怜虹の作戦
いや〜〜〜〜〜〜〜〜バトルシーン大変
ゆっくり見てってね
「あいつら、やっぱりこっち来てるね…どうする?…僕の弾丸で瞬殺してもいいけど」
「いや、まずは様子見といこうか。スクラーヴはあの橙色の方だ。俺はあの剣使いとやる」
スクラーヴがベアルから離れ、怜虹を迎え討つ体系へ入った。ベアルは黒剣を振り回し、そして幻夢の方向へ構える。
「怜虹、あまり敵に近づきすぎるなよ!どんな性質のヘイトを持っているかまだ何もわからない、距離を保ちながら相手の能力を観察しろ!」
「分かった!あのぶった斬りヤローも相当な実力があると見えた、お前も気をつけろよ!」
「さぁて…僕の能力を見切れなければ確実に死ぬよ…?どうやって戦うつもりなのかな…?」
スクラーヴは腕を重心ごと前にだらんと垂らす姿勢で構えて立ち止まりながら、こちらに向かって走ってくる怜虹の出方を凝視していた。
「近づかなきゃいいんだろ!ならこいつを喰らいやがれ!」
怜虹は地面に転がっていたガラスの破片を、まるで手裏剣のようにスクラーヴに向かってぶん投げた。怜虹の腕力が能力によって増強されているため、投げられた破片は弾丸のように速く飛んでいく。
「へぇ…?遠距離攻撃で攻めるのかい…?お前のそのホープの集中部位を見ると、得意攻撃は格闘系じゃないのかな…、自分の殴りたいように殴ればいいのに」
スクラーヴは弾丸のような破片を手で難なく弾き飛ばした。ガラスの破片が体を切りつけて、その傷跡から真っ黒い血が滴り落ちている。彼はその傷をまじまじと見つめていた。
「へえ…中々やるじゃん。普通同じようなことしても体に傷一つつきやしないのに…ふーん…」
傷を興味深そうに眺めるスクラーヴに、怜虹は不気味さを感じていた。
「な、何だあいつ…傷こそ付けられたものの全く動じねえ。しかもあの真っ黒い血液…あれはもしかしてヘイトなのか…!?」
「さぁね…ところで、もう攻撃の手は止めるのかい?僕は悪魔だよ?お前のこと、早く殺したいなーって…ずっとうずうずしてるんだけどさ…」
「っ…っるっせえ!!」
次々とガラスを投げる怜虹。散弾銃のような投擲速度でガラスが飛んで行くが、それでもスクラーヴは向かってくる攻撃をものともせず、避ける動作を全くしずに腕や脚で破片を弾き飛ばしていきながら怜虹の方へとじわりじわりと近づいていく。
まるで自ら自分の体に傷を付けるように仕向けているように思えて怜虹はさらに気味の悪さを覚えた。
しかし、ここで怜虹が閃く。
「待てよ…こいつ明らかに不気味な奴だが、それに何らかの理由があるはず!考えろ俺…!傷がつく事がメリットとなるのなら、そのメリットこそがあいつの能力が何なのかを解く鍵になるはずだ!」
ガラス片を飛ばす最中、怜虹は必死に考えた。こいつの体は最初からボロボロだった、しかも今さっきまで明らかに自分から傷を付けていくように思えた彼の戦法を、「彼が体に傷をつけること自体から始まる」と考察した。次に怜虹は近づくスクラーヴから逃げるように、バリバリと窓ガラスを割りながら電車の車両の中へ飛び込んだ。
「へぇ…何か、策でも思いついたのかな…」
スクラーヴは怜虹の消えていった車両を見つめている。
「どう…ベアル?そっちの様子は」
今度はベアルの方を見、彼は問いかけた。
「聞くまでもないだろうスクラーヴよ。こいつのホープ…この剣は非常に単純な作り、しかも使い手は素人。このような青二才にこの悪魔の騎士が気圧されるとでも思ったか?」
「別に…?ちょっと気になってみただけだよ」
ベアルはとても余裕そうに、幻夢の攻撃を適当に受け流しながら片手間に答えた。それからスクラーヴは、少し幻夢とベアルとの戦いを暫し眺めていた。
「こいつはもう駄目だね…さて、こっちもそろそろ動きが来るかな…?」
スクラーヴが向こう側に意識を向けた瞬間、
「何よそ見してんだお前っっっ!!!」
ガシャン!!!!!
向こう側から窓ガラスをぶち破って怜虹が飛び出してきた。意表を突いた後ろからの攻撃。怜虹は車両の中に身を潜ませながら、スクラーヴの背後へと移動していた。
「こいつの能力…それは、ヘイトが混じった血液を固める能力!自分の血液に硬質化性質のあるヘイトを混ぜることによって自分の身体を防御する力を持ってるんだ…!
その裏付けは地面に落ちた血液!一発だけあいつから落ちた血に向かってガラスを投げたが、血が液体ならそれはガラスに付着するはずなのにあの時は血溜まりがそれを弾き返したってのが証拠だ!!」
怜虹は両腕を橙色に光らせて腕を振りかぶった。
「そして今こいつが血液を帯びていないのは後ろの部分、背中だ!ここに一発でけぇ攻撃をぶちかましてやれば…確実に大きなダメージを与えられる!」
スクラーヴは背後の怜虹を見向きもしないまま立っていた。
「喰らいやがれっ……!!ゥオラぁぁぁっっ!!!」
怜虹の攻撃が入った。
打撃部に火花が散り、辺り一体が爆音と共に閃光に包まれる。ベアルと幻夢は、一瞬彼らの方を見た。
「ほう…奴はなかなかやるな、こんなに早くスクラーヴの能力を考察するとは。その発想力と考察力、よくも人間ごときが生意気にも生き長らえただけはあるな。フン」
「怜虹…あいつ、あそこまでの力があったとは…見直したぞ怜虹!」
「すごい…怜虹、ここまで強かったなんて…!」
場外にいるラベンダー達も、怜虹の快進撃とも言える反撃に感嘆のため息を漏らした。
「しかしまぁ、その程度では奴は死なない。奴もまた未熟なソルジャーだったな」
「…なっ!?」
閃光が晴れたころ、幻夢が怜虹達の方を振り返る。そこには、確かに怜虹がスクラーヴの背中に殴打を喰らわせている姿があった。
しかし、彼らは両者とも動かない状態でしばらくそのままでいた。
「……いや、おかしい…、どういうことだ!?怜虹が飛び込む姿勢のまま微動だにもしない…普通は重力で怜虹が着地するはず、それに向こうも怜虹の攻撃をまともに食らったのなら立ってはいられないはずなのに…!?」
怜虹は攻撃のためにスクラーヴに飛び込む姿勢で攻撃したが、不自然にその状態で固まっていた。
「…これは…!?」
「お前の考えは合ってる…だいたい30%くらいね?僕の能力は確かに自分の血液にヘイトを混ぜ合わせて、血液を硬質化させて身を守る能力さ…でもそれじゃ全部じゃない。そろそろ教えてあげようか?僕の能力の全貌を…」
怜虹の体には全身に紫黒い物質がびっしりまとわりついていて、その体を完全に固めていた。怜虹の動きが止まったのはそのヘイトによるものと思われる。
「怜虹!どうにかしてそのヘイトを少しでも弾き取れ!」
「ダメだ幻夢…この血液…めちゃくちゃ硬ぇ!俺の体が…ビクとも、動かねぇ…!」
睨むようなスクラーヴの紫色の瞳に風車のような模様が浮き出る。
「『アイ…解放……』…」
スクラーヴが怜虹の腕を掴み、そしてもう片方の掌を閉じてグッと力を込めた。
そして、怜虹の全身に付着した血液がウニのように針状に鋭く尖り、その針は怜虹の体をズタズタにしてしまった。
「がはッッッ!!!」
「怜虹っ!!!」
「怜虹!!!!!」
全身から血が吹き出し、吐血する怜虹。
幻夢はその手を止めずにはいられず、またラベンダーも同じように立ち上がって彼の名を呼んだ。怜虹はそのまま地面へと墜落していき、その傷穴からは大量の血が流れ出ていた。
「僕のヘイト性質、血液硬質化はその逆も自在…固体から液体へ、液体から固体への転移が思うがままさ。そして水しぶきのように跳ね上がる血液を硬質化させることによって、それを無惨な、拷問器具のような凶器にすることが出来る。
そう、これが僕の能力…、
『Flexibles Quecksilber(形を持たない凶器)』」
読んで頂きありがとうございました
全身ズタズタの怜虹、彼は無事なのか!?次回も乞うご期待!(しないでね)