼女は、自分の顔を知らない
しかし、彼女の頭の中に、其れは存在している
彼女は、その手による感触により
相手の顔
自分の顔を知っている
その骨 肉 皮膚
其れが、記号となり
其れがどう変化していくかを、知っている
しかし、神経が、弱くなった
彼女が存在しているのは
記憶の断片が、存在する密室
それも、雨により
体温が低下し
脳の記憶を、司る部分が、幾分か死滅し
穴の開いたように、消えていく
彼女は、機械の中で思う
自分は、誰なのか
機械は、物言わず動き続ける
生物の隣で
目覚めることなく動き続ける機械
其れを鼓動というのか記憶というのか
無機物に接続された其れは
生物から原子へと変貌していく




