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深泥駅 2

へ、続いていると言うんですか」

先輩は、実にひょうひょうと、のんべんだらりん

こちらを見て

言う

「ここら辺は・・」

「先輩」

「何だ」

ひどく不服そうな声を

私に投げかけるが

「後ろ田圃に落ちますよ」

っえ

といって、斜面を転げそうになる

リュックを引くようにして

地面に戻す

「危ないところでしたね」

何か、信じられないとでも言うような顔をする

「君は、声をかける前に、行動したらどうなんだ」

行動しない方が良かったのではと思ったが

黙って歩く

「まちたまえよ、話を聞きたいんじゃないか」

別に良いが、歩きながら聞くことにした

「ごほん ここら辺では、木をはぐと

残った木材が、存在する

それをしようして、家を、建てるのであろうが

山奥のせいで

それを、輸出するようなことはできない

それ故に、この村では、それを、炭にすることで

それからも財源を得ていた

この村では普段、冬でも薪を使うことがない

それがなぜか分かるかい」

何度も質問が来るが

今回は、後ろ向きではなく

渋々と言った風で

前を歩きながら

私に聞く

なぜかと聞かれても

「温泉が出るんですから

それを使ったんじゃないですか

雪国では、道路に水を流すことで

雪かきを楽にしていると聞いたことがあります」

せんぱいなはぜかうなずきながら

「違うが、にているし正解に近い

君は、おんどる小屋と言うのを知って居るかい」

いきなり、なぜか、小屋の話に移る

それが、近いと言われたからには、温泉に近いのだろうが

だとすれば、それが、温泉施設というわけでもなさそうだ

それならそうと言うはずである

しかし、何の施設であろうか

「わからない君のために言うのであれば、

最近りざきゅれーちょん なる物が、この世の中に、

腐るほどごまんと増えたそうじゃないか」

何を言っているのかわからないが

「それは、リザレクションじゃないんですか確か

デトックスとかかいって」

何を言っているんだおまえと言う顔をして

いつの間にか横の人間は立ち止まりこちらを見ているので、仕方なく横を見る

都会ならじゃまな顔をされるか

完全無視で、人混みが割れるだろう

女は、妙に神経そうに、口をとがらし

ビヨビヨとけたたましくさえずる

「そうじゃない、そうじゃないんだ

リザクレージョン リザードン

ちがう

そう」

「リザレクション」

地獄であった敵相手のような顔でこちらを見て言う

「それは とある小説に出てくる復活と言う意味だ

いや、更正とでも言う意味か」

「じゃあ何なんですか」

私は頭がこんがらがりそうになりながら

それでもそれ以上こんがらがらないように

こんがりと焼けたトマト焼き鍋焼き鍋のように

爽快な吐血似た答えを

以前の言葉尻をあわせ

考える

「小屋 しかし 温泉ではない リザードン 火

暑い 何か、リラックスするもの・・・

そうか、リラクゼーションだ」

ああ、それそれ、と、曖昧な返事をして

手を打つと

更に先を続ける

「つまり、その りらっくのりくまの効果により

人は、心身ともに、メルヘンへと旅立ち

いよいよ現実との境目で悩み

ヤンデレヤ ツンデレ そして最終形態 政治家へと進んでいく」

僕は考え事をしながら考える

なにを考えたらいいのかと

いや、せっかく旅に出たんだ、悩まない方が良いに決まっている

気むずかしい客か

笑顔の客なら

出迎える方も

笑顔の方が良いに決まっている

ただ、野生動物は、目も合わせちゃいけないし

笑顔は、殺意の現れと聞いたこともある

それを許容するとは、人類とは、実に修羅におぼれた

快楽生物としか言いようがない

「で、そのサウナが、どんな関係なんですか」

ギロリと音がしそうな眼でこちらを見る

「貴様、知っていたのか」

先輩の答えに対して返答する

「いえ、言葉がわからなかっただけで

そのリラックスの動詞にたいする

言語としてのリラクゼーション

と言う和製英語

海外では、リラクセーション

と言うくらいは、辞書にでも書いてあるはずです」

彼女は言う

「どこのだ」

僕は、さあ、とくびを傾げる

「それで、どんな話か簡単に言っていただけますか」

僕は、長い坂道を歩く

左右には、田園が広がり

いったんが、それそれあり

その向こうには、森なのだろうか木が広がっている

こういう坂道の場所にある田圃を

全て棚田というのだろうかと疑問に思う

「なんだか、いい知れない物があるが

つまり、そのリラクゼーションとしての効果に

癒されるという物がある

そして、その中には、先ほど言ったデトックス

つまりは、老廃物を排出するという

いわゆる汗を流すという

物理的放出

それはまるで、体を傷つけて、肌を傷つけ出血させることで、新しく肌を作り替えたり

運動をすることで

体のサイクルを早めたり

その延長線上で

汗を、暑さでかく

つまりは、砂風呂やサウナ

その類に

地熱と言う物が存在する」

僕は思う

これだけのことのために、この人はいったいどの程度

いい加減な言葉をつなげたことだろうか

きっとクリスマスや誕生日会で使われる

紙製のリング程度には、紡がれたのだろうか

「それで、その地熱が、何の意味があると言うんですか」

首を振りながら、彼女は、言う

「おんどる小屋とはその地熱を利用して

その上で、寝ることにより

心身の回復を考えた施設なんだ つまり」

そのときは以後で声がした

「えーですので、この雪深い雪国に置きましても

地熱を利用することで、ここら辺一体は、雪かきも必要ない

実に、不思議な、村なのです

皆様、左にみえます田圃は・・・」

観光客を連れた、旅館の方だろうか

僕たちの片側を歩いていく

「それで、先輩、何の話でしたっけ」

無言で歩く、先輩を端に

ゆっくりと斜面を歩くと建物が見えてくる

「この村は、雪かきが不要

と言うことから雪に嫌われている

とも言われ

昔、雪女を、殺したのではとさえ

ささやかれていたんだ」

僕は疑問に思う

なぜ、伝承に、残っていないのだろうか

と言うか、その元はどこから聞いたのか

「まあ、あまり楽しくない話という物は、

書き換わったり

存在自体が消えるなんて事は、差分にあるものだ

それこそ、小学生が、テストの答案用紙で

焼き芋をするくらいには」

そんなことをする小学生は、居ないことだろう

「それで、それだけなんですか」

僕は聞く

「見えてきたぞ 白綾館

今晩泊まる温泉宿だ」

彼女はそう言うが

それは、温泉街特有の感じに

突如現れたようなごみごみした感じに

合う建造物である


玄関は、ガラス張りであり

内部にはいれば、

女将さんらしき着物を着た女性が

玄関におり

我々は、挨拶をしながら、チケットや料金を支払う

部屋に案内される前に

「それで、掛け軸は、何時頃、ごらんになりますか」

薄ピンクの渋い落ち着いた色の着物を着た

女将さんが、そう言う

先輩は

「あああ、そうですね、部屋に荷物を置いたら

すぐに向かいます

どちらへお伺いに行けばよろしいでしょうか」

まともな受け答えの後

女将さんが

「それでは、荷物をこちらでお運びしますので

私がご案内します」

そう言って、さっ、どうぞ

と、絨毯の引かれた

玄関から一段高い建物内へと消えていく

二人してその後を必死に追いかける

ホテルは、四階建て

各部屋に五部屋

その他一階には、大浴場 宴会場

があり 食事は部屋に運ばれるらしい

「それでは、こちらへ」

通路は、薄暗く

足下と天井に

暗めの電気がつき

壁には、名も知れぬ絵描きの額が

とんとんと飾られている

「女将さん」

なんでしょうかと、先輩の声に

振り返る

中肉中背の体なのかで

白い白粉が振り返ると

闇の中に

生首が浮かんでいるように思えた

「その 掛け軸ですが

どのような由来があるのでしょうか」

女将さんは、多少ゆっくりに、なりながら

話を続ける

「私も、詳しいことは、伝えられていませんが

しかし、何でも、村ができた当初から、受け継がれており

私でちょうど五〇代目と言うことになります」

かなり古い

「時代で言うと、戦国時代と言う感じですかね」

何となく、ホウネンや親鸞の時代だろうか

「まあ、村中で、回るものですので

一応

建物がしっかりしているという事で

ここ何回か

うちがあずかって居るだけで

誰かの所有物という風ではありません」

先輩が、階段を上りながら言う

「なにかいわれはあるんですか」

女将は、階段を上がりきると

二回の廊下を進む

「いえ」

とくびを傾げ、中程まで行き

ある部屋で、足を止めた

そこは、客室というよりかは

和室のようなもので

十五畳ほどの広さがあり

ちょっとしたお茶が出てきたり

おどりのけいこができそうだ

「あちらです」

蛍光灯の白い明かりの下

部屋の隅にかけられたそれは、普段からかけられているようなものではないらしく

床の間ではなく

壁の上の境の木に

留め具があり

そこから吊されていた

そこには、白い女が

立っており

みた感じ、幽霊画のようであるが

不思議と寒々しいイメージを本体から感じず

なおかつ、足が、霧状の背景で、薄ぼんやりとであるが、うっすらと足首が見える

よく見れば、髪も白い

老婆であろうか

「不思議な絵ですね

ブルブルと言う妖怪のようにも見えますが

しかし、髪が、ストレートなのと

足があることが、一致しません

そしてなおかつ

この絵の女性は、若く見えます

そう、考えると

これは、冬景色に、幽霊という

比較的珍しい題材に思えます」

女将は、並んで見ているが

何かその他に、言うこともないらしく

その絵を見ている

「裏面を拝見しても」

先輩が聞くと

「ええ」

とゆっくりを裏返す

そこには、下地はなく

額のように、絵が、下地となるべき場所をくり抜き

そこに貼られているのが拝見できた

その他に、署名もなく

特に何の変哲もない物に見える

「不思議な、装丁の仕方ですね」

女将は、ほほえむだけで

またしばらく

絵を見せていただき

私たちは、何枚か写真を撮影した後

部屋に帰ることにした

部屋は、全て、和室であり

先ほど通された

部屋の半分ほどであろうか

それぞれ別の部屋であり

荷物が先に置かれていた

僕は、とりあえず

着替えを持つと

温泉に出かけようとしたとき

ドアをノックする音が聞こえる

先輩もお風呂だろうか

そうかんがえたが

きたときと同じ服装であり

なおかつリュックサックを背負っている姿は

忙しなくて仕方がない

「どうしたんですか、僕はこれからお風呂に入って

仕事の疲れを流そうかと考えているんです

先輩の趣味は、先輩一人で行ってください

僕を、コーヒー牛乳が待っているんです

ヒャホ」

僕の心の声が、叫んだとき

彼女は、冷徹な、かき氷機のような笑みを浮かべ

「君は一つ勘違いをしている

温泉には、牛乳類のもは、置いていない

いや、置いているところもあるが

それが示すおおよその所

牛乳の出没量がもっとも多いのは、姿を消えていく

化け物小屋 ストリップとならび

銭湯も、その並びに類じる

そして」

何か意気込んでいるが

まだわからないじゃないか

さっきも言ったとおり

その絶対数は、多いかも知れないが

絶対ではない

土産物屋のカオスを考えたら

銭湯に、ある確率のある物が

温泉にないなんて事は、絶対数として言い切れないではないだろうか」

しかし、僕のあんあんたる心配をよそに

それは、落雷でも

その指に宿すように

避雷針のように

突きつけたのは、暴雨吹き荒れる

屋上の上空ではなく

三階で、部屋の前で、先輩と立ち話をしている

僕の胸へと、向けられている

「何なんです」

私を侮って貰っては困る

先輩を何時侮ったのか敬ったのかは、僕自身さなかではないが

「私は、もうすでに、温泉を、周り

売店に行き

何なら、女将  従業員数名

さらには、宿泊客 近所のご老人にまで、聞いてみたが、そのような物は、この村広しといえども

存在しないと言う」

僕は、絶望と浴衣を、一端置いて

考えてみることにした

「それで、何をしに行くんですか」

一応の、目的は達成し

後は、この先輩が、調べてきたであろう

この村の史跡や歴史を、回ったりするのだろう

残念ながら、明日には帰らなければならない

有給ではなく

一泊二日

昼頃には、電車に乗らなければ

明日、無断欠勤一歩手前の独白をしなければならなくなる

せんんぱいは、何も言わず

廊下を歩き出すので

仕方なく、荷物を取りに行き

代わりに今まで持っていた類を、リュックのあった場所に置いて

部屋を出て鍵を閉める

四角い、あめ玉のようなずっしりと重い

アクリルであろう、鍵番号が振られた

二片が正方形の長方形の大きいストラップつきの鍵を持ち

先輩の後を

ふかふかとした廊下を、独特の宿屋のにおいをかぎながら

泳ぐように沈み込むように、後を追う


村の大きさは、さほど大きくない

見渡そうと思えば

一片から全てが、建物から把握できそうな程であり

直径二キロもないだろう

山を含めれば、その規模は、膨大であろうが

一個人の人間が

少なくとも、僕なんかが、居られるのは、ほんの

水槽程度の作られた場所のみである

先輩から渡された紙には

樹皮繊維織物の制作方法が書かれており

その他の織物の材料、我の眉から作られる絹

草の実から作られる木綿 麻の繊維から作られる麻布

そして、珍しい樹皮製の織物が

最後に説明文としてある

この織物は、北海道のアイヌが、主な生産地

というよりも、作っていたものであり

それは産業という物ではない

しかし、そこから、受け継いだのか

その詳細は、良くは、わかっていない

しかし、この村が、できる前

木こりの前に、現れた神が、温泉の中で

その制作方法を、教えたという

そこから、この村は、発展することになるらしい

しかし、そんな歴史ネットを見ても全くでてこなかった

「ネットだけじゃ、載っている情報しか出てこない

これは、偏食どころの話ではない

変質と呼ぶんだよ

特に、伝承の類は、人が移り変わることが多く

人との関係が、きうすになり

某動画サイトにより

人よりも合ったことのない見も知らない人間を眺めるという

変態行為に全人類の殆どが

時間を消費しているそうじゃないか

これは何か、発展という地獄への自殺超特急に

乗ってしまった人間が考え出した思考停止による

これ以上行動させないための時間稼ぎかい」

僕は知っている

不思議探訪

と言う

平均再生数5

と言うサイトを運営している

張本人が

目の前にいることを

僕は、知っている

いや、予想として、その殆どが・・・

「何だ、思考停止者め

その細切れのただでさえサイクルのない頭を

私のように回してみたらどうだい」

目が、ぐるぐると回る

それを、まねろと言うのか、この方は

「それで、どこで見つけたんですか」

リュックをガサゴソと出し

中から、食べ物以外で、初めて、無機物をみた

その固形物は、やはり食べられそうではなく

三十センチ二十センチ弱

と言う厚手の装丁をしたハードカバーの本であり

質感は、布のような表紙だ

その濃い緑の本を取りだして

付箋を開いて、僕に渡してみせる

「これは」

そうきく僕に

見て見ろと

表紙を、顎でしゃくる

コミニケーション能力という物がこの人にはないのだろうか

僕は、本に手を挟み

表紙を、表にしてみると

金色の箔押しで

繧字村風土誌

と、書かれている

確か、合併前

そう言えば、そこまでは、調べられていない

そうか、そう言う言葉を使えば

しかし、必ずしも先ほども言ったとおり

出てくるとは限らない

これは、神経衰弱のようなものだ

出てくる情報は、ほんの一部であり

なおかつ

そこに、百人一首やタルトカード 散花を

合わせても到底足りないだろう

情報とは、それ故に

どこまでも曖昧であり

仕方なくまとめたのが科学であり

それは、絶対ではない

あくまでも、文字列にできる範囲での回答であり

継続できる解答ではない

自然に合った取捨選択をしている現実にたいして

それを、捨てれば

結局は、その矮小さは、人間の非力さを

実感させるだけである

継続できない

それこそが、人類の無能さを端的に言い表せている

どれだけ、個人が尊重されようとも

自然の前では、それは、わがままでしかないのだ

「古本屋で、通販で買ったのだが」

何だろうか、電脳社会を批判しているような

人間であるが

通販の魅力にはあらがえないのか

小規模のプランクトンのような

生産が否定され

土台が揺らいでいるような

現代に置いて

こういう値段競争は

さらなる悪化か

それとも、技術の向上か

人間社会の小さな水槽の中では

そのルールは通用しても

外部フィルターにまで、影響は、及ぼせまい

「君は、先ほどから、右翼か左翼かよくわからない

旗振りをしているが

実際問題

古本という物は、買おうにも買えない

それ故に、こういう場所で購入するのは

いかんせんともしがたい

それに、最近では、形ないものにたいして

永久的な

著作権を与える

システムが、開発されていると言うじゃないか」

何だろう、急に、ラジオに発展させられた

老人のようなことを言い出す

本当に意味が理解できているのだろうか

「古本には、印税がかからないが

しかし、それもそのうち消えることもあるだろう

まあ、やすいに越したことはないけど

知っているか

大きい本は、値段の割に

場所代がかさばるから

二束三文らしいぞ

豪邸を建てたら

私の本を寄贈して

図書館にしてやろう」

何ともいらないお誘いである

彼女の部屋を、見たことはないが

大学の民族研究室に、置きっぱなしになった

不の遺産は、後々の後輩の

勉強スペースを圧迫し

これこそが、公害

いや、ろうがい いんにゃ、後先考えない

物の後に続く

総理の後の国民ではなかろうか

やはり、国は、もう少し最小単位で考えるべきではなかろうか

大きければそれだけ、手が回らない

手の回らない田圃など

それこそ恐ろしい物はない

「そこで、買ったのだが

さすがに、教育委員会が、やるだけのことはある

人間的問題は、人間にはあるが

しかし、文字通りの事をやらすには、ある程度

この堅さは必要となる」

一人がだめでも全てがだめなわけではない

しかし、まともな人間の割合は

果たして一割以上であろうか

「まあ、全てを網羅することは、はなはだ難しいが

しかし、ネットや、そこら辺の民話週

よりかは、幾分もましである

何といっても、そこに住んでいる人間が

その歴史を書けて制作するのだ

それは、自己欺瞞ではなく

周りの為に

下手なことはできない一生に一度

それが残す影響は、誰も見なくても

記録としては重要である」

この手の本は、

殆どの市町村に存在している

そう言う意味では、かく図書館に行けば、手っ取り早く、その周辺の植生伝承を、調べられる

「それで、何か、お気に召すような物がありましたか」

私は、無いのだろうかと、思いながらも聞いてみるが

思いの外

彼女は、湯気がもうもうとあがる

大釜と呼ばれる

樹皮を、煮る場所の前で

「いいや、なかなかおもしろい」

と、硫黄香る湯気の中

そんなことを言う

「どこら辺ですか」

彼女曰く

「ここら辺で昔から雪女の伝承がある

いや、実際には、合併された場所

つまりは、ここが、この名前になる前

この場所には県と言う名前が付けられていた」

「県ですか それは」

「ああ、都道府県の県だ

君も知ってのとおり

県という字の成り立ちは、

今現代にしてみれば、あまり、気持ちのいいものではない

つまりは、吊された首と言う意味だ」

僕は、知らないことを言われたが

特につっこみがないようなので、せいししておく

「これが、いつつかわれたか

不明であるが

しかし、もし、これが、そのなの意味する事を

含んでいるのであれば

何かしらの儀式

もしくは、汚れを含んだ場所だった可能性がある

例えば、処刑場であったりもしくは

差別部落の可能性もある

まあ、処刑と言えば石川五右衛門の釜茹でであるが

あれは、油でもお湯でもなく

そのまま炒り殺したと言うから

この場所の場合 お湯とは関係ないかも知れないが」

石川五右衛門は、意味が違うし

なぜ出てきたかについて

一応説明したが

それでも、いや、だからこそ、別に置いておこう

「つまり、村の一部は、本来別の物であり

それが、妙な怪談じみた物を歴史に持つかも知れないと

言うんですか

じゃあ、それは、今現在

どこなんですか

古地図でもないんですか」

ふふふ

と不適に笑う

何のために買ったと思っているんだい

もちろんあるよ、この本の中に

それを見たから、君に話したんじゃないか」

何やら、不服だが

しかし、少々興味がある

「見せてくださいよ」

いつの間にか、取り返された本

「ふふふ、見たいかね

古本の価値を思い知りたまえ

本は、無駄ではないのだよ

ありがたく

私がわざわざ購入した

この歴史資料を見たまえ」

彼女は、ページをめくりわたすが

どうも、この場所の現在の村と

多少形が変わっているせいで

妙にわかりかねる

更に、右左に分かれるように

文字がその向きにかかれており

山なのか分かりにくい

「それで、その先輩が、言う

忌み地ってどこなんですか」

まあまあと落ち着かせるようなことを言う

「この場所に、雪女の伝説があると言ったが

それは、ここなのだよ

この村の最上部

この大釜があるこの場所の周辺に

県と言う名前が付けられていた

いや、書かれていた

見たまえ

この湖のようなものこそが

今現在と重なり合う物がある」

そう言って、そのまま見せられたが

確かに墨か何かで書かれている

「つまりは、ここが県と言う場所であったはずだ

もしそうなら

そして、この場所の物語に

雪女が出てくるが

「ただ、実に奇妙なのだよ」

どこら辺がですかと、僕は訪ねる

「この雪女は、村人を襲うので温泉に、落とされ

そこに封じ込められ

また皮が剥がれ

それを売ることで村人たちは

心を慰めた」

と書かれている

そうなると、この場所が、その歴史の舞台となるが

一見して、それは、この村の産業

樹皮繊維の織物の作業の一つ

ひょうの皮を、剥ぎ

煮る動作と重なり合うのではないだろうか

しかし この場合

なぜ、雪女は、悪さをしたのか

ここが、妙に感じてしまう

君はどう思う」

地図を見比べると

確かに、それを中心に位置を考えると

パンフレットと似ているように思える

「先ほど差別集落

と言われましたが

差別というのは、人と違うこと

と言うのもあったんでしょうが

一つに、職業があります

例えば、食肉加工に関わるもの

例えば、旅芸人もそれに加わります

少々違いますが

天狗も渡来人の姿をもした物なんて言いますし

そうなると、この場所に、もしかすると

アイヌの技術を伝授された

もしくは、それに近い物が、住んでおり

それを、差別するために、そう呼んだのかも知れません

とくに、狩りを、するようなことが有れば

昔で有れば、捧げ物として生け贄を、備えるという物は、ごくふつうの事でしょうし

それこそ、狩り自体、禁止されていれば

動物を殺す事で、禁忌となったはず

もしかすると、毛皮を、剥いだところを、

別の物へと生まれ変わったとしたのかも知れません

温泉という

一種 地獄にも似た奇妙な光景は

そんな神秘思想を、連想させます」

ふむふむ

と、うなずくが

その手にはいつの間にか

うまい棒が握られている

人の話を魚にする程度に

馬鹿にしている

「確かに、それも、有りそうな話だ

だが、雪女の部分はどう説明する

それに、幻想的だが

それなら温泉に沈める理由はどこだ

悪さを、したから沈めたと言うが」

僕は少し考えた後に

「先ほども言いましたが

部外者とは、村としては、あまり好ましいものではない

そしてなおかつ

アイヌは、他の血が濃いとも聞きます

例えば、ロシアにちかいことから

その血が強く混ざっていれば

肌の白く

目の色の青い物がいても

おかしくなかったでしょう

それは時に、髪が白い

そう、先ほど女将さんに見せて貰った

あの旅館の絵

確か、髪が、白かった

金髪が、雪か

もしくは、経年劣化で、そう変化して見えたのではないでしょうか

それに、皮も、村で作物を食い荒らす

草食動物を、懲らしめると言う意味で

温泉に浸けて

肉を落としながら

剥いだとなれば、辻褄が合います

いやあ、すごいな

僕は、正解したんじゃないだろうか

近いと思いませんでしょうか」

しかし、彼女の表情は、余り優れず

首をひねっている

「しかし それなら、皮と表示したって良いものじゃないか それに、その程度で首吊りと言う漢字が

使われるのも納得できない

いや、もしアイヌが、来たとして

それは、集団として書かれず

一人として雪女としての象徴として書かれたのは

何でだ」

僕は、言うほくそ笑み

「まあ、まあ、そんな、僕が正解を導き出したからってすねないでくださいよ セ・ン・パ・イ

それこそ 皮がそのうちに、樹皮の制作と

同じ行程か

または、混じって

伝承だけが残り

今の形に残されていたとか

県も獲物を大量に捕ったとき

もてきれず

括って持ってきたのを

もしくは、吊していたのを見たとか

だいたい 大勢できたというわけではなかった

と言うのも考えられるし

一人目立つ人間がいただけだったのではとも考えられるでしょ」

むむ

先輩は、何事か、にらむように、僕からから目線をそらし

観光を、はじめたようで

ようやくおとなしく

鎖が、周りにかけられ

手すりのようになった

大釜と呼ばれている

実際には、コンクリートだろうか

縦横三十メートルは、有りそうな

その温泉には

白く周りに蓄積物が壁に張り付き

湯気が暑さなど関係ないように

白く上がっている

立て看板には、高温ですので

近づかないようにと、注意書きとして書かれている

「先輩危ないですよ」

温泉は、湯立つように、揺れている


「いやーおいしかったですね」

相変わらず、膨れており

何を食べても、うむうと

よくわからず

上の空であった

ふきのとうの鉄砲焼き

イノシシの百花牡丹鍋

青米のずんだ巻き

等々

それは今まで食べたどの料理とも違う

食わせる物があった

唯一心残りなのは

トマト焼き鍋焼き鍋

のポテトチップスを

食べていなければ

もういっこ わんこそばのように

入れられる青米ずんだ巻きを、

そう、もう一つ 腹に入れることができただろうに

違いない

そうすれば、心おきなく、今度こそ

大浴場へ浮かぶことも良く浮かばれたに違いない

先輩は、酒も飲まず

ぶつぶつと

下げられた盆の前でつぶやいている

どうしたんですか

僕の問いに関して

「いってくりゅ」

と寂しいだろうと

僕の部屋で

夕食を食べていたが

そこを、スリッパも履かず

飛び出していく

しかし、その背中には、リュックサックを背負っているあたり

不覚ではないのであろう


夜の闇を、ヘッドライトを照らしながら

走る姿は、鬼子母神はおろか

牛刻参りとでも形容視した方がいい

鬼女に、見えるに違いない

夜風を、髪に振り乱しながら

長髪の女が

ヘッドライトを、頭にくくりつけて

走る様を、見失わないように

僕は、腹と戦いながら

腹痛の悪夢のさなか

横に傾くように、田圃にはまらないように走る

本を見るに

県と言う場所は、人口の減少か

合併する前には、その存在は、消えており

その前には、繧柳と、変化している

そのころには、織物の生産が行われていたようであった

今現に、村人の顔を見ても

何か特徴があるようには思えず

女将さんの顔をじろじろ見て

「あらやだ」なんて言われてしまったが

しかし、目が青いわけでも

白いわけでもないのは

他の住人と大差はない

いや、白粉は、恐ろしくしろいが

彼女の目指した先は、昼間の見学した

大釜だったようで

その夜中でも相変わらず

ライトに反射するように

煙が、立ち上がり

それが、お湯であるという物を

あたりに吹く風の温度が

少々高いことからすいそくできる

「やっぱり違う」

どうしたんだ

僕の問いに関して

「いや、どうもおかしいと思ったが

地図上には、それにか存在していない

しかし、どうもおかしいと思ったんだ

ここに来たとき

電車で

空気が、トンネルを越えたとき

明らかに、違ったんだ

そう、もしかしたら

ここは」

僕は考える

確かに、パンフレットと

あの絵は違った

しかし、確かな情報もなく

あれを、焦点としたとき

そう見えなくもない

それに、加枝さんが、そうだと言われれば、

確かに、そう見えなくもない

その程度に、山の絵は分かりにくい

右左上下が、目標となる物がなければ

目印が表示されなければ分からない

川が有れば

多少は、判明しやすかったかも知れないが

それさえも時間とともにいとも簡単に変わるものだ

「大丈夫か」

山の中に入ろうとしている

先輩を前に

私はどうしようかとも考えたが

YESと言う意味を置いて頷く

一体 何をしようとしているのか

何があるのか

あの本の中に

県と言う文字があったが

しかし、その文字だけ

四隅に寄らず

そのまま下と同じように同じ向きで書かれていた

これがどういう意味かは、分かりかねる

しかし、ずんずん

みちなき道を、進む彼女は、野生生物でも

夜間にこんなに動かないと思われた

しばらく歩くにつれ

線路のトンネル前が見えてきた

それと同時に

確かに、風が違う

それは確かに、

あの温泉の前で

いや、それ以上に、雰囲気が違うように思う

彼女はと言えば、

へばることもなく

どこにその元気があるのか

先ほどまで

線路で、ぐづついていたのが嘘のようである

トンネルの脇に、人が通ったような跡があり

次第に、歩くにつれて

それが、獣ではなく

人のあるいた跡のような気がする

その部分だけ、草が無く

笹が切られたような跡まである

先輩を先頭に、進むにつれて

霧のような湯気は濃くなり

いよいよ熱気を含みはじめた

私はそのとき

「何か、音がしなかった」

彼女が聞く

あたりは濃霧と言っていいほど濃く

彼女と少しでも離れたら

光がなければ

分からない自信がある

たしかに、それは、声のような気がした

それは、呻くように

熱気が強くなりはじめる

「見つけてしまったんですね」

背後で声がした

振り返ると

ライトを持った女将さんが

着物ではなく

ジャージ姿で、そこにいた

「これは、何なんですか

何が、つながれているんですか」

女将さんは、我々をみる

「どこまで知っているんですか」

彼女は、言う首を傾げながら

「さあ、何かが、繋がれている

頸だけの状態で」

女将さんの目が見開かれるのが

明かりの中でも分かった

「見ますか」

その声に、感情はない

二人して、頷いた

それでは、こちらに

女将さんに案内されるように、進むと

徐々に、更に湯気が濃くなる

「落ちないでください

食べられますよ」

彼女の声に

つい先頭を歩く彼女の服の袖をつかむ

しかしそれに対して、珍しく何も言わない

「ここで良いでしょう」

風の風上なのか、湯気が反対側に流れる

目の前の池

いや 温泉には

地面の縁に木でくいが、打たれ

そこに、縄が、くくりつけられていた

それは、どうやら資料に載っていた

樹皮繊維の紐の束のようであった

「昔 ここには、村がありました

温泉しか無いような村でしたが

そんな中に雪のように美しく

髪も

見たこともないほど輝いた女が来た

その女は、変わった服を着ており

村の長は、その女を、住まわせる代わりに、

村の誰かと結婚してこを残すことを進めた

こんな辺境の場所では、血が濃くなりすぎるのを嫌って、新しい人間を、欲していた

多少容姿はちがえど

この村には、形が違えば違うほど

強い子供が産まれると伝承があった

しかし、彼女が着て、直ぐにその夫は、血を吐いて死んでしまった

はじめへは、何と言うこともなく

昔のことですから、そう言うこともあるだろうと

死に対してさして、気にもしていなかったが

しかし、それが、五人になり

その全てが、同じ病

それどころか

村の至る所に

女子供

問わず

皆、熱を出し最後には、血を吐いて

しんでしまう

彼女は、その頃には、

自分の持っている木の皮を使った服の作り方

樹木の選び方を伝授

していたが

それよりも、この女が

疫病神を連れてきたと

五人目が死んだ夜

彼女が、寝ているとき

斧で首を切り落とした

しかし、その血は、凍り付き

女の目は、ゆっくりと開いた

仕方なく

村人は

彼女の首を、近くにあった

樹皮の紡いだ糸で、繋ぎ

血が凍らないように

山の上の源泉に、沈めた

その後も、村人の死は続いたが

徐々に、減っていき

最後には、うめく温泉の中の繋がれた生首

と樹皮繊維の技法だけがこの村に残ったんです

今考えれば、伝染病なんでしょうけど

しかし、彼女の体温のせいか

ここのお湯は何時も湯気が立つんです」

彼女が聞いた

「今でも、彼女はいるんですか」

女将は言う

「年に一度、縄を縛り直すんです

彼女を、縛り直せるのは、どう言うわけか

この皮で使った物でしか無理でした

過去何回か

鎖やワイヤーで繋ぎましたが

噛み切り

村人が何人も襲われています

結局 

死人を出さないために

同じ事を、繰り返すしかないのです」

僕は思う

「しかし、それを、祭るなりして

沈めれば」

女将は首を振った

「あれが、外にでるだけで、冷害が、おき

野菜はおろか木が枯れ始めます

もはや、遅すぎたんです

彼女はきっと いつの間にか人ではなく

何か神のような物になったんではないかと思うのです」

口を割る彼女

「でも、しかし、そんな物を、どうやって、

毎年縄を交換するんですか」

頷き女将が言う

「ああ 温泉に浸かっている間は

貧血を起こしたように、動けないんですが

その内冷たくなりだすので

その前に、縛り温泉に、沈めるんです」

そんなことが、実際にあり得るのか

しかし、くぐもった声は、湯立つ池から

ぞろぞろと響いた

「可哀想とは思えないんですか」

女将は、悲しそうな笑みを浮かべ

「ええ寂しくなりますから」

目の前の温泉の中腹

何か白い湯気に紛れ

長い髪のような物が水面上で揺れた様な気がした


帰宅途中

よほど疲れたのか

前のグリーンの汚れた椅子に

彼女は、横倒しに寝ている

その首には、マフラーでもないのに

暑苦しいことに

白を暖かみ有る程度に木肌にしたような色の

糸を束ねたものをかけている

何という日だっただろうか

その後

女将さんに案内されて

線路ではなく

別の近道で山道を下り

何とか車に乗り込むと

ホテルまで送って貰った

今気づくと、温泉に入っていないのが悔やまれる

が、今更、言っても仕方がない

そろそろトンネルである

しかし

彼女は目を覚ます様子はない


そのことについて

誰にも言わないと

二人とも意見を言ったが

果たしてそれにどの程度意味があるのか分からない

もしかしたら、世間に、発表した方が良いのかも知れない

それは、村人を解き放つ事もできるかも知れないし

科学の反対を示すことになるかも知れないし

しかし、それが全て嘘だったと言っても何ら不思議ではない

どちらにしても、また、どうせ、彼女とは、顔を合わせることになるだろう

死んでいなければ

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