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フードフェスティバル

 私とエマさんは、ギルバートに連れられて孤児院に来た。


 果たして、私の作ったカレーは、子どもに受けるんだろうか? 私が生まれ育った国『日本』では、カレーは国民食と言われているくらいメジャーな食べ物だ。


 しかし、ここは文化も環境も全く違う異世界の国。食材に大きな違いはないのだが、調理方法が違う。


 この国の食材は、そのままで食べても十分おいしい。だから、食材そのものの味を生かした調理方法がメインだ。要は、あまり凝った味付けはしない。


 だから、スパイスを大量に使ったカレーという料理はこの国の人たちに、特に子どもたちの口に合うのか不安に思う。


 試食の段階で、エマさんには、大丈夫だと言われていたけど、もし、食べてもらえなかったら、二十人分のカレーが余っちゃうんだなあ……と考えると、それはそれは不安になる。




 そんな不安な気持ちを抱えつつ、当初の予定通りのバターチキンカレーを子どもたちの前に出す。


 すると、ここでも例のあの反応。この国独特の慣習は、子どもたちの間にもしっかりと浸透していたようだ。


 そんな子どもたちに、例のごとくあの説明をする。だが、子どもたちはそれでも何だかブチブチ言っている。だけど、


「おいしい!」


 と最初の一人が言えば、みんな釣られてカレーを口に運んでみる。


 すると、あちこちから<おいしい!>という声が聞こえてきた。


 余ったらどうしようという心配も杞憂に終わったようだ。お代わりをしてくれる子もいて、用意したカレーはあっという間になくなった。




「これ、今度のフードフェスティバルに出してみたら?」


 一人の子がそう言うと、周りからも賛同する声が上がった。


「フードフェスティバル……? 何、それ?」


 名前から察するに、食べ物関係のイベントだってことはわかる。


「色々な屋台が出るお祭りなんですけど、投票で一番おいしいお店を決めるんです」


 エマさんが横から囁いた。


「へ~、そうなんだ」


 正直言って、全然興味はない。今日ですら二十人分のカレーを作ってへとへとなのに、それよりもさらにハードルが高い屋台だあ? 絶対に無理だわ。


「残念だけど……」


 と私が言いかけた時、


「優勝賞品がすごいんだよ」


 ギルバートが口を挟んだ。


「は? 賞品」


「そ、一等地に店が出せる権利。必要経費は全部向こう持ちで」


「タダでお店が出せるってこと?」


「そういうことだな」


 私にある考えが浮かんだ。もし、その『フードフェスティバル』で優勝して、お店を出すことができたら、この世界で何とか食べていくことができるかも……?

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