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森の賢者 第一話

エリザベスは胸に手を押さえつけて蹲った。暖かい光が胸の中にある。

それに縋るように何度も何度も、母上と呟きながら魔力を落ち着けていく。


『愛おしいリズ、どうか聞いて頂戴。世界はあなたを愛しているわ。私もアルフレッドも。あなたのことが心配できているの。……リズ、森へ。森へ走って。そうすれば賢者様があなたを良い方向へ導いてくれるわ』


どんどんと黒い魔力は落ち着き始めている。それを察知したアルフレッドは魔法の展開をやめ扉を蹴り開ける。

すると目の前には蹲って黒いドレスを身につけたエリザベスと、肩を揺らしながら激しく呼吸をしているエルバート、その後ろで怯えているオリヴィアの姿があった。

ルイとリックはエルバートとオリヴィアを生徒会室の中から連れ出し、窓を開け外の空気に触れさせた。


「はぁッ!……助かったよ、リック」


「そりゃ大事な幼馴染の殿下様だからな」


「無事か、オリヴィア」


「は、はい。ありがとうございます、ルイ先輩」


アルフレッドはエリザベスの肩に手を置き、膝をついてエリザベスの様子を伺った。

やがて黒いドレスは消えていき、制服を着たエリザベスが現れた。しかし息をしているか怪しいほど動かず目を瞑ったままだった。


「エリザベス…平気か?」


背中をさすり、そう声をかけると「平気ではありませんが、正気には戻りました」と疲れ切った返答が返ってきた。

ゆっくりと立ち上がると、少しふらついて、アルフレッドに支えられる。が、すぐにそっと離れくるりと後ろを振り返る。

そこには疲れ切った顔をしたエルバートや、オロオロしているミミル、安心した顔をしたルイとリック、オリヴィアに、静かに少し悲しげに彼女を見つめているアイザックの姿があった。

なんとなく、なんとなくに過ぎないが先程の光をくれたのは、アイザックのような気がしてアイザックにぺこりと頭を下げる。


「感謝いたします、アイザック様。あなた様のおかげで正気に戻れました」


「うぇ!なんで俺だたってわかったんだ!?」


「なんとなく、そう感じたのです」


そう告げると、殿下の方に向き直りじっと見つめた後


「…いついかなる時も努力を忘れず、王族として恥じぬ振る舞いを見せてくれていた殿下のことは…お慕い、しておりました。オリヴィアに作法を教えず、困っていても、いじめられていても助けずいたことは認めます。ですので、婚約は破棄で構いません。

我が一家、ハーフォード家のものと結婚するのは変わりありませんし、さして問題ないでしょう」


そういうと「皆様も、迷惑をかけしてしまい申し訳ございませんでした」とそう告げて、エリザベスはゆっくり歩き始めた。


「どこにいくんだ?」


ルイが心配そうにそう聞くと、振り返ることなく「言えません」とそう言い残してエリザベスは、パチンと指を鳴らした。エリザベスの近くの窓が開きそこからトンッと飛び降りた。


「…うえーーーーーー!?」


アイザックがそう叫んで窓の外を覗き込む、ルイも慌てて覗き込むと、地面近くで減速し、スカートがふわりと、舞っているのが見えた。

エリザベスはそのまま学園の裏手にある森へと歩を進めていった。

正直、まだ心の整理なんてつかない。悔しくてたまらない。殿下の隣に立っても恥ずかしくない、そんな人物になろうと必死だった。

それが殿下を苦しめていたのかもしれない。

それでも、ずっと好きだった相手を。あってたった数ヶ月のオリヴィアに取られたことが。何よりも辛くて仕方がない。

さくりさくりと丁寧に管理されている森の中を歩いていく。

森の香りが気分を落ち着かせてくれる。母がまだ動けていた時2人でこうして散歩をしていた。あの頃はまだ楽しくて、戻れることなら戻りたい。

しかし時間は無常にも進んで、後退することなどあり得ない。

そう思えば思うほど、エリザベスの心にはまたくらい感情が湧き上がってきた。

しばらく歩いていると、あたりがやけに暗いことに気がつく。

あたりを見渡してみれば、そこは霧が立ち込めておりどこかしこを見ても同じような景色が続いている。慌てて振り返るがそこにも同じように鬱蒼とした木々が続き霧が立ち込めてるだけであった。

あたりの魔力は濃く、神秘と呼ばれる場所であることがエリザベスにはすぐわかった。しかし不思議と息苦しさはなくむしろ心地よい場所にさえ感じる。

そのまま立ち尽くしていると、サクサクと草を踏んで歩いてきている音が聞こえた。

そちらを振り返ってみると、棒のついたランプを持ったニコニコと微笑んでいる女性が目に入った。

その顔はフードで見えず、深くかぶっていて口元しか見えない。落ち着いた色をしたマントを身に纏っており、フードには鹿の角のようなものが出ていた。

お腹にはきている服が外れないように長いリボンが巻き付いており、ちょうちょ結びをしていた。

ぶかぶかのブーツを履いており、左足には木の枝のようなものが巻き付いている。


「ようこそ、僕の森へ。エリザベス・ハーフォード」

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